13話
13日目!
どんな結末を迎えるべきか考えながら書いております。
広場に集まった子どもたちの前で、少女は雪を舞わせていた。
白い粉は鳥の形となり、空を羽ばたく。
子どもたちの歓声が響き、雪鳥はやがて溶けて消えた。
「……氷術?」
ユウが呟く。
少女は銀の髪を揺らし、こちらを振り返る。
「見てたの?」
あどけなさの残る笑み。
「あたしはノエル。この村で魔術を学んでるの」
夜、宿で休んでいるとノエルが訪ねてきた。
「お願い、あたしを連れてって!」
カイが驚いて声を上げる。
「いきなり何を――」
ノエルの瞳は真剣だった。
「あの光……白き塔に導かれてるんでしょ?
あそこには、あたしの師匠が探していた古い魔術が眠ってる。
だから行きたいの」
翌日、村の長老と大人たちが集まり、ノエルを止めた。
「子どもが行く場所ではない。
塔は禁断の地だ。戻らぬ者ばかりだぞ」
ノエルは唇を噛む。
「でも……このまま村で小さな術を繰り返すだけなんて、嫌!」
村人たちの視線は冷たかった。
「未熟者には無理だ」
「無謀な夢を見るな」
ノエルは耐えきれず走り去った。
雪原でうずくまる彼女を、ユウは見つけた。
「ノエル」
少女は震える声で言った。
「あたし、笑われてばっかり。
未熟だって、子どもだって。
でも……それでも行きたい。
師匠が信じてた“魔術の未来”を、この目で確かめたいの」
ユウは静かにうなずいた。
「ぼくも同じだよ。
一人前じゃないし、怖いことばかりだけど……
それでも前に進みたい。
だから、わかるんだ」
ユウは手を差し伸べた。
「一緒に行こう、ノエル」
ノエルの瞳が潤み、ゆっくりとその手を取った。
「……ありがとう」
こうして、氷術師の少女ノエルは仲間となった。
未熟な力でも、その決意は本物だった。
村の門を出ると、視界いっぱいに雪原が広がった。
北風が頬を刺し、三人の足跡が白の中に刻まれていく。
「ふふっ、やっと始まったって感じ!」
ノエルが嬉しそうに笑い、手を広げる。
雪をまとった袖が風に揺れた。
カイは肩をすくめる。
「お前、本当に楽しそうだな。あの塔の話を聞いてもまだ笑えるなんて」
「怖いよ。でも……それ以上に知りたいんだ」
ノエルの声はまっすぐだった。
ユウは彼女を見て、胸の奥が熱くなるのを感じた。
かつて自分が抱いた憧れ――
それを今、ノエルも同じように抱いている。
吹雪の切れ間から、遠くに淡い光の柱が見えた。
天を貫くその輝きは、確かに三人を導いている。
「あれが……白き塔」
ユウが小さくつぶやく。
カイは腰の剣に手をかけ、表情を引き締めた。
「本当に行くのか。戻れなくなるかもしれないぞ」
ノエルは拳を握る。
「それでも行きたい」
ユウもまた頷いた。
「届けなくちゃいけないんだ。この手紙を」
三人の視線が交わり、足音が再び雪を踏みしめた。
旅立ちは、ここから本当の意味を持ち始める――。
白き塔へ続く道。
一面の雪原は静かで、風の音だけが響いていた。
「妙だな……」
カイが足を止める。
次の瞬間、雪を割って黒い気配が飛び出した。
仮面をつけた影たち――黒衣の男の手下だ。
「ユウ=ラインハルト」
無機質な声が雪原に響く。
「その手紙を渡してもらおう」
ユウは胸元の手紙を握りしめる。
「渡さない!」
◆
刀が唸り、氷の大地に火花が散る。
カイは素早く剣を振るい、ユウを守る。
「ユウ、下がってろ!」
だが敵は三人。
剣だけでは防ぎきれない。
「……あたしの番だね」
ノエルが一歩前に出る。
小さな手を広げ、息を吸い込む。
「凍てつけ――!」
彼女の周囲に冷気が集まり、足元の雪が瞬時に凍りつく。
敵の一人が足を取られ、動きが鈍った。
「今だ!」
カイが剣を振り抜き、影を弾き飛ばす。
しかし、敵はまだ残っていた。
ユウも剣を抜き、震える手で構える。
「ぼくも……戦う!」
恐怖を押し殺し、一歩踏み込む。
剣先は頼りなくても、想いは確かだった。
ノエルの氷術がもう一人の足を縛り、ユウの一撃が肩を裂く。
カイが残る一人を斬り伏せ、雪煙が静かに舞った。
気配が消え、雪原に静けさが戻る。
ノエルは肩で息をしながら、それでも誇らしげに笑った。
「ね、役に立ったでしょ?」
カイは苦笑を漏らす。
「上出来だ。だが油断するな。あいつらは前哨に過ぎない」
ユウは凍える指で手紙を握りしめた。
「黒衣の影……必ず、また来る」
三人の視線の先に、再び光の柱が瞬いていた。




