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王宮ちっちゃな物語  作者: のえる
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可愛い可愛い~<聖歴2366年>


少年は生唾を飲み込んだ。


目の前の幼児を見ながら


自分は、どこか変態のようだと思い瞳を逸らそうとした。




その後姿は、まんまるでどことなくジャガイモに似ていた。


下膨れのつやつやのほっぺたがたまらなく可愛くて、


触りたくて触りたくて仕方が無かった。




「・・・・・お・・・・おじょうちゃん」


意を決して、きっと迷子のその幼児に声をかけると


零れ落ちそうなほど大きな緑の宝石の瞳が


此方を振り返った。




「・・・・お・・・・おじょうちゃん・・・でしゅか?」


キョトンと首を傾げる様子も、


傾げた時に、サラッと横に流れた深紅の髪も


とても可愛くて、


大きくなったらこの子をお嫁さんに欲しいと少年は、思った。




「・・・・ま・・・まいご・・・なのかな?・・


お父様か、お母様に付いて、


王宮に来たのかな?・・・お・・お兄さんが、


い・・・一緒に探してあげようか?」


少年も女王への謁見に地方からやって来た


父親に付いて王宮まで来ていた。




「・・・あい・・・・まいごなのでしゅ・・


お父さまは・・・探してないでしゅ・・・


お母さまは、お仕事中だから・・邪魔したら駄目でしゅ


探してるのはセイなのでしゅ・・・。」


付き人を探しているのかな?


と、思いつつ、少年は意を決してその幼児の手を取った。


マシュマロのような柔らかい手で


少年の心は浮き立った。




「・・・ぼ・・・・僕が、一緒に、


そのセイを見つけてあげるよ」


「ほんとでしゅか?ありがとございましゅ!」


にっこり笑ったその顔がなんとも可愛くて


少年のほっぺたに熱が集まった。




ああ・・・かわいい・・・


だっこしたい・・・。




末っ子で育ったためとも言えるかもしれないが、


今まで見てきた地方の、どこか田舎染みた


屋敷の使用人達の子とは


全然違う


天使のようなその幼児の綺麗な髪と瞳、


それから整った愛らしい容姿に少年は


すっかりのぼせ上がってしまった。




「・・・・でも、あんよ疲れて歩けないでしゅ・・・」


上目遣いで、申し訳なさそうに


そう言う幼児に、少年は、これは


神様がくれた機会に違いないと


ガシッと幼児を抱き上げると




「ぼ・・僕がだっこして探してあげるよ」


そう言って羽根のような軽さの幼児を抱きかかえ、


それこそ足元に羽根でも生やしたかのように


軽やかな足取りで少年は、セイとやらを探すのだった。










幼児が女王の産んだ王子の一人だと知ったのと


少年の初恋があえなく散ったのはそれからまもなくだった。

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