3話…天然もの?
午前の授業も終わり。お昼休憩。
私は明日香と机を並べ。お弁当を食べていた。
あれからというもの。
休憩時間の度、不二咲先生は女子からも男子からも囲まれていた。
おかげで、【詐欺師】かどうかを探ることが出来なかった。
勿論、探ると言っても、私の直感を信じてのものだ。これが漫画やアニメなら、何やら秘密道具みたいな物で探るだろう。だが、これは現実だ。そんな秘密道具はない。
なので、私の経験上の直感が頼りなのだ。
まあ、これも修行を積んでいるおかげと、それなりに場数を踏んでいるので、その直感はほぼ絶対と言える。
だけど、この直感には弱点があり、対象者が人混みの中にいると、途端に使い物にならなくなる。
つまり…休憩時間に複数の女子と男子に囲まれていた、対象者である不二咲 瀬斗先生が【詐欺師】かどうか、見抜けなかったのだ。
もし【詐欺師】ならば、早いとこ手を打たなければ、被害者が出るだろう。
だと言うのに………
周りはそんな話、誰も信じない。故に、その人集りの中立ち向かう理由がなく。
仮に素直に話したとして、一体何人の人が信じてくれるだろう。…誰も信じないな。
子供扱いされるか、厨二病扱いされるかのどちらかだ。
美桜「……はあ。」
明日香「なになに、どしたの。そんな深いため息ついて。」
美桜「あ、いや…」
明日香「それにしても、不二咲先生凄い人気だね。」
美桜「まあ、あれだけ流行りに乗ったようなイケメンなら、流行りの代表格と言える高校生が、放っておくわけないよね。
…って、明日香は興味ないの?」
明日香「あー、うん。イケメンっていうからさ、私的に男らしいイケメンを想像してたんだよ。
でも実物は、なん言うか…中性的?な感じでさ。そういうのはちょっと、対象外なんだよね。」
それを聞いて、私は心の底からほっとした。
成程。明日香の好みはそういう男なのか。そりゃ確かに同級生で付き合う対象がいないわけだ。
まあ男らしい同級生と考えれば、野球部やサッカー部、陸上部の奴らがあがるが、精神的な面も男らしさを求めているのだろう。だから、同級生ともなると精神面が幼く、恋愛対象外なのだ。
そう私は解釈した。
明日香「で、あれだけ男に関心のない美桜が、不二咲先生を目で追ってるってことは……やっぱ、可能性ありそう?」
と、明日香は声を潜めて聞いてきた。
「可能性ありそう?」とだけ聞いてきたのは、誰に聞かれるかわからないからだ。【詐欺師】のことを。
もし聞かれ、揶揄われるだけならまだしも、対象者にその話をされてしまえば………。その先は想像の通りだ。
美桜「……まだ、何とも言えないけど。でも、これまでの経験上で言えば、可能性ありだね。」
明日香「だよねー。私も、怪しいと思うもん。」
唯我「何が怪しいって?」
と、私達のそんな会話に割って入ってきたのは、サッカー部の柊木 唯我だった。
彼はサッカー部の絶対的エースで、1年の頃からレギュラー入りしており、期待の的である。
それに加え、イケメンでもあるから、同学年の女子達が黙っている筈もなく。ファンクラブなるものが存在する。
そんな彼は、いちごミルクの紙パックを吸っていた。そう、見た目に似合わず、甘党なのだ。
明日香「柊木くんには関係ないよ!私達だけの、女子だけの内緒話!」
唯我「何だよそれ。
にしてもさー、皆あの教育委実習生の虜になってやがる。」
明日香「そうだね…」
唯我「気に食わねぇってわけじゃねぇけど、なぁんか嫌な感じすんだよなぁ。」
美桜「!どういうこと?」
唯我「ん?いや、まあなんつーかさ。なんとなく嫌な感じの奴って感じがすんだよ。」
美桜「それ、もう少し具体的に!」
と、私はつい柊木 唯我に食い掛るように、顔を近づけてしまった。
それに柊木 唯我は、顔を赤らめさせたが、今はそんなの関係ない。
唯我「その、さっきの休憩時間によ、同じサッカー部の奴と不二咲先生に話しかけに行ったんだよ。
そしたらまあ…ちゃんと話してはくれたけど、なんつーか…その、瞳の奥っつったらいいのか?俺との話だけ、その瞳の奥が怖くなった感じがしてよ…」
……確証はない。だが、その証言は、結構重要だ。
美桜「成程…。ありがとう。」
私は礼を言うと、そそくさとお弁当を片付けた。
唯我「もう食わねーの?」
美桜「残りは帰り道にいる猫にあげるの。
兎に角、私は行く場所が出来たから。」
唯我「あっ、おい!」
それでも尚、私を引き留めようとする柊木 唯我。
美桜「……何?」
唯我「その……あいつに、不二咲先生に会いに行くなら、気をつけろよ。」
美桜「うん。」
それだけ言って、私は不二咲先生を探しに出た。
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不二咲先生は、教員室にいた。
そこでもまた、女性教師に囲まれていた。
「不二咲くんは、どうして教師になろうと思ったの?」
「休日は何をしているのかしら?」
「ねえ見て、これうちの猫なんだけど…」
瀬斗「あはは…」
不二咲先生は愛想笑いを浮かべながら、彼女達の話を聞いている。ここでも囲まれているのか。
さて、どうやって誘き出そうか…。
水嶋「お、どうした?美桜。」
美桜「!!
…って、水嶋先生か…」
私が不二咲先生をどう誘き出そうかと考えていると、背後から担任の水嶋先生に声をかけられた。
普段ならば驚きはしないが、この時ばかりは不二咲先生のことばかり考えていて、驚いてしまった。
水嶋「誰かに用か?」
美桜「あ、ああ…はい。不二咲先生に用があって。」
水嶋「へぇ、美桜でも不二咲には興味があるんだな。」
クラスの女子達と同じ目当てだと思われたらしい。
実際は違うが…違うと言ってしまえば、では何の用だと聞かれることになる。
そうなれば、私の本来の目的を話さなければならない。担任だから、私の家の特殊さは知っているが、信じてはいないだろう。だから、話すわけにはいかず。
水嶋「おーい、不二咲ー。」
瀬斗「あ、すみません。水嶋先生に呼ばれたので、また後で。」
「「「えー。」」」
女子教師達は残念そうにし、不二咲先生はそんな彼女らにウインクをして、こちらに向き直った。
瀬斗「どうされましたか?」
水嶋「美桜がお前に用があるんだと。」
瀬斗「美桜……ああ、神木 美桜さんですね。」
もう覚えているのか。私のことも。
美桜「あの、ここじゃあれなので、ついてきて貰えますか?」
瀬斗「うん?いいよ。」
笑顔で頷く不二咲先生。
これで、お前の仮面の裏を、暴いてやる。
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連れ出したのは、体育館裏。
こんな場所、告白シーンに使われそうであるが、そんなことをするつもりは一切ない。
だが、昼休憩中ともあり、他の場所は学生達がひしめき合っていた。
そんな場所だと、見抜く力が使えなくなるので、仕方なく体育館裏に連れてきたというわけだ。
瀬斗「それで…どうしたのかな?」
美桜「貴方はただ、黙ってそこにいればいい。」
瀬斗「え?」
私は、一度目を閉じ深呼吸をする。そして、目を開けて集中。
彼が……不二咲 瀬斗が、【詐欺師】かどうかを、見抜く。
瀬斗「えっと……」
美桜「………」
だが、どうしたことだろう。私としては怪しいと思っているのに、彼から【詐欺師】の気配は感じられなかった。
美桜「…嘘、でしょ。」
瀬斗「な、なにが?」
美桜「貴方、天然ものなわけ?そんなわけない。これだけイケメンなら、絶対そうな筈。
隠しているの?そんな、私の力の前で隠すことなんて…普通なら出来ない…。
一体どういう手を使っているっていうわけ?」
瀬斗「……えっと、何のことかわかんないけど、僕は僕のままだよ?」
美桜「……そんな……」
瀬斗「確か、君は巫女の一族だったよね。僕に何かしら取り憑いているとか、そういうのを期待してたのかもしれないけど、こう見えて僕、そういうものに敏感だから、魔除けグッズとか肌身離さず持っているんだよね。だから、取り憑かれてるとかはないと思うよ。」
美桜「………」
瀬斗「でも、心配してくれてありがとうね。」
そう笑顔で、私の背の高さに合わせて、頭を撫でる不二咲先生。子供扱いされているようだ。
私はその手を撥ね退ける。
美桜「……上手く隠しているようだけど、絶対、絶対暴いてやる。」
それだけ言い残し、私はその場から走って去った。
瀬斗「………うーん。これじゃあ心は開いて貰えない、か。
難しいね。でも、いつか絶対………。」




