誘拐はとっても子供に会いたいの・・<ウンディ誘拐3 聖歴2366年>
『以下の要求をお聞き下されば
ウンディ様はお返しいたします。
要求
女王の伴侶としてこの者を迎えること
エトナ領主、イルズ=エテルナの第四子
ルーフォス=エテルナ
神官名
リシス』
一枚の紙が王宮に届けられました。
王宮では、蜂の巣を突付いた様な騒ぎになり
当の本人の女王は驚きの余りに
何度も紙を読み返していらっしゃった。
どの辺りを捜索するかが分かり
急遽エトナに兵が派遣された。
誘拐について・・
要求について、
何度も話し合われ対策を考えられ
国議は紛糾した。
「このような要求は聞くわけには参りません!」
「女王に対して・・・何という!」
「しかし、元はといえば女王が伴侶を持たぬことが・・」
「他国にも、諸侯にも、民にも納得出来るご夫君を!」
「お子の父君が・・・・」
お子の父君が誰なのか
実は誰も知らないのです。
突然、女王は妊娠され、赤い髪の
御子達を出産された・・・・神の子を処女懐胎されたのではと
まことしやかに囁かれている。
「どうしたら良いのかな・・・・?」
女王は王宮の庭内に立つ大神殿に護衛を入り口で
お待たせになりおひとりで中に入られた。
「もちろんこんな状態でそんなこと、
伴侶のことなんて選べないよ!」
見上げる女王の視線の先の女神像の周りに
見る見る内に赤い霧が渦巻き濃くなってゆくと
そこには宙に浮かんだ美しい少年が立っていた。
「伴侶を持つなんて許さないよ!
僕以外がルナの隣に立つなんて!!絶対嫌!」
ムーっと怒ったように顔を顰めながら
女王の前に降り立つと
「・・・・・嫉妬深いなぁ・・・」
女王は苦笑しながら少年に額を寄せられ
少年は、それを嬉しそうに自分からも近づけた
二人で額と額を合わせられると
瞳を閉じられた
優しく女王は笑って少年に仰る。
「ウンディを・・・・ウンディを探して来てくれないかな?
それで、もし危ないようだったら助けて上げて・・
お父様の役目だよ!」
「僕、離れたくないんだけどな~
でもしょうがないね・・・それが僕のお仕事だもんね
は~い~分かりました~!」
一つため息を付くと少年は、
その深紅の髪をサラリと右手で額から振り払うと
フワリと風に消えた。