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「……いいか? 作戦は君たちにかかっているんだ。まともに聞かないで、どうやって作戦を遂行するつもりだ?」
「私ぃ、全部館内を歩いている時に電子干渉したので、分かっちゃったりしてまーす!」
明るく幼気な笑顔を見せるモナ。
「本当かね? では作戦内容を言ってみろ?」
(電子戦機、か。なるほどなかなか)
指揮官の発言は心とは裏腹で。
「はーい! 全てインプットしてありまーす。ナフトちゃんには分っかりやすいデータで、すでにお伝えしてありまーっす! それと同じものを皆さんのPCと画面に貼り付けますね。みんなで共有っ・共有ぅっ!」
モナが大気に向かって腕をくるくると回すと、艦内全ての画面や端末に一気にデータが表示された。 強制的に割り込みをしている。あらゆる電子機器に干渉できる能力の一端を完全に示した訳だ。かつ、丁寧な色分けと立体的な構造があり非常に見やすい。
「……ふむ、これが『メジャー・シーキング』か……。確かに、素晴らしいかもな」
ロレンツォは今度も反論をしなかった。さらに、目は期待の色で輝いている。
「……二〇五〇に超高高度偵察機に乗ることになる。ムーンフェイスや骨阻喪症には気をつけてくれよ」
ロレンツォは「無機質なメガネ」の奥の表情を二人には読ませないように冗談を言った。
冗談が初めて漏れたため、館内の空気は一気に温かみを帯びはじめる。
「そんな短時間じゃぁ、ムーンフェイスで顔が膨れたりしませぇ~ん!」
ストレートに皮肉るモナ。
「君は全身の大半が機械じゃなかったかな? そもそも、の話になってしまうな」
皮肉り返すロレンツォ、顔には明らかな笑顔が灯っている。
「美って、宇宙でもしつこく私を追いかけてくるんだよ。つまらない男みたいに、ね。それで思い出したっ、ロレンツォは一緒に来ないの?」
笑みと余計な口をこぼすは余裕のナフト。
「私はつまらないことはしない主義でな。必要なことをするのみだよ。さぁ、両名共に自信があるようだな。……その点だけはさすがと褒めておこうか。なら、現地の土産でも期待しているよ。『危険な兵器の情報』などをね。……んっ」
ロレンツォも秘書も驚いている。一瞬で元の(ょう)顔へ。普段、彼はよほど上機嫌でないと冗談と情報の漏洩を好まない。
「いいよ。ただ、現地には私たちより危険な兵器はないだろうね」
再び余裕のナフト。蠱惑的な笑みがロレンツォや他の委員、モナをも和ませた。
「了解したよ。定刻まで持ち場で待機せよ!」