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〈私が死ぬことはないだろうな。太刀筋が甘い。あっちの小娘にも助太刀してもらったらどうだ。私は一向に構わない〉
(へぇ。直接的にも干渉できるのね。これは、かなり過去から見られている可能性大)
〈安心してくれ、表層しか読めないのだ〉
(もっと突っ込んで欲しいんだけど、実のところ。もっと奥まで、ね)
〈そんな番外手もどきなど、するもしないも自由だがな〉
(じゃあ、もっと上手に捌いちゃっていい?)
〈技量に精神が付いてきてないようだが?〉
(技量は認めてくれるのね? なら、あとはスタイルの問題じゃない? 黙っていようがしゃべくり回そうが、強さは強さ……でしょ?)
〈ふむ。一理ある。だが、勝ち目がない〉
(なぜそう言えるの?)
〈カードを新たに加えるからだ。私の斬撃は空をも超えて、貴様を斬り裂く。さて、用心してくれよ〉
敵のは太刀を振るう。その太刀筋は衝撃波となり。刃が飛ぶ。
(魔法? 斬撃は飛ぶことはないはず。山ほどの戦場に出てきたけど、私も見たことはない。……、『鷹』が一度使っていた? 能力をトレース? パクリ? 奪取?)
走行しながら。鎧の騎士との距離をさらに空ける。
「ッッッ!?」
逃げた場所へのピンポイントの飛ぶ斬撃。側転。ローリングして、その場を退く。第三波、第四波。複数の斬撃がナフトを襲う。数十メートルはあろうかという斬撃。姿勢を低くし、時にバク転。素早く。器用に。避ける。避けることしかできない。この斬撃。未知数故に。ナフトは安全のためとにかく距離を稼ぎ、避ける。逃げのスタンス。敗走へのダンス? そんな広め(ディス)の(タ)合間。
(食らったら魔法で絡めとられるかもねっ。直接操作、記憶改竄、即し、毒劇物、呪い? ああんっ、……最ッ高ッ!)
飛んだ斬撃。背後の岩山を。時に地面を。容易に切り裂いた。プディングを裂くケーキナイフのように。
鮮やかに、たやすく。ナフトが避け続けた結果。それは、三つの大山が消えただけであった。舞う粉塵。ナフトの奮迅。この糞人――クソヤロウ。距離を置いたナフトは、まだ披露していないモードを準備している。磁気誘導型――カタパルト。内部には隠し武器が。――。
〈おいおい、思考をしたらこっちに漏れるのだから。それこそ無心で戦った方がいいんじゃないのか? どうなっても知らないぞ?〉
(安心してよ。ブラフ吐きまくってるのって、無心な証拠だから)
〈それが貴様のスタイルか?〉
(あれ、そこまで読めてないの?)