妖精テク・チク
黒い鎧を身にまとった騎士・・・しかし右腕だけは美しく白銀に輝いていた。
「ん?どこかケガをしてるのか?」黒い騎士は僕の体をまじまじと見ると話しかける。
「い、いえありがとうございます!助かりました。」初めての人間に出会えた・・・よかったこれで・・・僕はほっと安堵する
しかし、オークたちの声が響き渡る。
「人間邪魔をするな!逃げた奴隷は殺す!」ほかのオークたちも森の奥から続々と集まってくる。
数は数十体を超えるだろう・・・この数は・・・
しかし、黒い騎士は一言・・・たった一言放った
「魔物共・・・我が名はルイン!白の国の黒騎士である!」
その名を聞くと同時にオークたちがさらにざわつく。
「ルイン・・・!」「黒騎士・・・勝てるわけが・・・」「お、親分に・・・」
口々にオークたちの声が聞こえてくる。次の瞬間オークたちは一斉に森の奥に駆け抜けていった。
ルインといった黒い騎士は私の方に向き直ると兜を取った。桜色の美しい髪の女性だった。
「よく頑張ったな。貴様の根性気に入った」そういって僕の頭を撫でた。
「あ、ありがとうございました・・・」少し照れ臭かったが優しく彼女は撫でてくれた。
「ニンゲンアリガトウ!」「ニンゲンカッコヨカッタ!」テクとチクはまた僕の周りを踊りだした。
「こ、こらお前たち少し落ち着け・・・」テクとチクはよっぽどうれしかったのだろう。
「ほう、そこまでリトルに懐かれるのも珍しいな。」黒い騎士が僕の方をまじまじ見ながらつぶやく。
「えっと・・・あの・・・」僕が彼女をどう呼べばいいか考えていると察してくれたのか
「あぁ、ルインでいいよ。何遠くで君がその子たちを助けようとしてるのが見えたのだ。」
「この子達って・・・リトルゴブリンのことですか?」僕はテクとチクの方を見る。
「あぁ、ゴブリンというのはちょっと語弊があるな・・・・どれ、ちょっと待て」ルインはゴソゴソと鞄の中を漁ると、小さな小瓶を取り出した。
それをテクとチクに振りかける。するとまばゆい光に2人は包まれた。光が収まるとそこには・・・・赤い髪と青い髪の少女がいた・・・いや、少女というには小さすぎるし羽もあるから妖精といった方が正しいのかもしれない。
「テクもとに戻った!」
「チクもとに戻った!」2人は僕の周りを飛びながら喜んでいる。
「えっと・・・これは・・・」
「あぁ、彼女たちは呪いにかけられているんだ。あの姿では働けないということだろう。まったくオークのやることは・・・」
「さて、私はそろそろ行くとしよう・・・・君はどうするんだ?」そういってルインは僕の方を見る。
「あの・・・僕は・・・・」相談してみようとルインにこれまでにいきさつを話した。
ルインは僕の話を聞くとこういった。
「なるほど、君も漂流者なのだな・・・・いや、英雄の力を使えるのだから当然か・・・・」
「ルインもこの世界に来る前はその・・・」
「あぁ、そうだ 私も・・・しかし、もう私は忘れてしまった。私の名前も私が何故ここにいるのかも・・・英雄の名前すら・・・そうだ、君の英雄は何なんだ?」ルインは私の姿をじっと見る。
「英雄・・・?わかりません。僕は必死になってただけだったんで・・・」
「何?それはおかしいな・・・・本来その英雄が話しかけて契約となるはずなのだが・・・・まぁ、いい行く当てがないなら私と来るか?英雄の力の使い方教えてやれるかもしれん。」
「おい、貴様らはどうするのだ リトルたち?」
「私この人と一緒にいる!」
「私離れたくない!」そう言って僕の周りをテクとチクは回る。
「そうか、本当に気に入られたようだな。よし、なら一緒に白の国に来い。」
「あぁ、そうだ・・・お前の名前はなんだ?」
「僕の名前は・・・暁・・・暁・・・」おかしい・・・名前しか思い出せない。
「わかった。アカツキ絶対にその名前だけは忘れるな。英雄の力を使うということはその英雄になるということだからな・・・・いいな」
こうして、僕と2人の妖精は黒騎士ルインに連れられ白の国へ向かうことになった。
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「馬鹿者がっ!おめおめと逃げてきたのか!」大地を揺らすような大声が砦に響き渡る。
「す、すみません ロード様・・・しかし、相手はあの白ぎ・・・」オークが言葉を言い終わる前にグシャと肉のつぶれる音が響き渡る。
ほかのオークたちはそれをみて叫び声をあげる。
「ロード様!お許しくださいお許しください・・・・」恐ろしいお方だ・・・仲間でも容赦はない。
「貴様ら雑魚に任せるのが間違いだったか・・・・儂がその騎士の相手をしよう・・・」ロードがたつと砦に地響きが起こる・・・・
「さて・・・どれほどのものか・・・・味わってみたいものだ・・・」こうして、オークロードは立ち上がったオークの数倍の体、巨大な剣・・・それはもはやオークと呼べるものではなかった。