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11.実家に帰らせていただきます!

 あのインテリヤクザ、ここ最近の甘やかし具合と、若干気味悪いほどの執着具合から、「着いて行く」など言い出しやしないかヒヤヒヤしてたけど、昨日はすんなり帰してくれたから良かった。普通に荷物もまとめたし、なんかほっとしたような寂しいような。そこまで暇じゃないんだろう、ヤクザ稼業。

 でも、バス乗り場までは車で送ってくれるそうだ。大荷物でアパートの前で待っていると、いつもの高級車がやって来る。高級車……これいくらするんだろう。わたし、軽自動車買うお金すらないよ。


「つばやさんー、おねがいしますー」

「ああ、乗れ乗れ」


 荷物を後部座席に置かせてもらって、助手席に。今日のつばやさんは相変わらずのグラサン強面イケメンで、たばこの匂いがする。


「何日帰るんだよ」


 慣れた手つきで動かす車。


「えっとー、3日ぐらい。別に大した用事があるわけじゃないんだけど、夏も帰ってなかったからさー。地元の友達にも会いたいし」

「ほぉ。男じゃねぇだろうな」

「……つばやさんー。言っとくけど、わたしめちゃくちゃモテないからー……。ナンパされたことすらないよ」

「それでいいんだよ。気安くみかるに触ったらそいつが日の目を見ることは二度とねぇよ」


 物騒なんだよ、愛情表現が!


「じゃあわたしも、つばやさんに近づく女なんかこてんぱんにしてやる」


 しゅっ、しゅっ、とファイティングポーズ。


「お? 意外に多いぜ?」

「むー、だろうなー」


 モテる男の余裕とはこのことだ。くそっ!

 車だと速いもんだ。やんや言ってるうちにすぐに着いて、東京駅付近の、バス乗り場に降ろしてもらう。


「しばらくばいばーい」

「気をつけてな」

「浮気すんなよー」

「しねぇよボケ!」


 ちょっとドス入った声で、こんなところで怒鳴らんでください。ヤクザがバレる!

 手を振ると、行ってしまう車。このためだけにわざわざ、こんな微妙な時間帯の夜に来てくれたのだ。なんだかんだ、愛されてるなぁと思う。素直にうれしい。困ることもあるけど、心臓のあたりが、とくんとくんと鳴いてるから、これがきっとホントの気持ち。


○○。



 さてさての、身体バキバキ夜行バスタイム。車内は、思ったよりガラガラだった。布団をかぶってねれない私は、必死に食らいつくように読んでるものがあった。いわゆる先行研究ーー、ヤクザラブの携帯小説だ。

 組長もしくは会長?的な人にある日突然気にいられ、ドロドロに甘やかされて主人公がだんだん絆されていく。なんじゃこりゃ。状況はちょっと違うけど既視感。そしてエロい。うーむ。やっぱ読んで正解だったと、考え込む。気になったのが、大抵2通り、イベントをクリアしなきゃいけないらしい。

まずは、「あたしのほうがつばやさんに相応しいのよ!」と言ってくる裏社会系美女に勝利せねばいけないイベント。もういっこが、つばやさんに恨みを持つ敵対組織に拉致られるイベントだ。


 うわっ、絶対やだ


 なんて、どこか他人事な私だ。お酒飲んでるときにしてくれ。シラフだと戦闘力半減する。



○○。



 何時のまにか寝てたらしい。起きたら岡山だった。駅に折りて、自分の最寄り駅までまた電車で寝る。最寄り駅で降りてちょっと歩けば、久々に見る、我が実家!

 別になんてことない。ボロの一軒家よ。

「おーいみかるだぜ」と、ドアを開ける。ぴょーん!と飛びついてきたのは、我が愛しき犬!


「うひー、久しぶりーしろたまー」


 ふわふわ、くりくりなうちのアイドル! トイプードルのしろたま。可愛いのう相変わらず。しろたまは、わたしの足を一心不乱に舐めていて、それすら愛おしい。

 しろたまにデレデレしていると、リビングから、お母さんと兄がでてきた。


「みかる、よく帰ってきた!」

「就活進んでんの?」


 あにき、それ聞かないでくれるかな。あにきは、ニンマリ笑う。


「ビール冷えてんぜ」

「の、のむー! のむけど疲れたから寝させて!」





久しぶりの自分の部屋は、汚いままだ。ベッドにダイブ。そのまますやすや寝入る。


 わたしのスマートフォンに、不吉なメッセージが表示されているとは知らずに。


齋藤:明日昼、そっちに行く

やくざが岡山にやってくる!

次回、事件です。

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