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節分

作者: 海星

 「知ってる?『わたなべ』って名字の人は豆を蒔かなくても良いんだよ?」


 『渡辺綱(わたなべのつな)を鬼が怖れるから』という話ですが・・・。

 非常に面白い言い伝えだとは思います。

 ですが、この言い伝えには穴も多いんですよ。

 『豆まき』が定着したのは江戸時代と言われています。

 対して渡辺綱は平安時代の人物です。

 因みに豆まきの原型『追儺(ついな)』が中国から日本に伝わったのは飛鳥時代です。

 明らかな矛盾があります。

 「豆まきがなかった時代には?」

 「渡辺綱が産まれていなかった時代には?」

 そんな野暮な話はどうでも良いんです。

 『色々な説がある』

 それだけの話なんです。

 昔の事では確かめようがない話がいくらでもある。

 それに対する色々な説を聞くのは私にとっては、とても楽しい。

 しかし歴史ヲタクとして『これは"野暮"と言われようと黙っていられない』という話があります。

 一つの『説』を決定事項として決めつける人に対して私は野暮と思いながらも『それはおかしいんじゃないの?こういう説もあるよ』と口を挟みます。


 歴史とは歴史研究で後に変わる事があります。

 今の常識では『鎌倉幕府は1192年に始まったのではない』というのが普通になってます。

 古代文明で『四大文明』という考え方がナンセンスになってます。

 歴史解釈は変わるモノなのです。

 決めつけは歴史の可能性を狭めるモノなのです。

 『こういう歴史解釈もある』

 これは私が口を挟む事じゃありません。

 『この時代はこういうモノだった』

 こういう意見を見ると小説を書くのが怖くなります。

 私の思う『説』を絶対のモノとして信じる人がいるのではないか?

 私の考えたフィクションを真実として捉える人がいるのではないか?

 私が何気なく書いた小説が『間違えた歴史認識』を伝えてはいないか?

 「何を大袈裟な」と思うかも知れません。


 関東地方に『恵方巻き』の風習が伝わったのは平成なんですよ?

 広まったのは海苔屋さんの広告戦略なんですよ?

 若い人を中心に『恵方巻きは全国的に昔からある』と思っている風潮があるんです。

 間違えた歴史認識なんて簡単に広まってしまうんですよ?


 何度か触れているんで「しつこい!」と思うかも知れませんが。


 万葉集に大伴家持(おおとものやかもち)が書いたこういう一節があります。

 『石麻呂に、我れ物申す、夏痩せによしといふものぞ、鰻捕り食せ』

 意訳すると『石麻呂、夏バテには鰻を食べろよ』と。

 他にも『夏バテに鰻が良いからといって、鰻を捕まえようとして川に落ちるなよ』という一節もあります。

 『夏バテに鰻』

 これは奈良時代には定着してました。

 そして「『土用の丑の日』には『う』のつく物を食べる」この言い伝えは昭和中期まで伝わっています。

 お年寄りで「『土用の丑の日』にうりを食べた」「『土用の丑の日』にうどんを食べた」なんて人も少なくないんじゃないでしょうか?

 『土用の丑の日に鰻』なんていうのは広告戦略なんです。

 『土用の丑の日、鰻の日』このキャッチコピーを考えたのが『平賀源内』なんです。

 『土用の丑の日』に鰻を食べ始めたのが平賀源内ではありません。

 お金持ちは昔から土用の丑の日に鰻を食べていたはずです。

 明治、大正、昭和の始め頃、土用の丑の日に『う』のつく別の物を食べる風習は残っていたはずです。

 「『土用の丑の日』に鰻を食べ始めた人間は平賀源内だ」

 これはデマです。

 「平賀源内は知り合いの鰻屋さんに頼まれてキャッチコピーを作っただけだ」と言われています。

 生き証人も沢山います。

 「『土用の丑の日』はそんな風習の日ではなかった」と。

 間違えた歴史認識なんて、本当に簡単に流布出来るんですよ?

 

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