1/5
プロローグ
この世界には、生来嘘を吐く人間がいる。皆が皆、正直ものじゃない。
そんな生来嘘を吐く人間のことを、世界は【詐欺師】と呼んだ。
さらにこの世界には、【詐欺師】達の心を改心させる為の術を持つ、特別な巫女がいる。それが、私が生まれた家の一族だ。
私の家は代々、そんな嘘吐き達の心を改心させてきた。それは、或る意味魔法という奇跡に近い。
そして、彼も【詐欺師】の1人。だとわかりきっているのに筈なのに、皆彼の甘言に惑わされていた。
だから、私は家業の使命と思い、彼に近づいた。彼を改心させる為に。
なのに………
瀬斗「僕は本当に、心から君に惹かれたんだ。」
私の手を取り、そんなことを宣う。きっとそれも嘘に決まっている。
……決まっている、のに……
どうして私の胸は、こんなに高鳴るの?