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〈言われてなすがままの童貞君のようには、な〉
(んっん〜。なりたくないってことね。ぁんだ、人間っぽいところがあるんじゃない?)
裏の裏の裏の裏を探る戦い。表で相手を騙し、裏で相手を翻弄し、裏の裏で相手の隙を探す。裏の裏の裏で相手を絡め取ろうと予定しておいて。その実、裏の裏の裏の裏で相手を殺す。論理仕掛けの死の(・)遊び(ゲーム)。
ナフトの艶のある腕に。そして、太ももに。鳥肌が立っていた。再びのインターバル。隙の探し合いの最中で。ナフトが口撃。
「たまゆらの命、命なんてそんなもんだと思うことはないの? あなたも一駒に過ぎないんじゃない?」
「私が負けるとでも言いたいのだろうが、私は生きて帝に使えるので心配無用。
加えて、私は駒でも問題ないと思っている」
ナフトのカードは六枚。「大剣」、「銃剣」、「大鎌」、「槍」、「射出機」、のモードチェンジに「ブースター」。それと『注入さ(・)れる(デルー)悪夢』。だが、これは禁じ手。愉しむため。対して、両刀の剣士のカードは未知。確定していることは、見せられたカード。「会話の魔法」「双刀」の二枚。加えるならば、先に見せた超スピードと斬撃? そして両者が思っていることは、相手のカードは増える可能性がある。両者ともに、未知数。仮に一〇枚のカードを持っていれば圧倒的かつ絶対的な有利。ロイヤルストレートフラッシュでも揃えられる。そんな可能性がある戦い。ナフトは五カード、ノーマルで勝てるとは自負していない。それこそ、七カード、アブノーマルが、この戦いでは正攻法で成功法。
「あれ、私はたったジョーカー一枚で勝てると思われてると思ったんだけど、その辺はどう?」
「幻想を注ぎ込むのは悪手だろう?」
「あらっ、もしかしてぇ……完全に対策が済んでいるの? 私、まだ試してないんだけど?」
「対策は済んでいる。というより見せたというべきだな。私相手では使わないと踏んでいるだけだ。お前の可変式の大剣もそう言っている」
「あっそ、バレバレかぁ。ご主人様には、もうちょっとなついて欲しいと思ってるんだけどねぇ~。それに、こんなチャンスを私は棒には降らない。幻想は無しでいくよっ!」
「なら、私もコールしようか。そして私が使うカードは2枚、それだけだ」
「詭弁が入ってるんじゃない?」
「詭弁を嫌うのか? お前は使っているだろう? ナフト・アーベンフロートよ」
さて、時を少し前後して。モナもナノマシンの目も戦いを見ていた。疑問に思うことが一点。光学的に、熱学的に、複眼でさえも、二人を捉えることができない。データ上から完全に消え去った。
「あんれぇ、おかしいなぁ」
〈お前から見て、三時の方向に七〇〇mだ。視ている方向が違う。反応はこっちにある〉
脳内に響くその文字、音声?その音韻は紳士のそれだと気がつく。
(ヴォルグ・ウントク・ラッセーさん、ご親切にぃ)
相手に合わせたのか、モナの気質か。