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転生幼女アイリスは、異世界の女神様に人生やり直させてもらってます  作者: 紺野たくみ


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第4章 その8 エステリオ救出(修正しました)

          8


 ラゼル家で行われていた、次男エステリオ・アウル四歳の誕生会、お披露目の晩餐会の最中に、主役であるべき当家の次男エステリオが失踪した。


 大騒ぎになった。

 自宅なのだ。もしも侵入者がいたのなら大問題だが、どうやってエステリオ・アウルが痕跡も見せずに姿を消したのかも大いなる疑問だった。


 だが、当時、警察と呼べる機構は存在していなかったため、魔導師組合特別技能部門……別名、賞金稼ぎの魔法使いたちが駆り出され捜査にあたった。


 邸宅全体に、魔術の痕跡を探る術がかけられた。

 巧妙に隠されていたけれど、やがてそれは見つかった。


 エルレーン公国で用いられている魔術体系とは全く別の呪文だった。


 ティーレさんが、教えてくれた。

「エルレーン公国の魔法には『闇』や『夜』に関する魔法の属性は、ないんだ。光、風、水、火、土。地球で考えられていた五行に似ているわけだけど。だから、ここで見つかった、『闇』の痕跡は、存在すること自体が違法で、異常だったんだ。つまり、相手はエルレーン人じゃないということさ」


 捜査のために新しい組織が立ち上げられるほどの重大問題になった。

 被害者がラゼル家だということが、大きかった。


「それにしても、ラゼル家の秘蔵っ子を狙うとは。やばい相手を誘拐したもんだ。エステリオ・アウルの能力も魔力も容姿も、喉から手が出るほど欲しがっていた輩は数限りなかっただろうけどねぇ」

 ティーレさんはソファの上であぐらをかいていた。


「そんなに?」


「そりゃあすごかったよ。近寄るだけでエステリオの魔力に晒されて、溺れそうになった。貴族も資産家も欲しがった。魔力だけでも、魔力供給装置にすれば非常に役に立つ。その上、奇妙な発想で、面白い道具を作り出」


「それに、綺麗な子だしな」


「穢れなき天使のような、って感じだった」


 魔導師養成学院でも有名な子で、まだ入学してもいないのに、将来有望だと注目されていたとティーレさんは教えてくれる。


 素質のある子供には、幼いうちからコンタクトを取ってくるのだものね。それは今でも同じだ。


「誘拐された時点で、あの子、エステリオ・アウルはまだ自分が『先祖還り』だと気づいていなかった。無自覚だから無防備だ。そういう場合もあるんだ。肉親が守ってやるしかないのだが、あのくそじじい、先祖代々の誇りと見栄ばかりで」


「ヒューゴーじじいが連れ回さなければ、目を付けられる危険性も少なかったさ」


 事件後、

 発見された隠し通路には、使用人、十数名。中には晩餐会のために雇われた臨時の厨房手伝い数名の、死体があった。血で染まった通路。


「ひどいものだった。前世で見たテロを思い出したよ。いわばエルレーン公国に対して仕掛けられたテロ行為だ。この国がどうなろうと知ったこっちゃない。そんな印象を受けたね」

 ティーレさんは完全にあぐら。

 儚げな美少女なのに、むしろ男らしい。

「外国人によるテロ。一番怪しいのはサウダージとか、グーリアか」


「疑ってかかれば、本家であるレギオン王国も怪しいのよねえ~」

 リドラさんは時々思い出したように、女性らしいポーズを作ってみる。


 活躍したのは、魔力の痕跡をたどれる魔法使い。


 それでも本拠地を突き止めるのに三ヶ月を要し。

 エステリオ・アウルを買った人物を特定するのに二ヶ月。

 買った主がレギオン王国の、相当偉い大貴族だったために、外交的な交渉に、場は移り。


「でまあ、あたしら、しびれを切らして」

「貴族の名前と屋敷を突き止めたら待ってられなくて、勝手に突入しちゃったんだ。てへっ」

 リドラさんは、かわいく、舌を出した。


 てへっ、じゃないですよ……


「も~、あんときは頭にきちゃってさ! 古い伝統ある王国だかなんだか知らないけど、腐ってるねあの国は。いや、あの国の貴族はさ」

「思いっきりボコったら、やりすぎだって。後で始末書もので。救出した功績とチャラになっちゃって!」


 ここは笑っていいところでしょうか。

 二人とも、わざと笑いを取ってくれてるのでしょうか。

 前世であたし、#有栖__ありす__#が好きだったお笑い芸人さんを彷彿とさせるのは、気のせいでしょうか。



「エステリオ・アウルおじさまが助け出されたのは、ティーレさんとリドラさんのおかげなんですね」

 あたしは二人に向き直る。


「うん、まあそうやね~」

「そうそう。アイリスちゃん、いっぱい感謝して、いいよ?」

「あんたはなんで女に転生しても女の子好きなんだね!」

 キレのいいボケ突っ込みコンビです。


「エステリオを、助けてくださって。ありがとうございます」

 深く、頭を垂れた。


 そしたら。涙が、ドレスの膝にこぼれた。




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