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転生幼女アイリスは、異世界の女神様に人生やり直させてもらってます  作者: 紺野たくみ


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第4章 その3 クリスタは働きたいです


          3


 夢の中で出会った、セレナンの女神さま、アエリア。ものすごく困ったときは呼びかければ助けてくれると言われたけれど。

 そんな困った事態、できれば遭遇したくない。


 女神様に出会った後、あたしは眠っていたのだろう。

 気がつけばベッドの中だった。


「お目覚めですか、お嬢さま」

 すぐそばにいたのは、あたしの担当のメイドさんだった。

「ずっと、ついててくれたの?」

「先ほどまで側にいたのは、エルナト様ですよ。医学の心得もある方ですから、ご自分がついているとおっしゃって」


 心得というのはずいぶん控えめな言い方である。エルナトさんは有名なお医者さんで、普通の医師が手を出さないような重い病気でも、治してしまうのだって、メイドさんたちの噂で聞いている。


「すぐにいらっしゃいますよ。目が覚めたら呼ぶように伺っておりますもの」

 メイドさんは、エルナトさんを呼びに出て行った。


 ここは、エルナトさんのお姉さまのヴィーア・マルファさんが、子供の頃に使っていた部屋だという。彼女は寄宿制の学院を卒業して、家を出て就職したと聞いている。

 就職先というのがエステリオさんのおうち。彼の姪でアイリスという深窓のお嬢さまの家庭教師なのだ。

 ヴィーア・マルファさんは、貴族のお姫さまなのに、お料理お裁縫はダメで魔法と武闘方面だけ熱心で。

 家出して傭兵をやっていたのを見つかり連れ戻されたけど、また家出して冒険の旅に出ていたとか。

 エステリオさんのにという就職口は、そんな変わり者のお姫さまが行方をくらまさないで居着いてくれるだけでありがたいと、アンティグア家も喜ぶしご本人も嬉しそうに勤めているのだって。

 メイドさんの噂話だ。みんな、あたしが小さいから安心して噂話をしているのだ。

 たとえば長男のルーカスさんは跡継ぎで、もう大公に仕えているとか。

 ほんとにファンタジー小説みたいな世界なんだなあ。


 コンコン。

 ドアを控えめに二度、ノックする音がした。


「クリスタ。起きていますか」


「あっ、はい! 起きてます!」

 思わず元気よく答えてしまった、あたし。

「よかった。家にきてしばらくたちますが、どうですか。困ったことはありませんか」


「みんなしんせつにしてくれるし、やさしいです。おふろもきもちいいし、おきがえも、せいけつできれいで。おいしいものをお腹いっぱい食べさせてもらって。」


「それは、よかったですね」

 大天使様。ミカエル様みたい。神々しいくらい。


 ここアンティグア家は大公の親戚だという大貴族。

 当然、使用人も男女ともいっぱいいて、突然降って湧いた居候のあたしにも、専属の小間使いがつけられていた。

 保護された事情をどこまで明かされているかは知らないけど、みんな、あたしに優しくしてくれる。黒髪で黒い目で、肌の色はリネン色。エルレーン公国の人とはずいぶん違う外見なのに。


「みんな、とってもやさしいです。でも」

「でも? どうかしましたか」


「あたし、ここにはいられません」

「それはどうして?」


「あたしは、ほんとうはきれいじゃないの。どんなにおふろにいれて、あらってもらっても。よごれがとれないの。きぞくのおうちにいるのは、だめなの」


 眠って起きて、気がついた。

 こんなきれいなところに、あたしは、居られない。毛色が違いすぎるのだ

 けんめいにうったえると、エルナトさんは、悲しげな顔をした。


「あたしもはたらきたいです」


 少し考え込んだあとで、エルナトさんは、穏やかに、微笑んで。

「では、わたしの姉と同じ就職先にしては。前にエステリオが言っていたことは本気ですよ。アイリスの友達を求めているので、喜ぶでしょう」


 あたしは、うまく答えられなかった。

 アイリスという女の子は、きっと、純真で、かわいいだろうな。


「もしも望むなら、住み込みでもできますよ」

 とっても魅力的なお誘いに、あたしはすこし考えてから、

「おねがいします」と、答えた。


 こんなきれいな人のいることころに、あたしは、いられない。

 天使様のいる、お館なんて。


 

なかなかアイリス(四歳)が登場しません。次話こそは!


「魔眼の王」の最新話には、やっと出せたアイリスですが。

 あちらのルートではエステリオ叔父さんが巡礼堕ちしたためにラぜル商会がつぶれかけたり苦労しています。女神スゥエが前に言っていた、何度やり直しても寿命を全うできない。という…

こっちの話では、幸せにしてやりたいなあ。「魔眼の王」でも何とか幸せにしたいものです。

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カルナックの幼い頃と、セラニス・アレム・ダルの話。
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