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モナは不思議がる。
「思いっきりぶった切るしかないだろう? ほらっ」
ナフトは持っている音叉のように割れた大剣「グングニル」を豪快に地面に叩きつける。中心部が幾何学的に割れて、中から大きめの重火器が射出される。どのように射出したのか? 暗闇とスピードがそれを周囲に認識させない。大剣の一部が変化して、重火器になったのだろうか? 大剣は軽くなり、使用武器は増えるだろう。戦術の幅が増えることのデメリットはない。ナフトだけは大剣の重みが無くなるために、不本意な思いもあったのだが。
「なにこれ? すっごく物騒で重たい重火器ぃ~! 大火事起こせそう。これって火炎放射器ぃ?」
実際は重たそうには持っていない。内部の機械がモナの握力・腕力を増してくれている
「なんでこれが思いっきりぶった切るのに必要なのぉ?」
キョトンとした目で聞いている。
「あいつのメインセンサーはなんだ? 私が選ぶならはこんな雪原で最も効率の良いものを選ぶ」
ナフトは剣を手に取ると対空の構えをとった。
「んっ、そうか! サーモグラフィー! 熱源センサーでしょー!?」
「そう、だからこその火焔弾連射機構だ。炎のマシンガンだと思っていい。弾幕を張れ、モナっ!!」
「そういうことねぇ♪ アイアイサー!!」
片目をつぶり、敬礼をするモナには余裕が感じられる。同じくナフトもSクラスのエージェントである、とうに対応していた。火焔の弾幕でこちらの動きを察せなくする作戦らしい。
「ファイアァァ! ファイアァァアア! ドォドドドドドドドドォォォオオオン!!」
辺りは業火に包まれ。モナはさらに広範囲に乱発していく。
「女の子に酸素プラズマなんて物騒なもの使うもんじゃないよ。下品な蛇さん? お姉さんの何が目的?」
ナイトボアはセンサーが混乱し始めている。設定温度域では画面が真っ赤なのだ。音声認識があったとしたら、先の発言はプレゼントだとナフトは思っていた。が、それはなさそうだ。ただでさえ、豪雪の音がしやすい地帯である、もしかしたら装備していないのかもしれない。ここで勝敗は決まったかのように見えた。アルゴリズムさえ分かれば詰み、のはず。も、ナイトボアの回路は有機的である。目標を見失ったから攻撃をやめるなという、低レベルのプログラム的な行動は採用しない。
・弾幕を張った人間がいる。
・それは高確率でナイトボア自身の無力化を狙っている。
・また、遠くへ行っていない。
・相手は平面的な動きをする人間型であった。
そんな思考から、ナイトボアは下方に向けて酸素プラズマ弾を撃ちまくることを選択した。第三者が見たならば地獄絵図であろう。炎が酸素プラズマ弾で消え、またその位置に火焔が吹き上がる。ナフトもモナもプラズマを器用に避けていく。ナフトは超人間的な反射神経より安全地帯を作っている。モナはナノマシンで炎の熱量をエネルギーにしている。言うまでもなく、このエネルギーはモナの体を通して火焔弾連射機構に組み込まれる。ナノマシンを使い、モナ自身のダミーは出して敵を混乱させることも可能だったが、せっかくのエネルギーは存分に頂いておこうと思ったようだ。――あるいは、ナフトに敵をぶった切らせたかったか。敵味方双方の攻撃が当たっていないため一見、戦いは互角に見える。しかし、実際は地上にいる方が分が悪い。重力を味方にしたほうが有利である。そして、火焔弾連射機構をモナが何発直撃させてもナイトボアは落とせない。ナイトボアは、蛇のような酸素プラズマ弾射出装置をあらゆる方向に向けては撃ちまくり、火焔が来ない位置を探り出そうとしていた。撃っては逃げ、撃っては逃げで、森が焼かれる。「うわわぁ~、針葉樹林さぁん、ごめんねぇ~」




