4話
連載4日目です!
楽しんでいただけてたらうれしいです
影たちが四方から襲いかかる。
でも、リナは舞うように動いた。
一瞬で懐に入り、短剣の柄で男を沈める。
踵で蹴り飛ばし、木に叩きつける。
その速さに、息を呑んだ。
――強い。
ぼくが必死に守ろうとした手紙を、
彼女は笑いながら守りきっている。
「数は多いけど……退屈ね」
最後のひとりを刃先で威嚇すると、
黒衣の影たちはたまらず退いた。
「クソッ……覚えていろ!」
そう吐き捨てて、森の奥へと消えていく。
静寂が戻った。
ぼくはへたり込む。
「……すごい」
思わず、声がもれた。
リナは短剣をくるりと回し、鞘に収める。
「なに? 惚れた?」
「ち、ちがっ……!」
顔が熱くなる。
リナはいたずらっぽく笑った。
「ま、まだまだ子どもだね、少年」
そう言って振り返らずに歩き出す。
胸の奥がざわついた。
悔しい。
でも、追いつきたい。
その気持ちが、手紙の重みをさらに強くした。
山を下りたぼくは、石畳の街にたどり着いていた。
見知らぬ喧騒。
胸の奥に、ざわめきと期待が入り混じる。
この街で、手紙の謎に近づけるかもしれない。
街の広場を歩いていると、ひときわ大きな建物が目に入った。
高い尖塔と、重たそうな扉。
人々が「学びの館」と呼んでいた場所――古い図書館だった。
「ここなら……」
手紙の宛先を探す手がかりがあるかもしれない。
中に入ると、埃と紙の匂いが漂っていた。
膨大な本棚の間を、白髪の学者がゆっくりと歩いている。
「君、旅人かね?」
「はい……」
ポケットから手紙を取り出し、恐る恐る見せた。
学者の目が細く光る。
「これは……ずいぶん古い書式だ。
もう使われていない王国文字だな」
「王国文字……?」
「うむ。数百年前に滅んだ王家だけが使った、特別な筆跡だ」
胸がどくん、と鳴った。
ただの手紙じゃない。
もっと、大きな秘密が眠っている。
学者は声をひそめた。
「少年。誰からこれを託された?」
「……村の長老です」
「そうか……ならば気をつけるがいい。
これを狙う者は、必ず現れるだろう」
その言葉に、リナや黒衣の影が脳裏をよぎった。
「宛先を知りたいのなら――北の大図書館へ行くことだ。
そこには失われた王国の記録が残っている」
「北へ……」
新しい道が示された瞬間、手紙の重みはさらに増した気がした。