映画館から異世界転移!
「ってことで、ビンゴ頑張ろうな〜!」
「いや、なんでそんなに振り切れてるの!? 僕がおかしいの!?」
目の前に広がる見知らぬ景色を前に、僕たちは立ち尽くしていた。……いや、立ち尽くしているのは僕だけで、隣の親友はなぜかやる気満々だ。
(いや、なんでぇ〜……?)
時は遡ること、数十分から一時間ほど前。
この物語の主人公であるアキラと親友のそらは映画館の深く沈み込むようなシートに身を預け、スクリーンの光に照らされていた。
「(オォ! 主人公の最強魔法、くるぞ……!)」
隣に座るそらの横顔を盗み見れば、期待に頬を緩ませ、ニヤリと口角を上げている。
物語は最高潮。主人公が杖を掲げ、全てをなぎ払う究極の魔法を解き放とうとした、その瞬間だった。
突如、劇場の天井から現実味のない「腕」が、音もなくするりと伸びてきた。
それは意思を持つ影のように僕たちの襟首を掴むと、足元に口を開けたどす黒いブラックホールのような渦の中へと、容赦なく引きずり込んだ。
(えっ、ちょっと待って!? これから敵を倒す良いところなのに!)
(それに、キャラメル味のポップコーン、まだ半分以上残ってるのにー!
今日、贅沢してポップコーン単品じゃなくて、セットなんだよ!)
視界が真っ暗な渦に飲み込まれ、平衡感覚が溶けていく。
抗いようのない重力に魂まで吸い込まれながら、僕は消えゆく意識の中で、ただただ深い、深すぎる未練を噛み締めていた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました! この後の展開も想像しながら楽しんでってくださいね!




