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4.祝儀のエビフライ!

 お昼間、お家という名のボロアパートに送ってもらったはいいものの、心臓ばっこんばっこんして落ち着かず、いてもたってもいられなくて、土曜日なのに学校にきた。パソコン室を覗いたら、卒論に同じくして追われる我が級友たち。


「たぶん、たぶんだけど彼氏出来た」  


 卒論を書きながら友人3人に言うと、時が止まった。かたまった。


「うそおまえお酒が恋人とか言ってたじゃん」

「もてないおまえになんで!?」

「誰!相手」 


 三者三葉に口が悪い!


「こないだみつけた、いい感じの居酒屋で一緒に飲んだんだよー、ヤクザなんだけど」

「「「ヤクザ!?」」」


声でかいわ。


「めっちゃいいひとなんだよでも!家めっちゃきれいで」

「みかる、おまえ絶対騙されてるよ。それか冗談」


 我が親友、アキラが言う。二人も頷いた。

 わたしだまされてんのかな。よくわからん。




○○。



 夜七時頃に、またあの居酒屋に。大将が私を見るなり「みかるちゃん!昨日大丈夫だった?」とあわてた。


「大丈夫でしたー、昨日は騒いでごめんなさい。つばやさんいいひとですねえ」


 ほっと胸をなでおろした大将と奥さん。本当に申し訳がない。

  すると、わたしのうしろでがらがらと戸が開いた。でっかい強面の大男がちょうど入ってきた。


「つばやさん!」

「みかる、今来たのか」

「うん、今来た!」

「お二人仲良くなったのねえいつのまにか」  


 奥さんが笑うと、つばやさんはわたしを抱き寄せて言った。 


「嫁に来いって言われたからな」

「つばやさんお嫁にします」

「え、なに、付き合ったのキミら」

 

 焦る大将。つばやさんはにやりと笑った。


「そのつもりだ」


○○。


「わーい、かれしできたー、かんぱーい」

「アホのみかるに乾杯」


 アホのみかるってなんや。2日連続ビールを喉に流し込む。んはぁ、おいしい、たまらん。毎日飲める。枝豆をぷちぷち口に投げ入れる。ビールをリセットする塩と豆の旨味ダンス。またビールを流し込む。そしたらもっと豆がうまくなる。このループで既に幸せなのに、隣にはゴリゴリのイケメン、つばやさんがいる。幸せの二乗。最高&最高。

 大将が、つばやさんの隣に座る。


「これおっちゃんからのお祝いな」


 差し出してくれたのが、でっかい、ホカホカの、エビフライ!!


「ぴゃあー!!」と興奮するわたし、無言で興奮するつばやさん。

「今日は客が少ないからよかったよ」と大将はビールを煽った。 


「え、なんでそこくっつくのかおっちゃん理解が追いつかないよ。つばやさん、あんた女の影無かったからてっきりゲイの人かと」

「おい大将、俺はそっちの趣味はない」

「えび〜はふはふ、ぷりぷり、おいしい、たまらん」

「つばやさん、みかるちゃんのどこがよかったの」


 大将がとんでもないことを聞いてる。そっちも気になるしタルタルソースでジューシーさを増したプリプリさくさくのエビフライもたまらない。そしてそれを流し込むビールも格別。

 つばやさんは考える。


「……可愛いと思ったし、なんだろうな。物怖じしねぇし面白い」

「大将!わたしはね、つばやさんの良い人っぷりと顔に惚れた!」

「ラブラブじゃないかい。いいねえ若いって」


 大将はにやにやしてる。


「大将、つばやさんね、まじのヤクザだよ」

「いらんこと言うな、アホ」

「今日もヤクザのしごとだったんだよ」

「俺帰ろうかな」

「待ってよ!うそじゃん!あ、つばやさん、SNOWとろ、SNOW」

「唐突かよ」


 スマホを自撮りモードにして映すと強面の顔が、あらまふしぎ。めがおっきくなってうさぎの耳が映える。むりだ、吹き出した。


「ひゃひゃひゃひゃむりなにこれ、にあわねー!ひゃひゃひゃひゃ」


 ゲラゲラ笑い転げたらあたまをはたかれて、スマホを奪われた。

 若干困惑の大将。つばやさんはいらいらしながらスマホを勝手に操作する。


「馬鹿な真似ばっかしやがって、あほのみかる」

「だから、あほのみかるってなんすか」

「あほのみかるちゃん、つぎなにのむ?」

「大将、ビールもう一杯!」


 大将はくすくす笑いながらビールを取りに行ってくれた。

「ん」とスマホが返される。画面を見るとラインに新しい連絡先が入っていた。鍔のアイコンに「斎藤」とだけ名前が書かれてある。


「齋藤!」

「俺のライン」

「つばやさん、齋藤なんっすか」

「ああ……。俺の女になったんだから連絡先ぐらい、いるだろ」


 つばやさんのお言葉を無視して、早々にスタンプを送る。『アセトアルデヒドちゃん』というオリキャラのスタンプである。(みかる作)

「酒ェ!」と暴れるアセトアルデヒドちゃんのスタンプを送ってにんまり笑うと「きもちわる、なんだこりゃ」とつばやさんに笑われた。


「わーいヤクザのラインGET。ヤクザもラインするんっすね。フゥー!」


 新しいビールをごくごく。


「からあげたべたい」 

「食え食え」

「大将〜からあげ〜」

「はーい」


 つばやさんといると、なんだか笑いっぱなしだ。勝手に私が笑ってるだけなのは重々承知でそれでもたのしい。


 そして今日はあんまり酔わなかった。


 昨日置いて行ったチャリを回収して、またがるとつばやさんにキスされる。


「みかる、またな」

「ばいばい、つばやさん」


 驚いたことに付き合ってまだ一日もたってない。るんるんで漕ぎ出したチャリは、じぶんのきたねえアパートに向けて走り出した。


※自転車も飲酒運転です。良い子はやめましょう!

余談。


みかるのラインのなまえは「ミカルゲ」。

そう、ポケモンです。ミカルゲのイラストをアイコンにしています。ミカルゲかわいいけど、ダイパではとらうまになったなぁ。

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