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〈何時の間になどは思わなくて平気なのか?〉
(んん~? 何でそう思ったの?)
〈完全に観えていなかったではないか。閲覧者にもかかわらず〉
(あぁ~、なら成功。やっぱヴォルグさんって、深層心理は読めないみたいですねぇ。あとは、複数の思考をしている場合かな?モナちゃんは普通の思考に加えて、『陽電子頭脳』があるんですぅ。それに加えて、ナノマシンを脳内に入れ込んでの複数思考。初めてで混乱するでしょぉ~?)
〈まぁ、看ようと思ってないからな〉
(ああ、看破できているから?それはねぇ、看破できるって思い込んでいるだけぇ。そう言ってぇ~、ナフトちゃんに負けた奴は山ほどいるよ~ん)
モナは各種センサーを展開する。ナノマシンと共に。そしてジークムント・エフェクトが即時展開できるように。最悪の場合に備えて。目で聞き、耳で感じた戦いの意味合い。モナは体幹を鋭敏にして、その全てを捉えていた。(私って、オールマイティ過ぎぃ。だって、相手の能力と同じようなこと、毎回できちゃうんですもんっ!)
〈もうしばらくで、相方さんの死体が出来上がるぞ。そんな呑気でいいのかな? 何ならいつでも加勢して問題ない〉
(ナフトちゃんが負ける時って、この世の終わりっぽいからぁ。だって、総合戦力で、ヴァイス・クラインを超える存在って……)
〈この大剣使いがか?〉
(もっちろぉ~ん。世間的な評価を超えた頭脳がそう結論付けています)
場所は荒野。もはや枯れ木も山場もない。ただだた。無味乾燥な地平と埃が。地と大気にあるのみの空間。
「何? なんか考え事? それともそろそろ追いつかれるって思ってる?」
ナフトは聞いた。
「何の話をしているんだ? どうせモナと、でしょう?」
〈何を言おうが、お前が圧倒的に不利な状況には変わりがない〉
返す言葉で。
「徐々に私の反応速度が上がってるの? 気がついていた? ついでに、持っているカード全部出した方がいいよ」
「それは貴様に対して言いたい事、だな」
なおも落ち着いた風態で答える。こんなに涼しい動きをする奴には一発かましてやりたい。刹那、仕掛けるはナフト。電磁射出機モードの武器を持っている。グングニルは外刃になっているので。このモードのまま、近接戦闘で攻撃できなくもない。が、射出ポッドを開くには、音叉のように間のある大剣の隙間を、さらに開かなくてはならない。相手と水平に走り続ける。水平。ヴォルグも隙を探している。