魔族のおうじさま2~8歳~<8歳 聖歴2371年>
「若君様」
再び跪いて見上げてくる魔族にウンディは、慄いた。
「どういう意味ですか?」
首を傾げると努めて冷静に聞いてみる。
前に来たことがある、辺境伯の所で、
小さい時に会った魔族に出会い、注意深くウンディは聞いてみる。
整えられた庭園に降り、花々を見ていると、
見たことのある魔族が、数年たっても変わらない姿で
ウンディに話しかけてきた。
「貴方は、我らの王の御子息、
どうか我と一緒に来て下さいませ。」
「・・・・・お母様である女王陛下には、
魔族の臣下に覚えは無いとのことでしたが?
貴方たち魔族と、サフラ王家は、敵同士の関係でしょう?」
女王であるお母様には、たくさんの
臣下がいるけれど、
月の女神の加護を受け、
聖なる力を持った王家は、
魔族を倒す方で、
魔族の人から、
『我らの王』とか、
言われる関係ではなかったはずです。
「・・・・・・・まさか・・・・
お母様ではなく、
お父様の・・・・・?」
恐る恐る聞くウンディに笑みを浮かべて、
魔族がウンディに触れようとすると、
ウンディの背丈一つ分離れた位置に入ったとたん
バチッと音を立てて、
魔族の手が跳ね返った。
魔族は、触れられなかった距離と火傷をしなかった手を見比べて
静かに姿を消した。
お母様の守りの結界の中で、
ウンディは、
自分の中に眠る何かが反応するのを感じていた。