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「ナフトちゃん、敵地上空に敵の数が増えているよぉ〜ん♪」
不安げを微塵たりとも見せないモナ。
「高度はぁ〜……ーふぁあっ?」
あくびをしながら質問するナフトにも、少しも不安がない。
「二〇〇〇m級の無人機みたい。多分だけど『海燕八九式』だと思う。ある程度新しい型だ
ねぇ。と言っても、モナちゃんから見るとアンティークですねぇ~」
電子戦が得意なモナではあるが、能力の範囲が短く、中距離以上にはめっぽう弱い。これ以上広域化すると、戦略兵器になってしまうため、そう設計されているようだ。
「高確率でツバメちゃんなんでしょ。モナが干渉しちゃえば逆に楽じゃない?」
「『海燕八九』シリーズは、アンチ対電子干渉が装備されているから難しいと思う。エンジン部分だけ切るとかは可能だけど、それって……」
「ああ、落下アンド爆発エンドってことか、ぞっとしないね。そしてっ、目立つねっ。このまま素通りで行きたいところだ。にしても……」
怪しく腕を組み眉をひそめるナフト。
「そう、まるで『お前たちの作戦などお見通し』臭がプーンプンっ」
モナもこれを理解できたようだ。
「または、牽制目的か。ああ、『空いてるグラス』そっちにある?」
「空い・グラス」のところの言葉の雰囲気をさりげなく変えた。変えなくともモナなら感づいてくれるだろうが。
「えーっとねぇ、積んでくれなかったみたい。飲みたかったねぇ、ワイン」
この言葉は単なるそれっぽいもので、意味はない。しかし、それも重要。敵を欺くにはまず味方からという言葉があるように。
【ナフトちゃん、どうしたの? こんな時にアイグラス要望?】
【これはネフィリムから切断されているよな?】
【いっつも通りのモッチーでぇーっす!】
【現地に潜入エージェントが現在進行形いるはずだ。コンタクトを極秘裏にとれるか?】
【なんで『今いる』ってわかるの?】
「……ふーん、そうかぁ。お酒も現地で調達ってことね。凍えるように冷たい酒でも上等品の世界なんだろうね、極寒は」
実際の会話が、急に途切れないように、さりげなく発する。アイグラスはナフトの網膜、モナの電子脳に設置されているチャットシステム。特にモナの場合は映像や動画、匂い、味なども脳へダイレクトに伝えられる。視線と少しの思考を汲み取って補佐するので、喋るよりもタイムラグは少ない。よって、一番手軽に使えるのがアイグラス・チャットだった。ナフトは急な沈黙が委員会に怪しまれると思い、何気ない声を出したので、モナも合わせる。




