離別と再会
下手くそでこれからもちょいちょい訂正を加えていくかも知れませんが、宜しくです。
「好きな人が…できたんだ…」
アイツはそう言って自分との関係に終わりを切り出した。自分の頭の中ではグルグルと(なんで?)だけが残り、他には何も考えられなかった。
いや、本当は解っている。
只、認めたくなかった。
理由は最初に告げられていたというのに 。
認めてしまえばいなくなってしまう、目の前からずっと。でも、解ってしまった。着実に来ているその時は…
「嫌…だ…」
口を継いで出たのは我儘だった。何故こんなときにアイツを困らせるような事しか言えないんだろう。
解っている、今更何も出来ないことも、重荷にしかならないことも。
「――。―…、――!」
アイツは何かを言っていたけれどもアイツをどうにか説得できないか考えていた自分の耳には入ってこなかった。
が最後の一言だけは自分を現実に引き戻させた。
「さよなら」
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初めてのデートは水族館にした。デートのために服装にも気合いを入れたのに何も言ってくれなかったな。初めて二人で見たイルカショー、初めて二人で食べた夕御飯。アイツとはなにもかもが初めてだった。
アイツの笑顔を見るだけで幸せを感じられた。アイツと手を繋ぐだけで心が躍った。アイツと――、アイツと―――
「ねぇ…大丈夫なの…?」
母親が部屋に来た。
アイツにフラれて、もう一週間部屋に籠りっ放しだった。学校にも行かず親ともろくに口を利かない生活を送っていた。
「ご飯は机の上に置いておくからね。―無理はしちゃダメよ?」
そう言って母親は部屋から出ていった後には仄かな卵がゆと味噌汁の匂いだけが残っていた。
「ご飯なんて…食べられないよ…」
詰まりに詰まった想いは誰にも伝わらず、ただ部屋に響くだけだった…
翌朝、食器を片付けに来た母親が口をつけた痕の無い料理を見て一週間も部屋に閉じ籠りっ放しの我が子を思いやってか、イライラしてしまったからなのか。母親は突然部屋のカーテンを開け言い放った。
「部屋に閉じ籠っていると気が滅入りやすいものなんだから…今日は良い天気なんだし外に行ってきたら?」
提案口調の癖に拒否させない強さを中に秘めていたので、渋々頷き出掛ける準備を始めた…
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「…暑い。」
季節はもう七月の下旬に差し掛かっていた。部屋の中では冷房を効かせまくっていたから外の暑さに馴れている訳がない。
その上、ここ一週間しっかりと食事を摂っていないのだ。体力も確実に落ちていた。
「帰りたい…」
が、帰ればまた親に追い出されかねない。どうしようか悩んだ挙句に喫茶店に行くことにした。あそこなら涼しいし、落ち着ける。
そうと決まれば後は早かった。昔はアイツとのデートの待ち合わせにもよく使った場所なのだ。この町にそこしか喫茶店が無いというのもあるが、足繁くに通っていた場所には違いないので体は覚えていた。
喫茶店に入ると心地良い冷気が体を包んだ。
「いらっしゃいませー、あれ?お一人様っすか?珍しいー」
ええ、ちょっとありまして…と軽くやり取りをしてから、窓際の席に案内された。
まったく…ここのウリがいくらフランク且つ一線を弁えた接客だからと言っても今のは若干堪えた…
アイスコーヒーを頼み、飲みながら外行く人々を眺めていたら見覚えのない奴が手を振っていた。
(誰だっけ…?)
目を凝らして考えていると今度は見慣れた奴が手を振っている奴に近づいていった。
(アイツ…)
自分がフラれてから一週間、早速新しい相手を作っていたとは…もしかしてフラれた時にはもう付き合い始めていたとか…
と、考えている内にアイツらが歩き始めてしまった。追うべきか追わざるべきか考えてもいなかった。会計を済ませ、店員の声を背にアイツらを追い始めていた。
読んでくださった方はお分かりかと思いますが、「アイツ」と「自分」には性別がありません。
最初に思っていた性別と入れ換えて読んでみると何か面白味が増すかもです。
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