黒い箱
「ねえねえ、見て! 職員さんが結果の箱を持ってきたよ!」
美姫の声が、真っ白なベッドの上から明るく響いた。
彼女はまだリラックスした姿勢で座っていたが、その瞳は興味津々だった。
防護服を着た職員たちが、それぞれの隔離室の前に黒く光る箱を静かに置いていく。
同時に、隔離用の自動ドアも解除され、中から受験者たちが自ら箱を受け取りに出られるようになった。
箱の正面には、それぞれの名前がはっきりと記されている。
「見に行こうぜ! 俺たち、どの部隊に入るんだろうな?」
雄平は勢いよく立ち上がり、真っ先に扉を開けて外に飛び出した。
そのあとを追うように、蓮司と美姫も一人ずつ部屋を出ていく。
雄平は自分の箱を抱えてベッドに戻ると、
まるでお正月のプレゼントでももらったかのように、ギュッと胸に抱きしめた。
「さてさて、俺はどの部隊に配属されるかな〜」
彼は少し緊張した指先で、ゆっくりと黒い箱の蓋を開ける。
中には、一枚の紙と、丁寧に折りたたまれた濃い色の制服。
そしてその胸元には、黄色く光る“雄牛”のバッジが取り付けられていた。
「え〜っ……雄牛部隊かよ……」
雄平は肩を落とし、明らかにがっかりした声を漏らした。
「絶対何かの間違いだって。俺はライオン部隊向きだろ? なあ、マジで……」
「そんなに落ち込まなくてもいいじゃない」
美姫がやさしく声をかける。
「雄平くんは強いし、どこの部隊に行っても活躍できるって、私はそう思うよ」
それでも雄平はむすっとした表情のまま、
「じゃあ、美姫ちゃんはどうだった? どこの部隊になったんだ? 同じだったらいいのにな」
その問いに、美姫の笑顔が少しずつ曇っていく。
「私も……一緒にいたかったよ」
彼女は小さくつぶやくように言った。
「でも……どうやら私は“蛇部隊”らしいの。……はあ……」
どうやら、蓮司の友人たちはみんなバラバラの部隊に振り分けられてしまったようだ。
誰一人として、同じチームにはなれなかった。
蓮司は、なんとなく察していた。
――自分の結果も、きっと同じだろうと。
蓮司は、自分の箱をそっと持ち上げた。
黒く光る箱の正面には、「藤原 蓮司」とはっきりと名前が記されている。
ゆっくりと、慎重に蓋を開ける。
中には、手紙、もう一着の制服、そして濃い青のクジラのバッジが入っていた。
「どうやら……俺は“クジラ部隊”らしいです」
蓮司はいつもよりも少し静かな声で呟いた。
「そっか……」
美姫はがっくりと肩を落としながら、大きくため息をつく。
「ねえ、蓮司くんの箱にも、変な時計が入ってた? 私のには入ってたんだけど…」
時計?
蓮司は慌てて箱の底を探ってみた。
すると、確かにそこには、奇妙なデザインのデジタル風時計が入っていた。
側面には、五つのリングが取り付けられており、
それぞれが黒いチェーンで繋がれ、さらに透明なゴム素材で覆われている。
まるで、個別に設計された特殊な装備のようだった。
「……入ってました。俺も二つ、もらってました」
「私もだよ、二つ入ってた」
美姫も自分の時計を見せながら、蓮司の方を覗き込んだ。
そして、彼女はすぐに違いに気づいた。
「でも、私のとはちょっと違うね。リングは付いてないし……代わりに、バンド部分に小さな箱がくっついてるの。
二つともそうだったし、その箱には何かを噴射するための穴みたいなのもあるんだよ」
「えええっ!? なんで俺にはそんなの入ってないんだよ!」
雄平が大声で叫び、ぷくっと頬を膨らませる。
「これ、明らかに不公平じゃんかー!」
蓮司は再び自分の時計を見つめ、それから美姫の方に目を移す。
数秒ほど黙ってから、真剣な表情で口を開いた。
「俺、思うんだけど……この時計って、たぶん俺たちの“能力”と関係あるんじゃないかな。雄平くん」
彼は顔を上げ、雄平と目を合わせる。
「美姫ちゃんも時計は持ってるけど、俺のとは全然形が違う。
きっと、俺たちそれぞれの“力”に合わせてカスタマイズされてるんだと思う」
「なるほど、納得だわ」
美姫がうなずく。
「だって、雄平くんの黒物能力は“岩”だもんね。
あれだけ頑丈なら、私たちみたいに補助装置を使わなくても力を制御できるってことでしょ」
「雄平くんってさ、ほんとに運がいいと思うよ」
蓮司はそう言いながら、静かにため息をついた。
「能力を使うたびに、俺たちみたいに体を傷つける必要がないんだからさ。
……多分だけど、この時計って、血とか何かを通して力を解放するための装置なんじゃないかな」
「そういえば――」
美姫がふと思い出したように声を上げた。
「二人とも、さっきの箱に手紙も入ってたでしょ? もう読んだ?」
「まだだけど……今ちょうど読もうとしてたところです」
蓮司はそう答えると、手にした紙をゆっくりと広げていった。
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選抜通過者 各位へ
このたびは「クジラ部隊」への配属、誠におめでとうございます。
藤原 蓮司 様を新たなメンバーとしてお迎えできることを、心より光栄に存じます。
部隊の開幕式は、「クジラ部隊本部 大講堂」にて開催されます。
詳細な道順は、本書裏面の地図をご参照ください。
今回の選抜を経て、ミッドナイト兵団への第一歩を踏み出した皆様には、
この場で「コクメ(黒芽)一年目」としての身分が正式に与えられます。
当日は、部隊指定の制服を着用のうえ、
クジラ部隊の寮へ入寮する準備(必要な私物の持参等)をお済ませください。
今後、各々の適性が確認され次第、
専門部隊・配属先への振り分けが行われます。
何卒、よろしくお願い申し上げます。
鷲尾 黒夜
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「なんかさ……入学初日のオリエンテーションみたいな気分だよね」
蓮司は苦笑しながら、手紙をそっとバッグにしまった。
「……本当に、そんな感じだったらいいんだけど」
「怖いんだね」
美姫が小さな声で言った。
蓮司の表情を見て、そう思ったのだろう。
「私も怖いよ。でも……どうしようもないじゃん」
「ほらほら、そんなに重く考えんなって」
雄平が気軽な調子で声をかけてきた。
「言ってたのって『説明会』でしょ? そんなビビることないって。
それよりも、やっとこの隔離部屋から出られるんだぞ?
外を歩けるだけでもマシじゃん、こんな狭い部屋をグルグル回るよりさ」
三人はそれぞれ手紙を読み終え、
ミッドナイト機関から支給されたリュックに自分の荷物を詰め始めた。
制服、生活用品、個人の持ち物——
どれも静かに、無言で詰められていく。
隔離された空間は、徐々に静寂へと包まれていった。
蓮司の胸には、わずかな高揚とともに、言葉にできない“何か”が引っかかっていた。
荷物を詰めている手が、ふと止まる。
この二人と、もうすぐ離れ離れになる——
そのことに、少しだけ寂しさを感じていた。
……でも、希望は捨てていない。
部隊に所属してからでも、またどこかで会えるかもしれない。
そう信じていた。
蓮司は白いシャツに袖を通し、
その上に、光沢のある黒のジャケットを羽織った。
肩から胸元には青い反射ラインが走り、
背中には、青い縁取りの黒いクジラの円形エンブレムがくっきりと浮かんでいる。
首元にはフード。
左胸には、クジラの紋章を象った小さなバッジが、公式に取り付けられていた。
濃い色のスリムパンツに、黒いコンバットブーツ。
そしてリュックを背負い、蓮司は静かに部屋を出た。
手紙の裏面に記された地図を頼りに、
彼はクジラ部隊本部の大講堂へと向かう。
やがて、濃いグレーで塗られた高い建物が視界に入った。
蓮司は立ち止まり、ゆっくりと顔を上げる。
「……ここが、そうか」
蓮司はグレーの建物の前で立ち止まった。
建物の正面には大きなクジラのシンボルが掲げられており、「ここがクジラ隊だよ!」とでも言いたげな主張をしていた。
彼が一歩足を踏み出すと、センサー付きの自動ドアが静かに開いた。
ロビーに入ると、黒を基調にしたシンプルで落ち着いた空間が広がっていた。壁の一面には光を反射するクジラのロゴが埋め込まれ、端には小さな人工の滝が音を立てながら流れていた。その雰囲気はどこか病院のように清潔で、静謐な空気が漂っていた。
「……迷わないように、ってことなのかな」
蓮司は周囲を見回しながら小さくつぶやいた。
「クジラだらけじゃん……」
そう思いながらきょろきょろしていると、ふと視線の先に一人の男子が目に入った。
年は蓮司と同じくらい。建物の中をウロウロと歩き回っているようだった。黒縁メガネに、蓮司と同じような長袖の制服を着ている。どう見ても……迷子だ。
「やばっ、今どの階にいるんだっけ……?」
彼は小声でぼやきながらメガネを指で押し上げた。
その様子に蓮司は苦笑して、声をかける。
「えっと……こんにちは。もしかして、四階の会議室を探してるんですか?」
「えっ!?」
男の子は驚いたように振り返ったが、すぐに落ち着きを取り戻した。
「こんにちは! あ、はい、そうなんです! その通りでして!」
「僕もそこに行くところなんですけど……なんでか誰ともすれ違わないんですよね」
蓮司が周囲を見渡しながらそう言うと、メガネの彼もうなずいた。
「わかります……僕もそう思ってました」
「でも、誰とも会わないってことは――単に僕たちが早すぎたのかもしれませんよ」
蓮司がふっと笑って提案する。
「よかったら、一緒に上に行きませんか? そのほうが迷わずに済みますし」
「えっ、あ……はいっ! ぜひお願いします!」
彼は少し緊張しながらも、勢いよくうなずいた。
蓮司は手を差し出しながら、にっこりと笑った。
「僕は藤原蓮司です。よろしくお願いしますね」
「石野瀬真人です! あ、真人って呼んでください!」
会話を交わすうちに、蓮司はなんとなく悟った。
……この石野瀬くん、多分かなりの方向音痴だ。
きっと朝からこの建物の中を、ぐるぐる回ってたんだろうな――無意識に。
クジラ隊の会議室は、本館の裏手にある建物に設けられていた。
座席は映画館や大学の講義室のように、段階的に高くなる構造で配置されており、前方には低めのステージと、中央にマイク付きのポーディウムが設置されていた。背景にはクジラの紋章が描かれたカーテンがかかっている。
広さこそ大きくはないが、どこか「公式感」が漂い、少し息苦しい雰囲気があった。壁は白く塗られており、特別な装飾もなく、まるで普通の教室のようだった。
蓮司は真人と一緒に室内へ入り、他の候補生たち――通称「コクメ」たちが、次々に着席していく様子を見つめた。
全部で……たった十三人だけ。
女子は四人、男子は九人。
(こんなに少ないのか……?)
蓮司はその疑問を胸の内に留めたまま、静かに椅子へと腰掛けた。
ほどなくして、一人の中年男性がステージの前に現れた。
彼は黒いロングコートを羽織っており、背中には大きな青いクジラの刺繍が入っていた。少し無精髭が伸びているが、その瞳はどこか思慮深く、落ち着いた雰囲気を纏っている。
彼はゆっくりとポーディウムへ歩み寄り、マイクの前で足を止めた。
「第二選抜を通過した皆さん、ようこそ。」
その声は落ち着いていたが、威厳を感じさせる響きがあった。
「クジラ隊へようこそ。私はこの部隊の隊長、鷲尾黒夜です。」
わずかにざわめきが会場を走る。
その直後、一人の男性が手を挙げた。
がっしりとした体格をした中年の男性で、どう見ても「訓練生」とは思えない風格だった。
「質問よろしいでしょうか?」
声は低く重みがあったが、礼儀は保たれていた。
「なぜ、我々の隊にはこれだけしか人がいないんですか?
一次選抜のときは、もっと多くの人がいたはずです。
一部隊って、たった十三人なんですか?」
黒夜は苦笑いを浮かべ、後頭部をかく。
「……まぁ、正直に言いましょうか。
『第二選抜では死者が出るかもしれない』って噂、
あれは……ただのハッタリだったんですよ。」
彼の言葉に、会場全体から「ええっ!?」という驚きの声が上がる。
「だってね? 自分の“深層の能力”を即座に引き出せる人間なんて、そう多くはいないでしょう?」
黒夜は肩をすくめ、笑みを浮かべる。
「今回、選ばれた君たちってのは、そういった特別な才能を持ってる人たちなんですよ。」
「我々は毎日のように“クロモノ感染者”の対応に追われています。
発生率こそ高くはないですが、国家規模の問題を引き起こしかねない存在です。
だからこそ、本当に“力を解放できた者”が必要なんです。
――そして、それが君たちです。」
再び、先ほどの男性が手を挙げた。
「じゃあ……選ばれなかった人たちは、どうなるんですか?」
黒夜は一度うなずき、今度は真剣な口調で答えた。
「この選抜に通らなかった者たちは、“コクメ”にはなれません。
しかし、彼らは一般の討伐部隊の兵士として配属されることになります。
現場要員として働く者もいれば、サポート部門に回される者もいるでしょう。」
「彼らの力はミッドナイト部隊に届かなかったかもしれません。
ですが、“治癒能力”や“耐久力”といった資質は、決して無駄ではありません。」
黒夜は一度言葉を切ってから、ゆっくりと続けた。
「基本的に、毎月新たなコクメが誕生します。
ですが今回――十三名というのは、“過去最多”なんですよ。」
「君たちにはこれから、個別の識別コードとクジラ隊専用のカリキュラムが与えられます。
学習内容は任務や訓練項目に応じて、ローテーションで変わっていく予定です。
そして、“一年目のカリキュラム”をすべて終えた時点で、
自動的に『コクメ二年生』へと昇格します。」
そのとき――
蓮司が静かに手を挙げた。
眉間にわずかなシワを寄せ、不安げな表情で口を開く。
「すみません……ちょっとよく分からなかったんですが、
もう一度、詳しく説明していただけますか?」
黒夜は面倒くさがる素振りを見せることなく、穏やかにうなずいた。
「了解です。じゃあ、もう少し分かりやすく話しましょう。」
彼はゆっくりと会場を見渡しながら、言葉を続けた。
「君たちは、“六ヶ月目の選抜”で選ばれましたね?
つまり、今から始まるカリキュラムは『第六期』ということになります。
そして、ここから十二ヶ月間――
つまり来年の“五月”まで訓練を続けることで、
君たちは一年分の全カリキュラムを終えることになるんです。」
部屋のあちこちから、控えめなざわめきが起こる。
蓮司はゆっくりと頷きながら、話をかみ締めるように聞いていた。
「一年間のカリキュラムをすべて修了した後、
君たちは“コクメ二年生”として正式に認定されます。」
黒夜の声が、一層引き締まったものになる。
「その後、皆さんは“本所属チーム”へ正式に配属されることになります。」
会場に静かな緊張感が走る中、彼は続けた。
「ただし……覚えておいてください。
君たちは“自力で強くなること”が求められています。
いずれはチームの“歯車”として機能しなければならない。
単なる能力者ではなく、“チームで生き残れる”存在にならなければならないんです。」
どこか張り詰めた空気が広がっていく。
黒夜はそれを感じながらも、淡々と話を続ける。
「毎週、君たちは“チーム訓練”に参加してもらいます。
一週間に二日――
共に戦う仲間と連携し、生き延びる術を学んでもらいます。」
ざわっ——
会場が再びざわついた。
誰かが隣の席の顔を覗いたり、未来の“チーム”を想像しているのか、ひそひそ声があちこちから聞こえてくる。
黒夜は微かに微笑みながら、言葉を続けた。
「そう、その“チーム”は全部で五つの主要部隊から一人ずつ配属されます。
狼、獅子、蛇、雄牛、鷲――
各部隊から一人ずつ、そして君たちの中から一人。
つまり、六人一組のチームとなるわけです。」
その説明が終わる前に、前方の席から小さな手がすっと上がった。
腰まであるポニーテールの少女。整った顔立ちに、真剣な眼差し。
「えっと……チーム訓練以外の授業内容はどうなるんですか?」
会場中の視線が、彼女へと集まる。
黒夜は落ち着いた声でうなずき、答えた。
「その他の授業内容については、これから配布する資料にすべて記載されています。
君たちは順次、それを受け取ることになりますので、安心してください。」
彼は会場をゆっくりと見回した。
そして、一呼吸おいてから、静かに言った。
「ただ、その前に――
ミッドナイト部隊の一員として、少しだけ僕から話をさせてください。」
静寂。
黒夜は深く息を吸い込んだ――
「今この瞬間から——君たちは、“この世界の誰にも知られないヒーロー”だ」
「誰かに拍手されることも、きらめく剣を掲げることもない。
だが君たちは、この世界の破滅を食い止める“最後の壁”なんだ」
会場が静まり返る。
黒夜は、一つ一つの言葉を噛みしめるように話を続けた。
「……分かってるよ。ここが、自分で選んだ場所じゃないってこと。
来たくて来た人もいるだろうけど、
中には“絶対に来たくなかった”って思ってる人だっているはずだ」
「でも、これが今の世界なんだ。
僕たちには、あまりにも選択肢が少なすぎる」
「だから……ごめん」
その一言と同時に——
鷲尾黒夜は、目の前の壇上で、静かにひざまずいた。
そして、そのまま頭を深く下げて土下座する。
役職も権威も脱ぎ捨てたその姿に、
会場は一瞬、凍りついた。
椅子の音がガタガタと響き、
誰かが口を開けたまま固まり、
空気が重く揺れる。
誰もが、“この最前線の隊長”がここまで頭を下げるなんて、
思ってもいなかったのだ。
「た、立ってください……黒夜さん……」
中段の席から、マサトの震える声が響く。
「僕たち……分かってます。
あなたが……一番、努力してきたってこと……」
それでも、黒夜は頭を上げようとしない。
「それでも……それでも、僕は謝りたいんだ」
「こんな状況に、君たちを巻き込んでしまって……本当に、ごめん……」
蓮司は静かに、自分の席からその光景を見つめていた。
膝をつく男の背中を。
まわりのコクメたちの表情を。
迷いや、不安や、寂しさの混ざったその瞳を——
自分でも分からなかった。
いま、自分が何を思っているのか。
最初にここへ来たとき、
それは“この世界で最悪の不条理”だと思った。
でも、今なら分かる。
ここにいる全員が、同じように“選ばれた”存在で——
それぞれに、背負うものがあるってこと。
蓮司の中で、怒りが静かに消えていく。
代わりに、胸の奥に芽生えたのは……何だったのだろう?
同情?
共感?
それともただ、
「……もう、大丈夫ですよ」って言いたくなっただけなのかもしれない。