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27話

27日目

いいペースで投稿ができて幸せな作者でございます。

幹部を討ち果たし、静寂が訪れた。

焚き火の明かりの下、リナは腕を組み、ユウたちを見渡す。


「……あんた、本当に師匠を超えたのかもしれないわね」

リナの声は皮肉混じりだが、瞳は真剣だった。


ユウは真っ直ぐに答えた。

「俺は師匠に教えを受けただけだ。

 でも、その教えを守って生き抜いた。これからも――手紙を届けるまで」


しばしの沈黙の後、リナは大きく息を吐き、肩をすくめた。

「ったく、面倒な相手を選んだもんだわ……。

 でもいい。どうせ私も、この手紙の秘密を知りたい。

 一緒に行ってやる」


カイが目を丸くする。

「おい……本気か?」


「本気よ。ただし勘違いしないで。仲良しこよしがしたいんじゃない」

リナは腰の刃を軽く叩く。

「手紙の真実を解き明かす。そのために、あんたたちを利用するの」


ノエルは小さく微笑んだ。

「それでも……今は仲間、でしょ?」


リナは少し言葉に詰まり、目を逸らした。

「……好きに呼べばいいわ」


ユウは剣を背に収め、静かにうなずいた。

「ようこそ、リナ」


その瞬間、焚き火の炎が大きく揺れた。

ライバルであり敵でもあった彼女が――今、仲間となった。

手紙の秘密を解き明かす旅が、新たな形で動き出す。



漆黒の大広間。

松明の火がゆらめく中、一人の影が静かに立っていた。


黒衣の影――その首領は、報告を受けていた。

「……幹部が、討たれた?」


跪く部下は震える声で答える。

「は……はい。ユウたちと、リナによる共闘で……」


長い沈黙が落ちた。

やがて低い笑い声が広間に響きわたる。

「そうか……あの小僧が、師を越えたか」


指先で虚空をなぞりながら、黒衣の影は呟く。

「だが、それでこそ面白い。

 手紙が“封印”を解く鍵である以上、奴らが導く先は……必然的にあの地」


部下が恐る恐る尋ねる。

「……このまま奴らを放置してよろしいのですか?」


影は首を横に振る。

「いいや。だが焦る必要はない。

 むしろ好都合だ。彼らが手紙を運び、真実を暴き、封印の扉を開ける。

 ――我らが望むのは、その瞬間に手紙を奪うこと」


炎が強く燃え上がり、影の瞳に赤い光が宿った。

「幹部の死は痛手ではある。だが代わりはいくらでもいる。

 次は私自らが舞台に出る時かもしれんな……」


不気味な笑みが広間に広がる。

黒衣の影の野望はなお消えることなく、むしろ幹部を失ったことで、より深い闇を帯びて燃え始めていた。



幹部を討ち果たした余韻も冷めやらぬまま、ユウたちは森を抜け、岩肌の多い台地へと足を踏み入れた。

風は乾き、遠くには古びた石造りの遺跡の影が見える。


「……ここが次の手掛かりの場所か」

カイが耳を立てて周囲を探る。魔物の気配は薄い。だが、代わりに大地全体がどこか不気味な静けさを帯びていた。


ノエルは見つけた破片を拾い上げる。古代文字の刻まれた石片。

「これは……師匠が探していた封印の遺構に関わるものかも」

その声に、ユウは改めて背負う手紙に手を添える。


リナは少し離れた場所で、崩れた壁を眺めながら呟いた。

「やっぱり、この手紙の行き先はただの届け物じゃなさそうね」


四人は互いに視線を交わし、無言のまま頷いた。

次に待ち受けるのは、封印へと至るための本格的な探索。

そしてそこには、黒衣の影の影がすでに迫っているかもしれない――。


崩れかけた石造りの遺跡。

柱にはびっしりと苔が生え、風が吹くたびに砂埃が舞った。

四人は慎重に奥へと進む。


「……見ろ、ここ」

カイが指さした壁面には、古代文字で刻まれた文が並んでいた。

ノエルが顔を近づけ、指でなぞる。

「“封印を解く鍵は、選ばれし者の手に託される”……」

声が震える。


ユウは無意識に背中の荷――村長から託された手紙へ手をやった。

リナがその動作を見逃さず、細めた目で笑う。

「やっぱりね。あんたの手紙がその“鍵”ってわけ」


さらに奥へ進むと、中央に円形の石壇があった。

その表面には封蝋に似た文様が浮かび上がっている。

ノエルは思わず息をのむ。

「師匠が追い求めていたのは……これ。封印の構造そのもの」


ガロウの言葉がユウの胸に甦る。

――“手紙はただの届け物ではない。お前自身の成長を試す証でもある”。


石壇の前に立ち、ユウは拳を握りしめた。

「俺は……届ける。この手紙を、最後まで」


その決意に、リナは静かに肩をすくめる。

「ふん……お人好し。でも、嫌いじゃないわ」


遺跡の奥、闇の向こうから不気味な気配が広がる。

封印を守る何者かか、それとも黒衣の影の刺客か――

次なる試練の影が、確かにそこに潜んでいた。


石壇の文様が淡く光を放ち始めた。

その輝きはやがて柱へ、壁へと走り、遺跡全体が震え出す。


「な、なんだ……?」

カイが身構える。


次の瞬間、石壇の中央から黒い影が溢れ出した。

形を整え、巨躯の人型を成す。

眼窩には紅い光――封印の守護者だった。


「侵入者ヲ、排除ス」

低く響く声。石の剣を構え、巨人が一歩踏み出す。


ユウは剣を抜いた。

「来るぞ!」


最初の衝撃は凄まじかった。巨人の一撃が床を砕き、破片が飛び散る。

カイが飛び込み、爪で切り裂こうとするが、石の肌は硬く、火花が散るばかり。


「なら……私が!」

ノエルが魔法陣を展開し、雷の矢を放つ。

光が石肌を焦がし、わずかにひびを刻む。


ユウは仲間の攻撃の隙を突き、渾身の一撃を巨人の胸へ叩き込んだ。

だが守護者は揺るがず、逆にユウを薙ぎ払おうと腕を振るう。


その時、背後からリナの声が飛んだ。

「避けなさい、ユウ!」


風のように駆けたリナの刃が、巨人の関節を斬り裂く。

ユウは転がりながら剣を握り直し、リナと視線を交わす。

「ありがとう!」

「礼は後で!」


連携の中で、少しずつ石の巨人は動きを鈍らせていく。

最後、ユウは全身の力を剣に込め、仲間の援護を背に跳び上がった。

閃光の一撃が巨人の額を割り、紅い光が掻き消える。


轟音と共に、巨人は崩れ落ちた。

静寂が戻り、石壇の文様は穏やかに光を宿す。


ユウは荒い息を吐きながら剣を収めた。

「……これが、封印を守る力」


ノエルは目を伏せ、震える声で呟く。

「師匠が追い続けた理由……ようやく分かった気がする」


リナは肩をすくめ、しかしその目は真剣だった。

「どうやら私たち、思った以上に厄介なものを抱えてるみたいね」


彼らは互いに視線を交わし、次の一歩を踏み出す。

封印の秘密、その核心に一歩近づいたのだった。



崩れ落ちた守護者の残骸は、光の粒となって宙に溶けていった。

静寂の中、石壇の文様が再び輝きを放ち、淡い光がユウの背の荷――手紙へと導かれるように走った。


「……今の、見たか?」

カイが驚きに耳を立てる。


ノエルは震える指で光の軌跡を追いながら呟いた。

「封印と……手紙はやっぱりつながってる。まるで、この手紙を“認めた”みたい」


ユウは思わず手紙を両手で抱きしめる。

「俺に……届けろって、ことなのか」


リナがゆっくりと歩み寄り、石壇の刻印を眺める。

「“選ばれし者に託されし鍵”……古代語の一節よ」

彼女は肩をすくめ、ユウをちらりと見やった。

「どうやら本当に、ユウがその“選ばれた者”ってわけね」


ノエルの瞳に決意の光が宿る。

「もしそうなら、師匠が果たせなかった使命も、ここで繋がる……」


カイは拳を握り、仲間を見渡した。

「なら、守るしかないな。ユウと、その手紙を」


遺跡の奥から、冷たい風が吹き抜けた。

石の壁に新たな道が開かれ、その先にはさらに深い闇が広がっている。


ユウは剣を腰に戻し、仲間に向かって頷いた。

「行こう。手紙の秘密を、最後まで解き明かすために」


光に導かれるように、四人は封印のさらに深い領域へと足を踏み入れていった。

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