月招きの儀<14歳 聖歴2377年>
月招きの儀
(ちっちゃい王宮物語23)
present by noel
*多少フィクションが入っているかも知れません
神秘の国
サフラ巫子王国には
神の子とも言われる4つ子の王子と王女がいた。
これは御子達とモルドルから来られた御子達のご友人が
14の年を迎える
前年の末と年始のお話・・・・・・
「・・・・雪が降ってきたみたいですね・・・・。」
自分と一緒の
父親ゆずりの深紅の色と
母親ゆずりのサラリとした髪質を持った
少女の髪をゆっくりと手で梳いて雪を取ってあげる。
「・・・・・ウッちゃん・・・・」
「ノウムちゃん、風邪引いちゃいますよ・・・部屋の奥に入りましょう?」
ノウムは、コクンと頷いて自分を見つめる
ウンディの優しい緑の瞳から
逃れるようにほのかに赤くなった頬を両手で挟んで
俯いてしまった。
4つ子の末ノウムはかなりのブラコンだった。
「母上・・・・・心配ですね・・・・。
神殿はとても寒いのでしょうね・・・」
「・・・・うん・・・・お母様・・・・・。」
ノウムとウンディは月招きの儀の為に数日前から
潔斎に入った自分達の母である女王の身を案じていた。
「ウンディ!ノウム!」
奥から呼んでいる声にウンディは其方に顔を向ける。
「レンヤン、何ですか?」
ウンディが問いかけると少し荒々しい足取りで
自分の褐色の髪を掻き毟りながらレンヤンがやってきた
その黒い瞳は悔しそうに眇められていて
「・・・・・お前達が戻ってきてくれないと
俺は、残りの二人に苛められ通しだ」
レンヤンのその言葉を聞いてウンディは一つため息を付くと
ノウムの肩を抱くとゆっくりと部屋の奥へと戻っていった。
「・・・・・レンヤンがね~『月招きの儀』って何?って聞いたから
皆で月を見ながらお団子を食べるのよ~って言ったのよ~~」
クスクス笑っていかにも可笑しそうにシルフが言ったのに重ねて
「・・・・・それでね~レンヤンたらさ~へえ~って
素直に感心するんだもん可笑しいよね~~それだったら
『月見』じゃないかね~『月招き』の『招き』じゃまったくないのにね~~」
アハハハ~とまた盛大に笑ってカルスが言っている。
「シルフちゃん・・・カルスちゃん・・・
レンヤンはモルドル国の子なんですよ?僕達の国の儀式を知らなくて当然でしょ?」
「でもね~」
「ね~」
声を合わせてシルフとカルスがにっこり笑って
だってからかうのって面白いんだも~んとでも言いたそうだ。
「レンヤン・・・・『月招き』って言う儀式はですね・・・」
姉兄のシルフとカルスに何を言っても無駄だと心得ているのか
ウンディは、再びため息を一つ落すとさっさとレンヤンへの説明に入った。
「・・・・その前に・・・いちよう確認ですが・・・
月の女神と聖カルフォス王のお話は知ってますよね?
王の子のカルーとシルク・・・・のうちのカルー王は・・」
「知ってるに決まってる!!月の女神の祝福を受けた聖カルフォスの子は
俺達の一族の先祖でもあるんだぞ!!」
ウンディの言葉が終わらないうちにレンヤンが少し怒ったような声を発する。
「そうですね・・・・・・失礼しました。
戦士の国モルドルの人達は物凄く
先祖と一族の誇りを大事にする人達でしたね・・・・」
「俺達はカルー王から魔法剣と、その夫から誇りと勇猛さを
受け継いでいるんだ!」
言いたいことだけ言った後はウンディの謝罪を受入れて
レンヤンは、すっぱりもうこの件は気にしない事にする。
「それで?・・・・・『月招きの儀』って?」
「はい、・・・・・『月招き』の『月』は、その月の女神の
ことなんです。
夜の天で眠り続けて居られる女神が少しだけ起きて皆に神託と
新たな守護の力を降ろすと言われているのです。」
なんだそうだったのかと
何となく納得が顔でレンヤンが頷くのにウンディも
にっこりと微笑んで小さく頷いた。
「『月招きの儀』は一番大事な儀式と言っても良いくらいのもので
国中の人が集まって参りますよ?・・・・・僕達も潔斎こそしませんが
最後の一日は色々しなければいかないこともありますので
レンヤンとあまりお話出来ないかもしれないのですよ」
「・・・・・・良い・・・・!そんな時期に来た俺が悪いんだから」
きっぱりしたレンヤンの言葉に
何だか嬉しくてウンディは笑みが漏れてしまった。
「・・・・・赤ん坊や幼い子や・・・・・後、妊婦さんが少しでも守護の力を受けようと
遠くから来たりするみたいですよ?・・・・・
レンヤンの叔母様も来たらよろしかったのに・・・・もうすぐ臨月じゃなかったですか?」
「うん・・・ケルレンな・・・でも無理だろうな・・・・・
今、俺の国も年初めで忙しいだろうし」
大事な行事に抜け出して来たレンヤンのその言葉に
ウンディは大きなため息を付いた。