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15話

15日目

コツをつかんできて焦らずに投稿できるようになってきました!


白き塔の中は、冷たく広い回廊だった。

光源はないのに、壁が淡く光を帯びて三人を照らしている。


一歩、また一歩。

進むうちに、足元の床が揺らめいた。


「なっ……!」

ユウは思わず声を上げる。


次の瞬間、三人は白い霧に呑まれ――互いの姿を見失った。


ユウの試練


白霧の中に、見覚えのある庭が現れた。

故郷の家、父の背中。


剣を手にした父は、鋭い目でユウを見つめる。

「ユウ。お前はまだ子どもだ。剣を振るう腕も未熟、心も弱い。

 一人前になどなれるはずがない」


胸が締めつけられる。

何度も聞かされてきた言葉。


「……でも、ぼくは」


父の影は一歩近づく。

「手紙? くだらん。お前が運ぶ価値などない」


ユウの足は震えた。

けれど、胸元の手紙をぎゅっと握りしめる。


「ぼくは……届けたいんだ! 誰かに決められるんじゃない。

 自分の足で、自分の手で、未来に繋ぐんだ!」


父の影は黙し、霧に溶けて消えた。


カイの試練


氷の大地に血が広がっていた。

倒れているのは、かつての仲間たち。


「……やめろ」

カイは剣を握り、声を震わせた。


亡霊のように仲間たちが顔を上げる。

「お前が守れなかったせいだ」

「また繰り返すのか?」


鋭い言葉が胸を抉る。

剣を持つ腕が、重く下がりそうになる。


だが、耳に届いたのはユウの声だった。

「一緒に戦ってくれて、ありがとう」


そしてノエルの笑顔。

「仲間でしょ、当たり前だよ!」


幻が霞み、カイは剣を振り上げた。

「俺は守る! 過去の俺とは違う。

 何度だって立ち上がり、今度こそ仲間を守り抜く!」


血に染まった景色は砕け散り、白霧に溶けた。


ノエルの試練


白霧の中、村の広場が広がった。

村人たちの影が取り囲む。


「未熟者に何ができる」

「子どもの夢など儚い」

「行ったところで足手まといだ」


胸が締めつけられる。

小さな手が震え、氷の光が掻き消えそうになる。


その時、耳に残ったのはユウの言葉。

「一緒に行こう、ノエル」


そしてカイの声。

「上出来だ」


彼らと共に戦った記憶が、声に打ち消される。


「……違う! あたしは一人じゃない!

 仲間と一緒なら、どこまでだって行ける!」


氷の光が強く輝き、影たちを凍り砕いた。

ノエルは胸を張って歩き出す。


三人はそれぞれの声を振り払い、霧の中を進んだ。

そして――再び同じ場所に立っていた。


「……戻れた」

ユウが安堵の息をつく。


カイは剣を握り直し、ノエルは涙を拭う。

三人は互いを見て、言葉なく頷き合った。


その瞬間、塔の奥への扉が音を立てて開いた。

まるで彼らの覚悟を認めるかのように。


白き塔の奥へ進む三人の前に――あの灰色の外套の旅人が立っていた。


霧の中で、彼の姿だけがはっきりと浮かび上がる。


「やはり、お前たちはここまで来たか」

低く響く声。


「あなた……いったい何者なんです?」

ユウが問いかける。


旅人は、白い杖を軽く掲げた。

その瞬間、外套の内側が光に包まれ、姿が変わる。



灰色の布が消え去り、現れたのは白銀の装束に身を包む男。

胸には古い紋章――かつての王国の守り人の印が刻まれていた。


「私は〈塔の番人〉。

 この地に生きる者が、己の弱さを乗り越えられるかどうかを試す存在だ」


ノエルが目を見開く。

「じゃあ、私たちが見たのは……全部」


「幻ではない。

 お前たちの心に潜む真実だ。

 それを拒まず、超える力を持った者だけが、先へ進む資格を得る」


カイが一歩前に出た。

「なら聞く。俺たちは、何を目指して進めばいい?」


番人は静かに彼を見返す。

「――手紙を届けること。それがすべての始まりであり、終わりでもある」


ユウの胸が熱くなる。

「やっぱり……手紙が、鍵なんだ」


番人はわずかに口角を上げる。

「答えは北にある。だが道は険しい。黒き影も、すでに動いている」


そして白銀の姿は、再び霧に溶けるように消えていった。



「……行こう」

ユウは手紙を抱きしめ、前を見据える。

カイとノエルはうなずき、三人は白き塔を後にした。


北へ――その先に待つ真実へと向かって。

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