表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

103/111

103

鎧に月明かりが当たり。顔が見える。それは、ハンサムと言えるものだった。

〈師団の人間にもあまり見せないのだがな。敵ではお前が初だろう。私の素顔を見るのは〉

(見たからには生かしておけない、って?)

〈そもそも生かしてはおけない、の間違いだろう? 危険因子よ〉

 ヴォルグは目に入った血を拭った。その隙だけは、ナフトは追わなかった。自分で作ったものではないからか。――それとも。

(つまんない男のデートプランじゃないんだから、もっと楽しませてよね?)

〈先ほどからつまらない減らず口ばかりが目立つな〉

 ナフトは大剣を大きな鎌にした。

長棒(ながもの)って本当に使いようよね? 相手を()かせるために……。そう思わない?」

 その瞬間。叩き込むナフト。

「タァッ!」

 ナフトの斬撃。その腕には。うっすらと。しかし。明確に。筋肉が浮かんで。タイトなスーツ越しに。儚さを感じさせて。なおも美しく。首を刈り取りに迫る。

「ふんっ!」

 片手の剣でいなす騎士。

「ダァッ!」

 瞬時にモードチェンジされて。振り下ろされるは大剣。

「……ふっ」

 余裕で態勢を変え、避ける騎士。少しの。ごくごくミクロの時間を空けて。ガチンガチンと音だけが虚空へと響く。火花が(なり)を潜めているのは、どちらかの剣に限界が近いということ。連戦で大剣を使用したナフトのグングニルは悲鳴を上げている。数打を加えては、弾かれて。距離を取り、隙を新たに引き出そうとするナフト。一撃一撃に込められる感情。それは恋慕。

(『鷹』の剣で負けて死にたい? 私ってそんなやつ? 違うでしょ? 新しい(おとこ)を常に探してる、そんな女……)

 ナフトの恋心は、自殺願望にも似ていた。まだ見たことない世界への羨望、憧れ、好奇心。生死をかけた先に見えるモノを探すように。そして、全てを吐き出すように、愛を以って大剣を振るう。可変、グングニル、槍へ。リーチの差を活かそうとするナフト。音叉のような形状の大剣は、交差してなお尖る大槍へ。ナフトの想いに呼応してか、いつもより素早く変化していき。全てが相手に伝わるように、真心込めて、槍で点撃をする。モードチェンジ程度では相手の隙は引き出せないようになってきた。相手は相手で隙を隠し、カウンターを狙う。再び取られる、距離。今度はグンとたっぷり離れる。双方ともに、無駄な太刀を出さないように、思考の時間を取る。チェスやカードゲームの決戦の一打の前の溜めのように。そして、奥の手は見せない。愛があるから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ