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――二一一八。

 第二帝国ことミドニア連邦。その僻地ギルグースク陸軍研究所。陸軍研究所より20km南南西の位置。 暗闇を分かつように。雪を照らす月。森が作るは。漆黒の暗闇自体。それらは雪をインディゴ・ブルーに変えている。踏めば、ザッザッと小気味良い音がするだろう――無論、地雷原でもあるため、その一歩に保証は全くなかったが。漆黒の闇夜。それに溶け込むように佇む森。木々は鬱蒼としていて。そして無機質的に配置されていた。そう、ここは人口の森。自然の温かみ、二人は感じることはなかった。冷淡で冷酷で極寒。その中にあるのはこれまた無機質な趣の()()帝国(ニア)の極秘研究所。ブリーフィング通り、二階建てで小ぶり。こんな場所で核実験をするには、一つしか方法はない。あたりを支配しているのは静寂と極寒の大気。

 口で呼吸をすると口自体が凍ってしまうほどの極地。ホット・ワインでもあったならば最高だ。あいにく、極寒をも変えられる能力までは、二人は持ち合わせていない。が、この静寂を破るものは二つ。ナフトとモナではない。彼女らはまだ蜃気楼の中にいる。突然外に出るのは得策ではないと長年の勘が告げている。さて、静寂を破るものの一つはこの地域に生息するミナミカマヤドリという夜鳥。夜行性らしく、躯体も声も大きい。もう一つは、研究所の各種センサー。特に今日のライトは活性化していた。大きなイベントでもあるかのようにも見える。海燕は索敵範囲を他の方向に変えたようだ。反応が消えている。当座、危険は感じられないため、その長い足を出しながらナフトは、

【どう? モナ、視えた?】

 ナフトはパワードスーツに内蔵されているアイグラス、唇の振動や目の動きで使用できる高性能ツールを使ってモナに伝えた。モナはというと索敵能力を発揮してか雪を下にしてピョンピョン跳ねている。地雷がないことまで確認してあるのだろう、ナノマシンを展開すれば、金属製のものを探せる立体レーダーにもなる。モナはナノマシン製のパラシュートを、全身に粒子として還元し、増量していた。これで使用できるナノマシンの総量増える。E-DENの、作戦立案のカブラギ少佐の粋な計らい。

【あのカマヤドリにちょっとずつナノマシンを潜り込ませているの。コントロールしちゃいたいからねぇ! ちょっと待ってね、ナフトちゃんっ】

 モナはノリノリでそんなテキストを送った。

【カマヤドリっていうのか、あの鳥は? なんで名前まで知ってる?】

 ふと疑問に思ったことだった。

【実は、ブリーフィングの時にね。ネフィリムのメインコンピュータにも入って情報を得てきたので】

 モナは電子信号をナフトのパワードスーツのアイグラスに送る。ナフトは軽く空気を吸い込み、肺に入れてから出す。これでは口を開けておくと、肺の中まで凍るほど寒い。ナフトが機械化された人間をここまで羨ましく思ったことはない。

【自然の鳥の中に無理やりナノマシンを入れ込んだら、対空レーダーでバレるんじゃない? 脳から操作しようとしてる?】

 ナフトは何も心配する風もなく、そんな質問をした。――まるでカフェでの他愛のない雑談の一つのように。事実、研究所の方向を見ながらチャットしている。

【昔、()()帝国(ニア)は夜間偵察用に、カマヤドリそっくりの「偵察機PF-203夜叉(やしゃ)」を作ってるの。

 もしかしてぇ、あれ、本当の鳥に見えてたぁ?】

【まっさか。やけに野鳥が多いと思っていたんだ。こんなにクソ寒い中に。自然美を持った渡り鳥が、こんなにけむたく飛ぶわけないしね。それに……】

【……それに?】


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