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最初の試験

「ったくよ……また延期かよ? 選抜テストってやつ、一日延びてはまた延びて……マジで退屈すぎんだろ。こんなクソみたいな部屋に、もう二週間近くも閉じ込められてるんだぜ」

隣の部屋から聞こえてきたのは、(おい)(だいら)の苛立った声だった。

ミッドナイト隊員の適性を見極めるための“耐性者選抜”——その初期ステップである試験が、再び延期になったという。

「ミッドナイトの隊員になるって、そんなに良いことなのか?」

蓮司(れんじ)が隣室から問い返す。

「じゃあ、お前は部屋でゴロゴロしてる方が楽しいってのか?」

(おい)(だいら)が気のない調子で返す。

その言い草に蓮司は小さくため息をつき、ほんの少し苛立ちを覚えた。

(おい)(だいら)くん……()()も気になります。ミッドナイトの隊員になるって、そんなに素敵なことなんですか?」

ベッドの上で膝を抱えていた美姫が、壁越しに声をかけてくる。

「うーん、自由になれるってことかな」

雄平の声が少し穏やかになる。

「ずっとこんなとこに閉じ込められてたら、そりゃ飽きてくるでしょ?

それに、選抜ってのは自分の能力を測るテストでもあるんだ。

もし()()ちゃんが“超能力バトル系の映画”とか観たことあるなら……まあ、そんな感じ」

「ふん……僕が男だから、優しくしてくれないんだな」

蓮司(れんじ)が皮肉っぽく呟く。

「男とは話したくない主義なんで」

雄平は間髪入れずに切り返す。

「このヤロウ……」

蓮司は歯を食いしばり、壁の方を睨みつけた。

一方の雄平は、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

「ところで……選抜って、どんなふうに進むの? 雄平くん」

美姫がさらに質問する。

「説明するよ、美姫ちゃん」

雄平が言葉を続ける。

「まず、ここに最低一週間以上いる人たちだけが対象になるんだ。そういう人たちは、ある程度“耐性”があると判断される。

それから、専用の選抜施設に連れて行かれて、ミッドナイトの兵士として適性があるかどうかをテストされるんだよ」

「へぇ〜、さっすが雄平くん。なんでも知ってるのね」

蓮司がわざとらしく冷やかしてくる。

「ふふっ、蓮司くんったら」

美姫がくすっと笑ったあと、明るく言葉を続ける。

「でも良かったです。選抜が明日なら……私もちょうど明日でここに来て一週間になるんです。

つまり、蓮司くんたちと一緒に選抜を受けられるんですね!」

「僕も、ちょうど今日で一週間目です」

蓮司が言いながら、壁の向こうをちらりと見やる。

「美姫ちゃんは……体に何か異変とか、ありましたか?」

「うん……ありました」

美姫は小さくうなずいた。

「最初の数日間、熱がすごくて……お医者さんにいっぱい薬をもらったんです。

もうダメかと思いました……」

「えっ!? それでしばらく静かだったのは、熱が出てたからですか!?

全然知らなかった……なんで言ってくれなかったんですか」

「じゃあ、蓮司くんは? 何か変わったことありました?」

「僕?……いや、全然」

蓮司はしばらく考えたあと、首を振った。

「ずっと普通でした。体調も悪くなかったし……

マイケルさんに何度か聞かれたけど、異常はなかったです」

「それなら、私たちは全員“耐性持ち”なんですね。……良かったです」

美姫がほっとしたように微笑む。

「向こう側の彼も……なんとなく、そうみたいですね」

その言葉をきっかけに、蓮司と雄平は同時に反対側の部屋へと視線を向けた。

そこには、体にタトゥーのある青年が、ベッドの上で無表情に小説を読んでいた。

彼はほとんど誰とも話さず、常に周囲から距離を取っているようだった。

「実は……私の隣の部屋に、以前は優しいおばさんがいたんです」

美姫の声が少し沈む。

「三日間だけ、一緒に話せました。

……もし今日まで一緒にいられたら、きっと良かったのに」

しばらく沈黙したあと、美姫はそのタトゥーの青年に声をかけた。

「ねえ、そちらの方……大丈夫ですか?

ずっと黙ってて、気になってました」

青年は静かに本を閉じると、冷ややかな目で美姫を見た。

「まずは、自分の心配をしろよ。人のこと気にする前にな」

声は低く冷たく、まるで氷のようだった。

「ミッドナイトの選抜が、ペーパーテストみたいなもんだとでも思ってんのか?

だったら……その考え、捨てた方がいい」

そう言い捨ててから、彼は本を枕の下にしまい、背中を向けて寝てしまった。

「美姫ちゃん、あの人とは話さない方がいいよ。

タトゥー入ってるような奴って、だいたい危ないって決まってるからさ」

雄平がぽつりと呟く。

蓮司は無言で自室の扉の前まで歩き、そっと掲げられたネームプレートを見下ろした。

村瀬(むらせ) 達也(たつや)

彼は小さく呟く。

「……達也(たつや)…か」

................................................................................................................................................

そして――選抜の日がやって来た。

防護服を着た職員が静かに部屋のドアを開け、蓮司、美姫、雄平、そして蓮司の向かいの部屋にいた無口な青年――**村瀬むらせ 達也たつや**の名を順に呼び、部屋から連れ出していった。

彼らだけではない。

同じように“免疫を持つ者”と判断された人々が、整然としたグループでまとめられ、清潔感のある広いホールへと案内されていく。

そこは、まるで高校の体育館を思わせるような空間だった。

外の様子は一切見えず、窓はない。上には中二階のような構造があり、視線の上にはいくつもの扉が並んでいた。

百人を超える感染者たちがホールに集められ、徐々にざわめきが広がっていく。

それぞれが、これから何が起こるのかと不安と疑問を抱えながら、周囲に目を配っていた。

「ここって……どこなんだろう。私たち、これからどうされるのかな……」

美姫が落ち着かない様子で蓮司にささやきかける。

視線をあちこちに巡らせながら、表情はこわばっていた。

「僕にも分かりません……でも、なんだか嫌な予感がするんです」

蓮司も声を潜めて答え、隣に立っている雄平へと視線を向けた。

「ねぇ、雄平くん……何か知ってる?」

「知るかよ! 俺だってお前らと一緒に来たばかりなんだからな!」

雄平がやや語気を強めて返す。

その瞬間、ホールに響いていたざわめきが急に収まりはじめる。

キィ――ン……!

耳をつんざくようなマイクのハウリング音が突如鳴り響き、

蓮司も、美姫も、雄平も、思わず耳を塞いだ。まわりの誰もが同じようにしていた。

その直後、天井の四方に設置されたスピーカーから、女性の声が流れ出す。

「免疫を持つ感染者の皆さま――ようこそ、“選抜の夜”へ」

冷静かつ明瞭な声だった。

その声色には、静けさの奥に何か研ぎ澄まされたものが宿っていた。

「私は、基礎看護学の教官を務めております。

ここまでたどり着いた皆さまに心よりお祝いを申し上げます。

そして――これより始まる、“ミッドナイト部隊 新兵選抜儀式”へようこそ」

その声とともに、前方の壇上に黒のミリタリースーツを着た女性が現れた。

引き締まった体躯と豊かな胸元、腰まで流れる黒髪を高く結い上げ、歩き方には自信と色気が漂っている。

あまりの堂々とした姿に、雄平は思わず目を奪われてしまった。

だが、現れたのは彼女一人ではなかった。

彼女の背後には、もう五人の男女が現れ、それぞれが“ミッドナイトの兵士”の装いで壇上へと続々と上がってくる。

彼らは皆、色とりどりのライトが仕込まれた仮面をかぶっていた。

その色は――赤、緑、黄色、オレンジ、ピンク、そして青。

「お待たせしてしまって申し訳ありません」

壇上の女性が、再び丁寧ながらも芯のある声で語りかけた。

「これより、選抜儀式の第一段階についてご説明いたします」

彼女は後ろを振り向き、手をかざす。

「こちらに立っているのは、ミッドナイト部隊の六つの班を統括する班長たちです。

この選抜においては、彼らも私と共に審査員を務め、皆さんがどの班に適しているかを判断します」

蓮司の目に映ったのは、それぞれの班長の左胸に光る――異なる“紋章”だった。

「この紋章の色は、それぞれの班を象徴する色です」

女性は続ける。

「“(へび)”班は緑、

(うし)”班は黄色、

獅子(しし)”班はオレンジ、

(わし)”班は赤、

(おおかみ)”班はピンク、

そして最後、“(くじら)”班は青です」

説明が終わると同時に、六人の班長たちは前へ一歩進み出て、壇下に集まった候補者たちに向かって丁寧に一礼した。

「さて、皆さんの中には――もう気になる班がある方もいらっしゃるのでは?」

女性が微笑みながら問いかける。

その笑みには、どこか意地悪そうな雰囲気が漂っていた。

「でも……残念ながら、最終的に決めるのは“あなた”ではなく、“彼ら”です」

彼女の目線がゆっくりと群衆を見下ろす。

「すべては、あなた自身の能力次第。そして何より――

“誰があなたを選ぶか”、それが鍵となります」

「もちろん! 獅子だよ!」

雄平が即座に叫んだ。自信満々の笑顔を浮かべながら。

「俺みたいなタイプは、“獅子班”しかないでしょ!

見てみろよ、あのオレンジの光――威厳ってやつが溢れてるだろ!」

蓮司は呆れたように彼を見ていた。

「よくそんな自信あるな……っていうか、なんであんなに詳しいんだよ」

「えっ、お前、ミッドナイトのこと何にも調べてないのか?」

雄平が目を丸くして振り返る。

「この部隊は、黒物感染者と戦う最前線なんだぞ」

「いや……だって、普通の人間には関係ない話だと思ってたし」

蓮司は率直に言った。

「だから興味も持たなかったし、どんな条件で入れるのかも知らない。

“ミッドナイト”って名前は確かにカッコいいけど……なんか全部が謎すぎてさ」

「お前って、本当に古臭いよな」

雄平が呆れたように口をとがらせる。

「もちろん、どの班にもそれぞれの強みがあるけどさ。

でも、“討伐実績”ってことで言うなら――獅子班がダントツだよ」

それまで黙っていた美姫が首をかしげて尋ねる。

「他の班はどうなんですか?」

「その次は、狼、鷲、蛇、牛……で、最後が鯨ってとこかな」

雄平はまるで事前に決めてあったかのように、淡々と並べていく。

「それって、強さ順ってこと?」

蓮司が問い返す。

「じゃあ……鯨班って、最弱ってことか?」

「だから言っただろ? 全部の班がそれぞれ強いって」

雄平は自信ありげに続ける。

「でもな……鯨班ってのは、他とはちょっと違うんだよ。

何しろ、一番“謎に包まれた班”だからな。

あいつらの仕事はたいてい“裏側”で行われてて、表舞台に出てくることはほとんどない」

「謎……?」

美姫が小首をかしげる。

「そう」

雄平はうなずく。

「中には、『鯨班の連中はぶっ飛んでる』とか、『世の中に逆らってる』とか言う人もいるくらいでさ。

あるいは……なんていうか、“伏線”みたいな力を持ってるとか……?

地味だけど効いてくる、ってやつ?」

彼は楽しそうに喉の奥で笑った。

「へぇ……そういうことだったんですね」

美姫が納得したように小さくうなずく。

そのとき、壇上の女性の声が再び場内に響き渡った。

「続きまして、“第一段階の選抜内容”についてご説明いたします」

会場内の視線が、再び壇上へと集中する。

「皆さまはすでにご存じかと思いますが――

現在、皆さまの体内には“黒物ウイルス”が存在しています」

彼女の声は静かで淡々としていたが、どこか凍るような冷たさがあった。

「ですが、皆さまは“天の選別”を受け、生き延びた者たちです。

つまり、“免疫を得た者”――ということになります」

女性は一瞬だけ間を置き、さらに言葉を続けた。

その表情は今や真剣そのものだった。

「とはいえ……たった一週間の隔離では、皆さまに“真の免疫”が備わっているかどうか、判別するには不十分です。

そのため、追加の“テスト”を実施いたします」

その瞬間、観客席の下からざわめきが一気に広がった。

「テストだって!? まだ何か試すってのかよ!」

「ふざけんな! もう元に戻ったんだぞ!」

「助かったはずだろ!? 何でまた選抜だよ!」

怒号が次々に上がり、一部の者は怯えたように後ずさりし始める。

だが、壇上の女性はその騒ぎにも動じることなく、凛とした姿勢を崩さない。

そして――氷のような微笑を浮かべながら、静かに手を挙げた。

「皆さまに残された選択肢は、二つしかありません」

その瞬間、壇上に立っていた職員たちが一斉に銃を構え、感染者たちに銃口を向けた。

「もし選抜試験を受ける意思がないのであれば――今すぐ“手続きを終了”することも可能です」

女性の声は変わらず穏やかだったが、

その言葉は、場内の空気を深く鋭く切り裂いた。

「お忘れなく……“黒物ウイルス”は、未だに完全な治療法が確立されておりません。

血液、体液、あるいは軽い擦り傷からでも感染します。

そして、感染拡大を防ぐ最も確実な手段――それは、“リスクのある者を排除すること”です」

その最後の一言が、場内のすべてを凍りつかせた。

反論の声も、抗議の声も消え失せる。

残ったのは、爆発寸前の沈黙だけだった。

「では、説明を続けさせていただきますね」

司会の女性がそう言いながら、ホール全体に目を走らせた。

「皆さまにまず知っておいていただきたいことがあります。

それは――“本当に免疫を持つ身体”とは、普通の人間とは明らかに異なるということです」

「異なる……?」

誰かが小さく呟く。

「はい」

女性は頷きながら続けた。

「その一つが、“自己再生能力”です。

重要な部位でなければ、たとえ負傷しても数分で回復する――

そんな身体に、すでに皆さまはなっている可能性があります」

彼女は口元に微笑みを浮かべた。

「……まるで“ヴァンパイア”みたいですよね?」

ウィンクをしながら、彼女は軽く問いかける。

「皆さん、ヴァンパイアって聞いたことありますよね?」

その瞬間、ホールの下からまたざわめきが沸き上がった。

「ヴァンパイアって……俺たちがそんな存在になったってことか?」

「冗談だろ?」

「いやいや、関係あるわけないって……!」

ざわざわとした声が一気に広がり、再び場内は混乱し始める。

「はいはい、皆さま……ちょっとだけ静かにしていただけますか」

女性が再び手を挙げ、微笑を崩さぬまま言う。

「ちゃんと話を聞いてくれないと、こちらも困りますし……

なにより――

このあとお話しする“大切なこと”を聞き逃してしまうかもしれませんよ?」

その言葉に、ホールのざわめきは次第におさまりはじめた。

「皆さまの身体が、確かに“傷を自己修復できる”としても……」

女性が再び口を開いた。

だが、先ほどまでの柔らかさとは違う。

声は冷たく鋭く、空気を凍りつかせるようだった。

「――その力は、“意識(いしき)”と“集中力”があってこそ発揮されるものです」

彼女の視線が、ゆっくりと選抜候補者たちをなぞる。

「傷を癒すには、“意識”と“集中力”が不可欠です。

もし皆さまが、恐怖や混乱で正気を失った場合――

その瞬間に回復は止まり、

さらに恐ろしいことが起こります」

その声は冷静そのものだったが、

語られた内容は、怒鳴り声よりも遥かに脳に響いた。

「……第四段階に“変異”する可能性があるのです。

しかも、ほんの数秒で」

「だ、第四段階……?」

「でも俺、怪我なんかしてないぞ……?」

観客席のあちこちから、ざわめきと疑問の声があがる。

その不安はあっという間に連鎖反応を起こし、場内を動揺が包み込んだ。

「どういう意味だよ、それ!」

「俺たちに何をさせたいんだ!?」

「意味が分からない!ふざけるなよ!」

恐怖が空気を支配しはじめたその時、

司会の女性は相変わらず落ち着いた笑みを浮かべて言った。

「ご安心ください……

皆さまには、すぐに“ご自分の傷”を目で確認していただけますから」

――ギィイイイイン……

その瞬間、会場の天井から金属音が響き渡る。

巨大な鉄格子が天井から降下しはじめ、

ホールのすべての出入口を次々と塞いでいく。

鉄と床がぶつかる音が、不吉に鳴り響いた。

「何だよ、これ……!?」

「閉じ込めるつもりか!?やめろ!!」

悲鳴が一気に沸き上がる。

人々は出口へ殺到するが、どの扉も分厚い鉄格子で完全に封鎖されている。

逃げ場は、もうどこにもない。

――そして、それだけでは終わらなかった。

二階のギャラリー席――つまりホールを見下ろす中二階部分に、

防護服を着た十数名の職員が一斉に姿を現した。

彼らの手にはライフルが握られており、

迷いもなく銃口を群衆へと向けていた。

「撃たれるぞ――!!逃げろッ!」

誰かの叫びを皮切りに、

パニックは一気に頂点へと達した。

叫ぶ者、押し合う者、転倒する者……

誰もが出口のない空間でもがき続ける。

例えそれが無駄だと分かっていても。

「なんだよ、これ……こんなの……あり得ないだろ!」

雄平おいだいらは全身汗まみれで震えていた。

目は大きく見開かれ、現実を受け入れきれていない様子だ。

蓮司れんじもまた、心臓の鼓動が不気味なほど早くなっていくのを感じていた。

隣の美姫みきは、両手を強く握りしめ、爪が手のひらに食い込むほどだった。

それでも、何も言葉にできなかった。

――この場所にいる誰一人として、

“本当の選抜”がこれからどう始まるのかを知る者はいなかったのだから。

パンッ!

銃声が響いた。

感染者のひとりが撃たれ、魂の抜けた人形のように崩れ落ちた。

パンッ! パンッ! パンッ! パンッ!

容赦のない銃撃が続く。

一瞬で広間は処刑場と化した。

鮮血が飛び散り、白い患者服が真っ赤に染まっていく。

倒れ伏す人々の姿は、まるで生きた悪夢の一幕だった。

「逃げろっ!」

雄平おいだいらが叫んだ。だが、動く間もなく——

パンッ!

一発の弾丸が彼の脚を撃ち抜いた。

「うあああっ! 俺、撃たれたあっ!!」

雄平はその場に崩れ落ち、太ももから血が勢いよく噴き出した。

蓮司れんじは助けに向かおうと身をかがめた——その瞬間。

パンッ!

近くにいた美姫みきが肩を撃たれ、

その身体が大きな音を立てて床に倒れ込んだ。

「美姫っ!!」

蓮司が叫ぶ。目を見開き、極限の恐怖が全身を貫いた。

だが動く間もなく——

パンッ!

もう一発。

それは、世界が彼に放つ最後の一撃のように響いた。

衝撃が蓮司の体を襲い、彼は大きく目を見開いたまま、

床へと倒れ込んだ——。



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