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「まっさかーと思い、ナフトちゃんの勘をデータ化してみました。特殊な傾向はありませんでした、ってさ。何を感じてるの?」
「データの隠蔽性や虚偽性を中心にあれこれ。ロレンツォはこう言っていた。
《なら、現地の土産を期待しているよ。『危険な兵器の情報』などをね。……んっ》
ミューオン触媒核融合を行う研究所に行かせるのに、なぜ、わざわざ『危険な兵器』などと言う必要があったのか、それが気になっている」
ナフトはブリーフィングの情報を完全に信じきることはない。
そういう世界で生きてきた過去があるからだ。
「ふーん、結局さ、現地まで行かないと分からないね」
全ての発言は司令部にも届いていた。何も隠さないのはいつものこと。
「おいおい、カブラギ少佐。本当に大丈夫なのか? なんだか楽屋裏みたいなこと言い始めてるようだが」
「大丈夫です。彼女らの作戦成功率は99.79%以上」
「ナフトは第(N)一(I)帝国(C)と第二帝国の被験体だったな? 何か特殊な能力で作戦を有利に運ぶのか? 超人化は第一のお家芸だ」
「……それが、誰もナフトの能力を把握していません。それでも彼女の成功率には目を見張ります」
「なっ、なぜ誰も能力を把握していない!?」
驚きを隠せないロレンツォ。確かに能力を把握できないはずはない。
「観測できた装置がないためです」
「モナが干渉して消しているのか?」
「いえ、実際の観測も不可能でした。
私が立ち会った際にも、こう、摑みどころがないと言いますか……。気がついたら結果だけが残っているというものでして。決してそれだけは明かそうとしないのです……」
「……、秘密が女性を女性らしくする……か」
「え? ロレンツォ委員長殿なんですか、それ」
「…………気にしないでくれ。ナフトはとりあえず良い。
モナはどうなんだ? 何の準備もしていない」
「してまぁ〜っす! ビシバシナノマシンで粒子いじっちゃってまーっす♪ ブイ!」
全画面にモナの笑顔と二本指が映った後、ネフィリム後方に設置されている対空レーザー砲が一門稼働した。画面の半分はレーダーとなり、レーザー砲から発射されたコースが描かれている。ほぼ真上に撃ったようだ。
「どうせ私たちの勝ちなのだから、先に勝鬨をあげちゃいまーっす!」
「ロレンツォ委員長殿、艦内の操作・駆動系統全てにハートマークが映っています」