春の日の夜<聖歴2362年>
春の日の夜
(ちっちゃい王宮物語25)
present by noel
「ルナ・・・・・・」
硬く閉ざされた扉の前で赤い髪の少年は立ち尽くしていた。
毎年春のこの時期の夜は
じっと部屋に閉じこもって
絶対に少年を傍に寄せてはくれない。
「・・・・・ルナ・・・」
中に居るはずの少女を想ってペタンと少年は、
冷たい扉に額をつける。
「・・・・・ん・・・・くっ・・・・・・」
普通ならば聴こえない程の小さくすすり泣く少女の声が
少年の耳には聞こえていた。
日頃は気の向くまま少女に引っ付いていこうとする少年も
春のこの時期は少女の傍に行くことをしない
「・・・・父上・・・・・母・・・上ぇ・・・・」
どうしても忘れる事が出来ない
大切なものを失った悲しみに少女は
後から後から涙を零す。
「・・・・・・・寂しいよ・・・・・・・
会いたいよぅ・・・・・・・・」
少女の最愛の子供達の顔さえ
まともに見ることが出来ずに
少女は泣き続ける。
「・・・・・・・ルナ・・・ねえ・・
大好きだよ・・・・・・僕は・・君が・・・・・・。」
堪らない想いに少年は
コツンコツンと暗闇の中で扉に額をぶつける。
「ねえ・・・・ねえ・・・ルナ・・・・
これが僕への罰なの・・・・?」
大好きで大切な少女の哀しみが
少年にも伝わってきて
胸が痛い
「・・・・答えてよ・・・・ねえ・・・僕を見て・・・ルナ・・・・。」
少女の心が今は遠く遠くへと離れていた。