勇者が最期に伝えたいこと
勇者と聖女は魔王を倒した。
戦いの現場に残った
・魔王の死体。
・血だらけの瀕死の勇者
・ポーションを使い果たした、聖女が一人
「もう、魔力も残っていないのか。。。。」
どんなに瀕死であっても、エクストラヒールを使えれば助かるのに、今はそれができない。
それほどの壮絶な戦いだった。
ぐふ。。。。
出血が止まらない。もうだめか。。。。
死。。。
勇者は覚悟した。
「ごめんなさい!私を庇わなければ、あなたは傷つくこともなかったのに。」
「泣かないで、聖女。あそこで君を守らなければ、僕はもはや勇者ではなくなる。
君を救うことで、僕は本当の勇者になれたんだ。だから魔王を倒せた。。。。」
ぐふ。。。。
さらに血が吹き出した。
勇者!勇者!
法衣が血で赤く染まりながらも、聖女が勇者を抱きかかえる。
「最期に君に聞いてほしいことがある。」
聖女は勇者の手を握った。
「いつも、言葉に出せなかったけど、君には感謝している。
状況を見極めて、最適なサポートを繰り出してくれていた事に本当に感謝していたんだ。
優しい言葉一つかけられなくて、ごめん。」
「そんなことないわ。あなたの行動に優しさが滲んでいることを感じていました。
いつも、特別な時に自分へのご褒美として、買ったケーキの三分の二を取って食べてくれていたのは、この最強防御力の法衣が着れなくならないように、配慮してくれていた。
|あなたの優しさだとわかってましたよ。」
あぁ、これは腸煮えくり返ってるのに、逆を言ってる状態だ。。。どうしようすごいストレスだ。
ぐふ。。。。
再び勇者は血が吹き出した。
勇者!勇者!
聖女が声をかける。
すぅ。。。。勇者の呼吸が落ち着いた。
「僕の財産は、バンク洞窟の最深部に封印して保管してある。。。
これからは、君が。。。。
目印はふたご座。。。
封印を解除するには、、、、ぐふ。。。。」
「勇者!勇者!それ、重要なことよ。しっかりして!」
聖女が声をかけた。
「合言葉がある、、、、合言葉は。。。。」
「合言葉は?」
。。。。
。。。
。。
「私の愛は聖女のもの。。。。。」
「え?」
「それ、ほんと?」
「あぁ、本当だ。本当の合言葉だ。」
「いや、その、合言葉じゃなくて、、、、」
言ってしまった、恥ずかしー!
ぐふ。。。。
また再び勇者は血が吹き出した。
勇者!勇者!
聖女が声をかける。
すぅ。。。。勇者の呼吸が落ち着いた。
「冒険のために二人で買った馬は、レジェンド牧場に預けてある。
あの子を引き取って面倒を見てやってほしい。
ほんとにいい子なんだ。覚えているかな。」
「もちろん覚えているわ。勇者たるもの冒険に白馬は必須だって言って。私が馬に乗れないことをわかっていたのに、俺が乗馬を教えてやると言って、パーティーの共有資金から購入した馬よね。結局一度も乗馬を教えてもらえず、あなたが乗馬を楽しんだだけだった。あの馬。。。。」
やばい、虎の尾を踏んだかも、、、、もう、この場から逃げたくなってきた。
ぐふ。。。。
またまた再び勇者は血が吹き出した。
勇者!勇者!
聖女が声をかける。
すぅ。。。。勇者の呼吸が落ち着いた。
「昔、ソロのイケメン魔法使いと一緒にクエストをやった時に、君が彼にお守りをプレゼントしようとした時に、偶然僕も鉢合わせてしまった。
その時、君は咄嗟に複製魔法で、お守りをコピーして、コピーした側を僕にくれたことがあったよね。
そう、このお守り。」
勇者はお守りを取り出した。
「クエストが終わって、魔法使いと別れてからも、夜中にこっそり、魔力を込めてくれてた。
別に誤魔化さなくてもよかった、、、僕が落ち込まないように、気を使ってくれたことが嬉しかった。
僕は感謝しているくらいで、気に病むことはなかったんです。安心してください。」
(バレてたのか。。。。じゃ、よなよな魔力注入する必要なかった。。。。あぁ魔力ムダ遣い。。。。バレてるならやらなきゃよかった。。。)
「最初に複製を渡してしまったのは、間違いだった。でも、毎日あなたの安全を願う事ができるのは幸せだった。「」
(昨夜もこのお守りへの魔力注入しなかったら、今エクストラヒールで勇者を回復できたのに。。。。でも、勇者は気づいてない。でもこの状況では言えないよなぁ。。。。
まあ許してくれるそうだからいいか。)
ぐふ。。。。
またまたまた再び勇者は血が吹き出した。
勇者!勇者!
聖女が声をかける。
すぅ。。。。勇者の呼吸が落ち着いた。
「ダークドワーフの名工がいただろう。彼に最高の材料と最高の技術を注ぎ込んでもらって、対魔王にだけ能力を発揮する究極剣「エクス・カリバーン」。どうだ、美しいだろう。
バカには見えない剣なんだ。
手に持っても全く重さを感じない。でも、とてつもない安心感があるんだ。」
勇者は剣を握る仕草をして、ただ何も無い空中を眺めている。
(見えないわね。これ騙されてる!だいたいエクス・カリバーンて、岩に刺さってて誰にも抜けない剣よね。でも、安心感があるならいいか。最期くらいいいか。)
勇者は続けた。
「この剣を作るのに、少し借金をしたんだ。なに大したことはない。魔王にトドメをさした剣だ。この戦いでさらに箔がついたので、帰って売れば借金を返して利益も出る。売却と返済を忘れないようにしてほしい。」
「借金って、どれくらいの金額?」
「聖金貨100枚。さっき話した僕の財産も一緒に君に相続してほしい。
きっと、すごい金額になるぞ。」
(それ、国家予算以上じゃない!完全な詐欺!何も無い空気にどれだけ払ってるの!
転売しようにも現物がないし、、、)
勇者が返事を求めてじっと見つめている。
(まぁ、実際は相続しないで、ギルドに身寄りのない冒険者がなくなったのと同じ手続きをすればいいのよね。)
ぐふ。。。。
またまたまたまた再び勇者は血が吹き出した。
すぅ。。。。勇者の呼吸が落ち着いた。
「僕は孤児だったから、家庭に夢があるんだ。。。
仕事をを終えて、家に帰って「ただいま」というと、「おかえり」って返事が返ってくるんだ。ささやかだけど僕の夢なんだ。」
(国家予算以上の借金を持ったお可哀想に。)
「夕飯には晩酌に必ずビールがつくんだ。台所から奥さん、冷えたビールを持ってきてくれる。」
(奥さんが、自分のためなら何でも喜んでやってもらえるって、男の妄想だよなぁ。。。)
「そして、見上げると君がいる」
(!!!ムリムリムリムリ!絶対無理!国家予算以上の借金を持つ男の妻になるってありえない!)
「子供は3人欲しいな。一人は剣士、一人は僧侶、一人はハンター」
(ムリムリムリ!こんな借金があったら、奴隷になる以外の将来が見えない)
「家は、待ちから少し離れた日当たりのいい、丘に小さな平屋がいいなぁ」
(ムリムリムリ、この借金で資産を持つなんて絶対無理」
「ダイニングはキッチンと一体になってって、料理をしている君の顔がみえる。。。」
(ムリムリムリ!)
「寝室は。。。」
(ムリムリムリ!)
「ベッドは。。。」
(ムリムリムリ!)
延々と勇者の妄想が続いた。
虫の息がどれほど長い男なのか。。。。
「照明のスイッチは、君の向こうにあるんだけど、僕が君を乗り越えるように。。。」
(もーーーーー!)
がばっ!聖女は立ち上がり、勇者は床に倒れ堕ちた。
「がは!」
勇者は盛大に血を吐いた。
「もうええ加減にしなさい。なんにも聞きたくありません。」
聖女を見上げる勇者の目には涙が浮かんでいる。
聖女は大魔法の詠唱を始めた。
「◯△☓◇*。。。。エクストラヒーーーール!」
みるみる勇者は回復していく。
状況が理解できていないようだ。
「あんたの話が長すぎて、魔力が回復したわ!
ギリギリでしぶといのも程々にしときよ!」
彼らは、魔王討伐の証拠を確保し、帰路についた。
これからの敵は、巨大な借金だ。




