お母様<お母様5 聖歴2366年>
「・・・・・・・・・考えさせて
リシスの事も、子供達のことも国のことも
カ・・いえ・・・・・赤い守護者のこともじっくり考えなきゃ」
それはもっともだ
と言いたげにリシスは頷く。
「・・・・・それから、女王と共に国の頭となる巫子王の
事も考えなければならないですね」
リシスがまたサラッとそういう事を言ってくる。
「今は、なれるものが居ないという事で
前女王の時のままの巫子王がその地位に付いていますが
もともと王が代われば巫子王も代わるのが定例。
正式な婚礼も無しに生まれたのに嫡子とされている
女王の子供の事も、
一向に正式な婚礼の相手が居ないままの
女王の伴侶の事も、
それから代替わりしないままの巫子王の事も
今は異常事態としか良いようが無い。」
表情一つ変えずズバズバと痛い所を
突っ込んでくるリシスに女王は上目遣いの視線を送る。
「・・・・そんな伺うような威厳の無い態度を取らないで下さい。」
その女王の様子を指摘して
リシスはそれらのことどう考えているんですか?
と女王の返答を手の仕草だけで無言で求めてくる。
「・・・・そっか・・・・・・でも確かに
考えて見たらリシスぴったりね・・・・・・伴侶になりうる家柄、血筋があって
政治的視野があって、更に極め付けに
形式上も実質も神官やってたほどだから
巫子王にもなれるし・・・。
何より子供達のこと粗雑にしないだろうし」
しみじみと女王は考えてしまった。
「・・・・・私は・・・・国を預かっているものです・・・。
そして・・・あの子達の母・・・。」
こんな中途半端で良い訳が無い。
国王、国王の配偶者、巫子王
その立場は重要だ。
そしてどう考えても自分の子ども達の父親である
あの赤いいい加減な自分の守護者は
国王の配偶者になれる代物ではない
彼にとって大切なのが女王と
彼自身だけだと
ある意味骨身にしみて分かっている。
元魔なのだから善良、博愛から一番程遠い
そういう生物と言っても良い存在なんだと分かってしまっている。
そして考えてしまってから
今はそれを心配する時では無いけれど
そういう彼の血を引く自分の子ども達は
これからどうなるのだろう・・・と俄かに心配になってきた。
将来的には姉か自分の子どもが王位を継いで
国を守って言ってくれるだろうと考えていたけれど
(・・・・そう言えば考えたくないけれど
姉上の子どもが生まれたとしても
今のままだとその父親になるのはあの銀色の奴になる・・・・
ということは結局はやっぱり彼と同じ血を引くことになる・・・。)
「・・・・・リシス・・・・もしかしてこのままで行くと
我が国の将来って真っ暗?
今の所あの子達が父親みたいになることは無いと思うんだけど
・・・信じたいんだけど・・・魔族の血がどうとか、親がどうとか関係ないとは思うんだけど
・・・魔の血を引いているけどリシスみたいな人だって居るし」
人間の子も魔族の子も育て方なのかな・・・?
ちょっと女王は悩んでしまった。
益々もってあの子達に
良い大人の見本としての父親が必要なのかも知れない。
悩みすぎて胃でも痛みそうだ。