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ピョンピョンと駆け回ると、やや大きく膨れ。これまた小型の竜の様になった。魔力は無尽蔵。物質が足りないならば。魔力で補えば良い。ひらりと一度大きめに羽ばたく。滑空すると魔術的特異点へ。モナが飛ばしたごく微量のナノマシンのスコープはこれを目撃。その情報はE-DENでは。海底に佇むネフィルムでは。ロレンツォによってのみ確認された。ナフトは戦闘自体の余韻に浸っていたから。モナは目の前の勝利に大喜びをしていたから。小型の竜は、二人の目を盗み、自分の死体に向かう。そして顎で双剣を咥える。。心なしか、また躯体が大きくなったような。魔力は冥帝から無限に送られてくる。ヴォルグもまた、複数の隠し事をしていた。ヴォルグは飛翔。羽ばたき、滑空。そして、ナフトとモナが喋っている方向を一瞥すると、魔術的特異点に戻って行った。 ……そして、一度閉ざされる特異点。
「……だってさ、鎧の騎士さんは豪華な保険を自分にかけていたみたいねぇ」
「あら? 相手だけが保険かけてたと思った?」
「えぇ~、ナフトちゃんも本気じゃなかったのぉ?」
「当然。私が本気出したら、外交もクソもなくなっちゃうよ」
「あー、第四帝国を〜、四大大国に取り込もうとする派閥いそうぅ~。でさ・でさ、どうだった? ナフトちゃん、愉しめた?」
「……ええ、もちろん。数ヶ月ぶりかなぁ。ただこれが師団長レベルだとするとっ。第四帝国との戦いは一筋縄では……」
「一筋縄ではぁ?」
「イっちゃうかも、ねっ」
「さっすがの余裕。でさでさぇ、 ナフトちゃん、さっきの能力ってやっぱり『記憶改竄』であってたんだね~」
「……フッ」
ため息とも嘲笑の笑いとも取れる音が漏れる
「やたっ! 当たりでしょぉっ!? こぉれぇでぇ、アイスクリームが一個、増~えたぁ! あれ? でもさ、記憶改竄能力で、どうやって喋ってたの? 特に、ソードマスターさんの戦いの時ぃ~。後で、『喋っていた』って記憶を植え付けられるっていうなら、あれれ、ソードマスターさんとリアルタイムで話していた部分はどうなってるのぉ~? 私もちゃんと確認しているんだけどぉ? 私にも能力使ったぁ?」
「自分の電子観測機器を疑う? それとも、アイスクリームを無しにして、続きを聞く?」
「むむ~ぅ、続きが聞きた~い!」
「つまり、透明化能力よ。実はね、近くにいただけなの」
「ああ~、議論を一歩むこうに押しやった。結局、毒からはどうやって逃げたの?」
「あら、聞いていなかったかしら?」
「ええ、あの言葉ぁ?」
「そう、秘密が女性を女性らしくするの」