魔族のおうじさま3~14歳~<14歳 聖歴2377年>
「若君様」
またやって来て跪いて見上げてくる魔族にウンディは、眉根を寄せた。
「・・・・・どういう意味ですか?」
感情を表すまいと、努めて無表情に聞いてみる。
お馴染みになりつつある、辺境伯の所で、
これまでに二度、会った魔族に、
注意深くウンディは再び聞いてみる。
整えられた庭園ではあるけれど、
その美しさを堪能することもなく、
神の力を持つ聖なる血を持つ
サフラ王家の者として、どうしても気になっていたことを聞いた。
相変わらずこの魔族は、変わらない姿で
ウンディに答える。
「貴方は、我らの王の御子息、
どうか我と一緒に来て下さいませ。」
「・・・・・女王陛下である母上の夫である
父上は、王配として、表に出てきてはくれません。
それがなぜなのか、貴方は知っているのですか?
貴方は魔族ですよね?・・・・・その貴方が、
我らの王と呼ぶのは誰のことなのですか?」
王配である父上には、たくさんの
謎があるけれど、
見ていて妻である母上への愛情に偽りは無いと思っていた。
母と、自分達きょうだいが属する
聖なる力を持ったサフラ王家は、
魔族を倒す方で、
人を惑わし、穢を運ぶ
魔族とは敵対関係であったはずです。
しかも、
この魔族は言いました。
『我らの王』
と、
「・・・・・・・まさか・・・・」
一つ息を飲み込んで、
かすれた声で言葉をひねり出す。
「父上は、魔族で王と呼ばれる存在なのですか?
『魔王』
なのですか?」
クラクラしてくる頭を振って、
ウンディは、
「・・・・・・僕・・・は・・
私達きょうだいは、『魔王』の血をひく
魔族のハーフ・・・なのですか?」
ウンディが、
聖なる血の自信を失った瞬間、
魔族の手がウンディの肩に触れた。
魔族は、ウンディに対して、
臣下としての拝礼をすると、
慰めるように下からウンディの顔を覗き込む。
「若君様・・・・・我らの王子様、
貴方は、強く美しい、
我らは、それを至上のものとしております。
・・・・どうぞ我らと共に来て下さい。」
母上の至上の聖なる血と、
父上の至上の魔の血が、
ウンディの中にあるのを感じた。