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朝起きたらギックリ腰になっていた

作者: 斉藤寅蔵

しいな ここみ様主催『朝起きたら……企画』参加のコメディーホラーです。

「……『朝起きたらギックリ腰になっていた』というのはどうじゃ?」

「いやこのお題そういう意味じゃないから」


 某小説投稿サイトで『朝起きたら○○になっていたというシチュエーションで作品を書こう』

 という主旨の個人企画が開催されており、投稿者のハジメは昨日からこのお題で小説を考えていた。

 お題の意味は広く捉えていいらしいが、ハジメはこのお題を見て誰もが思い起こすカフカの変身のような小説を書こうと思ったのだが。

 どうにもいいアイデアが浮かばない。 

 そこで気分転換がてらに投稿仲間の一人で、ハジメにとって数少ない女性の友人であるラミさんに電話を掛けて、

「このお題でなんかアイデア思い付かない?カフカの変身みたいなの」

 と聞いてみたところ冒頭の答えが返ってきた。

 どうやら寝起きで寝ぼけているらしい。


「いやだからそういうんじゃなくてさ」

「……おかしいかの?では……『朝起きたら五十肩になっていた』」

「ズレてる方向がまったく直ってないよ!」

「……む?ならば……『朝起きたら深爪になっていた』」

「だからズレてるってば!それじゃ変身してないじゃん!」

「……なにを言っとる……最初から変身の話しかしとらん……変身せねばギックリ腰にも五十肩にも深爪にもならんじゃろう……」

「なるよ!全部人間のままでなるよ!変身いらないよ!」

「……変身いらない?……あ!?」

「え?」


 ハジメはスマホを通してラミさんの雰囲気が変わったことに気づいた。

 どうやら寝ぼけながら返事をしていたのが、ようやくしっかりと目が覚めたらしい。


「あ、あーっ!そうじゃな、人間のままでなるな!変身いらんな!うん!」

「ラミさん?目覚めた?」

「覚めた覚めた!バッチリ覚めた!あー、えーと、今すぐにはアイデア浮かばんからなんか思いついたら連絡する!あ!それとワシ夢見て寝ぼけとったからさっきまでのワシの言ったことは気にせんようにな!それじゃあの!」

「え?あ、うん」


 突然通話を切られたハジメは少しの間ポカンとしていたが、やがて気を取り直してアイデアを練りはじめた。


 ◇◆◇


「ふぃ~、いかんいかん、危うくボロを出すとこじゃったわい」


 ラミさんはウロコに覆われた尻尾の先を使ってスマホの通話を切ると一息ついた。

 そう、彼女の正体は数百年を生きた大蛇だった。

 人語を解し、人間に変身することも出来る。

 なのでさっきお題を振られた際についうっかり

『朝起きたら(蛇が変身して)人間になっていた』

 前提で答えてしまった。

 腰も肩も爪も無い彼女は、人間に変身しない限りギックリ腰にも五十肩にも深爪にもならないのだ。


「しかしなんで傷病のアイデアばかり出てきたんじゃろ?」


 ラミさんも歳なので無意識に健康が気になりだしていたのだがその自覚はない。


「まあよい。朝飯にするか」


 そう呟くとラミさんは調理するために人間に変身してキッチンへ向かったのだった。


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― 新着の感想 ―
 はっはっは。これは面白い。  人間のふりをした人でなしの私には刺さる作品でした。  実際私は怪しい話で人を惑わす蛇のような存在ですしね。  こんな病んだことばかりを言う私ですので、朝起きたら疾病が失…
コメディーホラーとはなんぞや……と読み始めたところ、すごくニヤニヤさせて頂きました(*´ω`*) ラミさんもお年を召されているところ、面白かったです笑。 朝ごはんは一体何食べるんだろ……普通に人間と同…
タイトル見て『当たり前すぎるじゃん!』とツッコミを入れたのですが、読んでみて当たり前じゃないとわかりました。 当たり前だと感じてることを当たり前ではなく描く──異化効果がある……かどうかはわかりませ…
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