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第5章 その33 秘密の魔法陣でちょっとそこまでお出かけ(修正)


        33


「ルイーゼロッタ先生かぁ」

 ヴィー先生は、緊張したみたいな、複雑そうな顔をした。


「彼女が適任よ」

 リドラさんは、満足そう。


 新しくマナーを教えて下さることになった、ルイーゼロッタ先生。

 ヴィー先生やエルナト様の先生だったのだって。


「どんなかたなのか、楽しみです」

 あたしが言うと、ヴィー先生は、軽く頭を振った。

 ちょっと苦手だったのかな?

「先生は、エリゼール王国の人だった。故国がグーリア神聖帝国と小競り合いをしていて、親族を頼っていらしてね。いい人だよ。ちょっぴり厳しいけどね」

 

 明後日から、いらしてくださるということなので、気分は盛り上がっています。


 でもね、うきうきしているのは、それだけじゃないの。今日、この後は、入院しているアウルのお見舞いに行くお許しを貰ったから。


 半月前、あたしの六歳のお披露目会で起こった事件のために怪我をして一時は昏睡状態にまで陥っていたエステリオ・アウル。

 お父様の弟で、二十歳で。この家で一緒に暮らしていた。

 あたしが生まれたときから、ずっと大事にして守ってくれていた、婚約者なの。


 見た目はちょっと、もっさりしてるけど。

 清潔にして髪を整えて。そしたら、わりとイケメンだと思う。

 誠実で『魔導師協会』学院で自分の研究室も持っていて、協会の副長でもあるコマラパ老師のお気に入りだから、将来も安泰みたい。


 以上は、我が家のメイドさんたちから聞いた評判です。


 さてと。

 お見舞いに、何を持っていったらいいかしら。

 香りの強いお花はダメ。本とかもダメよね。アウルはすぐ読書に没頭しちゃうから。

 食べ物かな……?


 メイドさんたちにお着替えをさせて貰いながら、ずっと考えていた。

 だって昨日はお見舞いに行けなかったんだもの。毎日行ったら迷惑かなって……う~ん、悩むわ!


「アイリスちゃん、お支度できた? そろそろ行きましょう」

 リドラさんが子供部屋まで迎えにきてくれた。ヴィー先生も一緒。ふたりは護衛の意味もあって、引率してくれるのです。

 ローサは残念だけどお留守番してもらうの。


 魔力が一定以上ないといけないから。

 お見舞いに行くといっても、玄関を通って外出するわけではないのです。


 ……突然ですが、我が家には秘密の仕掛けがある。


 それは!

 転送の魔法陣!

 普通、一般家庭にはないものです。


 登録してある行き先を結ぶもので、『魔導師協会』に公認された魔法使いだけが、うまく使える。

 あたしはリドラさんに先導してもらうことになっている。魔力は不足ないけど、行き先をイメージするとかできない。どこへ行ってしまうかわからないという恐ろしい事態に。


 ところで現在はそれでいいんだけど、いざというときには心許ないとお父様は考えているそうなの。

 現在、うちの改築を『魔術的な意味合いも含めて』担当してくれているガルガンドのドワーフさんたちやエルフさんたちと話し合っていた。


 お父様やお母様、使用人さんたちみんなが、いざというとき脱出できる方法を用意しておきたいというのね。それも二つ三つどころかもっと沢山の。

 備えあれば憂いなし?


 でも、お父様。

 どういう『いざって時』を想定しているの?


 守りも万全にしたいって。

 たとえ国を敵に回しても家族を守るって、なんか物騒な言葉を聞いてしまった。


 お父様の気持ち、主人として家、家族を守る心構えは、とっても嬉しいけれど。

 あり得ないけど……もしも国や軍が攻めてきたと仮定する。

 その攻撃を跳ね返せてしまったら、むしろ、立場まずくなるんじゃないのかしら。

 我が家は、ちょっとは大きいけど、貴族でもなんでもない。

 商人なんだもの。


 いちおう下手に出るとか。

 なんとか処世術で乗り切ってほしいのです。

 お父様、がんばって!


 よし!


「リドラさん、準備はできたわ」


「じゃ、行きましょうね」


 魔法陣は子供部屋の入り口に設置してあるから、ひょいとそこまでお出かけ、みたいな気軽さで。差し入れのお菓子を入れた小さなバスケットを持って。


「行き先は魔導師協会付属、医療部、個室棟。転送陣B」


 リドラさんとヴィー先生と、魔法陣に乗る。


 円と、細かい文様、文字が、銀色に光って、浮かび上がる。


 じゃあ、行ってきま~す!

 ちょっとそこまで。



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