プロローグ
初めて書きました!シロウトなので駄文が多いかもしれませんが一生懸命書いたのでよろしくおねがいします。
少年は目を覚ました。
心地よい畳の香りが鼻を通り抜ける。
――もう少し眠っていたいなぁ…。いや、もうすぐおじいちゃんが起こしに来るぞ…。…ほらきた。
足音が少年の寝ている布団まで近づいてきた。足音は奇妙なリズムをとっていた。おじいちゃんがひいきにしている演歌歌手の十八番、
「男は黙ってラジオ体操」
という歌のいわゆるサビ部分だ。少年は枕に顔をうずめて寝たふりをするが、まったくの無駄だという事が少年にはわかっていた。――もうちょっと寝かせて、だって昨日の夜はずっとゲームをしてたんだ。お願いだから―――
少年の心の叫びはどうやらおじいちゃんには届かなかったらしく、深く息を吸う音が聞こえてきた。少年は器用に寝たふりをしながら耳をふさいだ。しかしお腹にとてつもない衝撃を感じて普通じゃ出せないような声をあげて跳び上がった。どうやらおじいちゃんは猫を上から落として少年を起こそうとしたようだ。じゃあなんで息を吸ったのおじいちゃん。
――いたたた…。ミケはまた一段と太ってきたなぁ…。
ミケというのは猫の名前だ。ミケといっても三毛猫ではない。ロシアンブルーだ。しかもオスだ。もしかしたら猫ですらないのかもしれない。それほどにこの猫は大きかった。飼い始めた頃は少年の手ぐらいの小さな子猫だった。なのに(栄養のバランスも考えてるしエサの量もちょうどいいくらいなはずなのに)5年たった今は少年がさっきまで寝ていた布団の枕より一回りも二回りも大きい。少年の枕は普通より大きめなのでこれは大問題だ。
少年はなぜこんなにミケが太ったか知っていた。父さんや母さんの見ていないところでおじいちゃんが肉や魚をミケにたくさんあげるのだ。母さんが食材がみるみるうちに減っていくのを不思議がっていたぐらいに(一日一匹魚が消えていくのにおじいちゃんはまったく気付かれていなかった)。「ほら、起きろシュウ。」
おじいちゃんが少年の名前を呼ぶ。
少年の名は
神村 周。
楽しい楽しい夏休みをスーパーもコンビニもない、あるのは山ばっかりの超超超田舎で暮らすはめになったかわいそうな小学六年生だ。一年前東京に引越してきたシュウは都会の夏休みを心待ちにしていた。まさかお父さんに
「たまにはおじいちゃんに顔見せに行きなさい。」
と言われるとは思わなかったのだ。シュウは田舎が嫌いだが、それよりもいやなのは、すぐ隣にいるデブ猫―――ではなくておじいちゃんだった。とってもヘンテコなのだ。扇風機に向かって
「あ〜〜〜〜〜。」
と声を出して遊んだり、歯磨きの後のうがいを三十分もしたり、テーブルに乗っているみかんを口説き始めたり、夜中にとつぜんいなくなったと思ったら一週間後にイナゴ三匹と熊一頭を持って山からおりてきたりしていた。服装もちょっと、いやかなり奇妙だ。猫が落ちてきた痛さがようやくおさまり、シュウは立ち上がりおじいちゃんを見た。うーん、今日も奇妙。おじいちゃんはあまり多くはない髪の毛を赤に染めており、虹色のシャツを着て緑色のズボンを履いていた。おまけに外へ出る時は星の形をしたサングラスをかけるのだ。とても七十歳とは(というよりとても人とは)思えなかった。
シュウが起きたのを確認したおじいちゃんは、
「おはよう、シュウ。」
と言って、居間へ歩いていった。シュウも居間へ向かうと、すでに亡くなっているおばあちゃんの遺影が目に入った。遺影のまわりをたくさんのバラが囲んでいて、さらにそのまわりを折り紙で作った輪っかが飾られている。おじいちゃんのデザインだ。飾り付けのせいでどうしても遺影の方を見てしまう。おじいちゃんは遺影に手を合わせている。これはおじいちゃんの日課で、一日も欠かしたことはない。やがておじいちゃんは遺影から離れ、自分の部屋へ入っていった。実はさっきの服はパジャマらしいのだ。よくあんな服で寝れるものだとシュウは感心した。
しばらくしておじいちゃんが戻ってきた。おじいちゃんをちらっと見てそのあと反対側のテレビに目を向けたシュウは今見た光景が信じられなくてもう一度、今度は首を痛めるほどの速さでおじいちゃんを見た。
おじいちゃんがいるはずのその場所には金色の物体がいた。
――お、おじいちゃんが変身した…。
というわけではなく、おじいちゃんがどこから手に入れたのか金色の全身タイツを着ていたのだ。ア然としているシュウと向かい合う形でテーブルのイスに座ったおじいちゃんは牛乳を二杯注ぎ、二枚のトーストを皿に乗せた(焼き上がる時に焦げ加減を利用して文字を描くトースターを使っているのだがその文字がなんと
「ビックカメラ」
)。「どうした、元気ないぞ。おじいちゃんが子供の頃はなぁ…。」
おじいちゃんがいつもの調子で語り始めた。全国にいる普通のおじいちゃんならここで子供の頃は外で元気に遊んでいたという話や戦争はあーだこーだという話などをよくしてくれるものだが、シュウのおじいちゃんはやはり普通ではなかった。
「おじいちゃんが子供の頃は角の生えた怪物やら、とっても小さな妖精やら、不思議な力を持った者たちがたくさんいたものだ。おじいちゃんは英雄だったんだぞぉ。世界を救ったんだ!勇者の剣で怪物をこう…ズバッと…。」
おじいちゃんのこの話に、シュウはうんざりしていた。これなら戦争の話の方がまだましだ。
――早く話し終わらないかなぁ…。
これが本当の話であるはずがない、とシュウは思っていた。だって有り得ない。角の生えた怪物だって?言ってて恥ずかしくないの?シュウはそう思っていた。まさか本当の話とは、自分も同じ運命をたどるはめになるとは思っていなかったのだ。
プロローグどうでしたか?この話はかなり長くなると思います。飽きずについてきてくださると嬉しいです。評価はできるだけ甘口で………よろしくお願いします。