表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/11

7話

祝7日目です!

このまま最後まで毎日投稿ができるように頑張っていきたいと思います。

図書館を離れたユウとカイ。

目指すのは、さらに北――雪に覆われた荒野。


「なあユウ」

カイが歩きながら口を開く。


「学者の話とリナの話、どっちを信じる?」


ユウは答えられなかった。

手紙を握る手に力が入る。


「わからない。

 でも……自分で確かめたい」


その言葉に、カイは少し笑った。

「だよな。オレもそう思う」



北の地は厳しかった。

吹きすさぶ雪。

体温を奪う冷気。


「うわ、足が埋まる!」

カイが転んで雪に沈む。


「しっかり!」

ユウが手を引き上げる。


凍える道を進むうち、二人の息は荒くなっていった。


だが――その先に見えたのは、氷に閉ざされた古い祠だった。


「……なんだ、あれ」


雪煙の中に、ただ一つ、黒々と口を開ける洞。


冒険者の直感が告げていた。

そこには、旅を進めるための“何か”が待っている。


氷に閉ざされた祠。

ユウとカイは足を踏み入れた。


内部は静かだった。

凍りついた壁に灯りが反射し、青白く光っている。


「……寒いな」

カイが身震いする。


そのとき――

奥から低い唸り声が響いた。


ずしん。

ずしん。


巨大な影が現れる。

白銀の毛並みを持つ狼。

目は氷のように青く、牙は鋭く光っていた。


「で、でけえ……!」


狼は二人をじっと見つめ、声なき声を放った。


――来る者よ、試されよ。


頭に直接響くような声。

ユウは息をのんだ。


「試される……って?」


狼の足元に、氷の剣が二本、突き立った。


一つはユウの前に。

一つはカイの前に。


「これを持て、ってことか?」

カイが剣を手に取る。

冷気が走り、歯を食いしばった。


ユウも震える手で剣を握った。


氷狼の瞳が光を増す。


――力だけではなく、心を見極める。


次の瞬間、狼が飛びかかった。


「来るぞ!」

カイが叫ぶ。


二人の冒険は、ここで真の試練を迎えようとしていた。


氷の剣を握りしめ、ユウとカイは同時に駆けた。


「はああっ!」

「うおおっ!」


剣が光を放ち、狼の巨体に斬りかかる。

だが――


がぎん!


一瞬で弾き返された。


「なっ……強すぎる!」


氷狼の尾が唸り、二人は壁に叩きつけられる。

冷気が肺を刺す。

立ち上がろうとするが、膝が震えて動かない。


狼の青い瞳が、ふっと細められた。


――今のままでは、何も守れぬ。


その声は、厳しいが温かかった。


「……負け、か」

ユウが唇を噛む。


――されど、まだ終わりではない。


狼が前足を地に叩きつける。

氷の床に、模様が浮かび上がった。

それは古い戦いの型を描いたものだった。


――我が力を示そう。

 試練を越えるために、心と体を鍛えよ。


「お、おい……」

カイが驚きに目を丸くする。


「特訓……してくれるのか?」


氷狼は低く唸り、頷くように顔を傾けた。


――立て。まだ剣を握れるなら。


ユウとカイは視線を交わし、再び剣を握り直した。


氷の祠に、少年たちの声が響いた。

新たな師を得て、彼らの旅はまた一歩進む。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ