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転生幼女アイリスは、異世界の女神様に人生やり直させてもらってます  作者: 紺野たくみ


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第4章 その6 リドラ・フェイとエステリオの過去(訂正しました)


          6


 ヴィー先生のお友達がいらしたことを、執事のバルドルさんがお父さまとお母さまにお伝えしたら、喜んでくださって。

 これから朝食だから、ぜひご一緒にと、お誘いすることになった。


 朝食は朝7時。

 この世界でも一日は24時間。一時間は60分。

 そして、一月の日数は、ほぼ30日で、十二ヶ月で一年。何年かに一度「うるう年」がある。一年の日数は360日とちょっと。

 前世の記憶にあるのとほぼ同じように季節がめぐるので、あたしのような『先祖還り』には、とても助かるのだ。



 あたしはいったんお部屋に戻って、メイドさんたちにお着替えさせてもらって食堂へ向かう。


 食堂には、大きな長いテーブルに真っ白なクロスがかけられて、お父さま、お母さま、エステリオ叔父さんも、すでに揃っていた。


「ようこそいらっしゃいました。ヴィーア・マルファ先生のご学友とか。アイリスがお世話になっています。先生とエルナト様のおかげで、このところめきめき元気になってきたようなのですよ」


「アイリスが無事に六歳の誕生日を迎えられて、みなさんをお招きしてお披露目ができるなんて。夢のようですわ」

 お父さまとお母さまは嬉しそう。


 ヴィー先生とリドラさん、ティーレさんも席に案内されて、座る。


 我が家のいつもの朝食メニューが運ばれてくる。

 コンソメっぽいスープと野菜のサラダ。

 コールドチキンとベーコンエッグ。

 紅茶と果物のジュース。


 和やかに会話が弾む。


「冒険者ですか」

「賞金稼ぎとも言いますね」

「それはやりがいがありそうですね」

「難しいですがやり遂げたときは達成感がありますね」


 当たり障りのない世間話。


 朝食の席でわかったのは、ヴィー先生の冒険者仲間だった二人と、エステリオ叔父さんは、以前からの知り合いらしいということ。

 リドラさんは、いい女っていう感じの、すごい美人。

 ティーレさんは、儚い美少女タイプ。明るくて屈託がない。


 あたしは特に、リドラさんに引きつけられた。

 会話もシャープで、話題の選び方も、人の注意をそらさない。頭がいい人だなって感じた。その場に自然になじんで打ち解けている。非の打ち所もないすっごい大人で美女で。きっと男性ならリドラさんみたいな人に惹かれるんだろうな。


 ……って思っていたら、ちょっとブルーになっちゃった。

 あたしだって、大きくなったら、美人に……なれるかしら。なりたいな。


「リディ」

 エステリオ叔父さんが、リドラさんに、親しげに呼びかけた。

 とたんに、あたしは。

 胸が、ずきっと痛んだ。


 リドラさんと叔父さんが親しそうに話しているのを見て、あたしは、なんだか、苦しくなった。

 どうして?

 エステリオ叔父さんにも素敵な彼女ができたらいいのにって、あたしは、心から願っているのに。

 あたしは、とにかくがんばって朝ご飯を半分食べて。


「お嬢さま、もうよろしいので?」

「ちょっと、むねが、いっぱいなの」

 そう答えると、「ああ、今日が六歳のお披露目だものね」と、みんなが納得してくれた。


「もうおへやにもどってもいい?」

 誕生日なので。お披露目会を控えているので。

 少し、つかれたの。


 お部屋に戻って休む。

 ひとりにしておいてほしいと頼んで。

 静かな部屋。

 あたしのそばには、守護妖精たちがきらきら光って飛び回る。

『アイリス。お客さまが来たわ』

 シルルが教えてくれた。

「おきゃくさま?」


 コンコン、と、ノックの音と同時に、ドアが開いた。

「いいかな?」

 入ってから言う、リドラさん。


「はい、どうぞ」


「誰も側についていないの? 部屋付きの小間使いとか」

 リドラさんは部屋の中を見回して、尋ねた。


「今日はみんな忙しいんです。わたしのためだし」


「じゃあ、ちょうどいいわ」

 リドラさんは入って、ドアを後ろ手に閉める。


『アイリス。この人、すごい魔力持ってる』

『用心して』

『ま、ぼくに任せていれば大丈夫だけどさ』

 イルミナたちがあたしの周りをとりまいた。

 守護精霊たちは、ちょっと過保護ぎみかもしれない。 


「お昼までには時間があるわ。わたしは、アイリス、あなたに会ってみたかったのよ。エステリオが変わったのは、あなたのためだって、エルから聞いたし」


 エルナトさんとも親しそうだ。


「変わった? あの、どういうことですか。わたしの知ってるおじさまは、ずっと同じ感じです」


「彼のことが大好きなのね」

 いきなり直球がきた。


「え、え、ち、ちがっ、違いますっ。あたしはエステリオ叔父さんが幸せになったらいいなって思ってます!」


 あわてたあたしは、答えを間違った。

 彼って誰のことですか、とか、ごまかせば良かったのに。


「あら。エステリオは幸せそうよ。朝食の席で、ずっとあなたを見てた。優しい、幸せに満ちた眼差しで」


「そ、それは、あたしが、身体が弱くて手の掛かる子だからです」


「違うのは、ちゃんとあなたも知ってるでしょう」


 あっ、怖い。この人、ごまかせない。


「わたしは、彼が幸せかどうか確認に来たようなものなの」


「よく知っているんですね?」


「けっこう昔からね」


 くすっと、リドラさんは笑う。

 薄く、赤い唇の端が持ち上がる。

 すごくセクシーな人。

 なんとなく劣等感を刺激されてしまう。


「ところで、あなたはエステリオの誘拐事件のことは知ってるわね」


「はい。五歳のとき、誘拐されかけたんですよね」


「へえ。そういうことになっているの?」


 リドラさんは、鋭い目で、あたしを見た。

 瞳の色が、違う。


 あたしたち、魔力持ちは、魔力を発するとき瞳の色が変わることが多い。

 このときのリドラさんの瞳は、明るい金茶色。まるで新しい銅貨のように。


「え?」


 リドラさんは、驚くべきことを、告げた。


「エステリオ・アウルは、四歳の誕生日に、自宅から誘拐されたのよ」


「えっ!? で、でも、みんなは、未遂だったって!」


「世間体があるからでしょうね。誘拐されて、見つかったのが半年後。エステリオは、この国に巣くっていた人身売買組織によって、とある貴族に売られていたの」


「売られた!?」


「本当なら、まだ六歳のあなたに、こんな話はしないけど」

 リドラさんの、銅色の瞳が、あたしを射すくめる。


「あなたは『先祖還り』だから。大人の話を聞いても理解できるでしょう」


「な、んで……」

 知っているの?


「わかるわよ。わたしも『先祖還り』だし」

 くすっとリドラさんは笑う。

 衝撃的な内容だったけれど、このときのあたしにとっては、アウルのことが、もっと重要な疑問だった。


「アウルの事件のことは、なぜ……」


「だって、エステリオ・アウルを救出したのが、わたしだから。わたしとティーレが属していた民間の捜査機構が、彼の売られた先を突き止めたの」



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