お母様<お母様4 聖歴2366年>
「・・・・・誰か魔王に殺されない人は居ないかしら・・・」
女王は呟いていた。
「・・・・女王・・・・・。」
その時背後からあまり感情の入らない声がして
振り向くとそこには
朱金の髪をした青年神官が立っていた。
彼の名は、神官リシス。
魔族の血を遠く引く為に庶子ではありながらも
父親である領主の手によって家から神官へと出された者、
元々の名は、ルーフォス=エテルナ
「・・・・・・リシス・・・・・。」
女王は最近側近に迎えた青年をしげしげと見つめた。
青年の長い朱金の髪と赤い瞳はどこか懐かしさを感じて
いつも思わず見てしまう。
色合いだけではなくて面差しまで少し懐かしくて
女王の心の奥底が少し震える。
「・・・・・・いつも思いますが・・・・やはり貴方は
絵姿の始祖カルフォスに似ていますね。」
月の女神に愛された私達の先祖の若き王に
「・・・・・エテルナは、王家の分家ですから
いちよう始祖の血も受け継いでるからではありませんか?
父も、私の元々の名前ルーフォスで分かるように
聖カルフォスの姿を求めて似たような色合いを持っていた
母を見初めたようですし・・・・・」
その母が実は魔族の血を引いてた
なんて誤算があったのですけどね
と片方だけ口元を上げて皮肉げに笑うと
「・・・・・・女王・・・・・」
とまた改めてリシスは呼びかけた。
この青年は側近になってから裏表なく
スパッと甘いところを付いてくれる存在になってくれていたので
女王はまた何か言ってくれるのだと
覚悟を決めて生唾も飲み込んで
「・・・・はい!」
っと応えた。
「・・・・好きです・・・・・・結婚してください。」
「・・・・???・・・・・・・・!!!!!???えええええ!!!?」
淡々とそう言ったリシスに
女王は、大きく後ずさって間抜けな声を出してしまった。
「・・・・あなた・・・・死ぬ気?」
そして次に女王は思わずそう言った。
怪訝な顔をしてリシスは、
「・・・ああ・・・・・女王の伴侶の赤い守護者の事ですね?」
と言うと
更に淡々と
「・・・・・『好きです結婚してください』と言えと
エテルナ領主の父から命令が来ましたのでとりあえず言っておきます。」
と言った。
「ちなみに女王が了承したら
私は、神官から還俗して・・・・領主の父の所に戻り、庶子から嫡子に格上げされて
エテルナ領主の嫡子のルーフォス=エテルナとして
女王の伴侶として売り渡される腹積もりらしいです。
・・・・・ちなみに私はあまりそれらに興味もありませんし魅力も感じません。」
がとりあえず言われたので言っておきます。
(・・・・・・ふざけないでよ!コンコンチキ!)
どこかで覚えた言葉で女王は怒った。
いくら好きとか恋愛とかやってられない身だと分かっていても
自分の結婚が物凄く軽く扱われていると思って悲しくなってきた。
そんなちょっとしょぼくれた女王の様子を
見ながらリシスは
「・・・・・・いちよう嫌いじゃないですよそんなに・・・・・
だから言うだけ言っても良いと思ったんですけど
流石に命はおしいので本気で結婚する気はありません・・・。」
慰めになるのかならないのかよく分からない言葉をくれるけど
その言葉もかなり虚しい言葉だった。