序章
長めになりました。皆さんの休日にちょっとした非日常をお届け出来たらなあと、ホラー好き作者はちょっと期待してみたり。笑笑
昔、歴史の授業で必ずといっていいほど習い皆の記憶に残るであろう歴史上の人物。メリー・ケーキトカパンンネット。ヨーロッパのとある国の王女で国の革命の渦に飲み込まれた悲劇の王女として語り継がれている。
さてそんな彼女が廊下をはいつくばりながら迫っていた。血みどろになりながら。
おれは安藤やすひろ。特技は友達や彼女を作ることのしがない大学生である。そんなおれがアパートの自室への”帰り道”に彼女はいた。
「死、死にたくないデス・・・。タスケテ。」
「ヒィイイイイ。幽霊!? なんか出たーーーーー!ギャアアア!!!」
言葉にならない悲鳴をあげたおれ。なんせ彼女は明らかに人外のオーラをまとっていた。
どうしておれなんかのとこに出てくるんですか?幽霊さん! おれの幼馴染で年齢イコール幽霊探知機のめっちゃいいヤツ紹介するから許してくれませんか?
アイツめっちゃいいヤツで今まで100件ほど悪霊とか妖怪とか懐柔して友達にしたり成仏させたりしているんです!
ホントに良いヤツなんで! おれの親友っすから!
無情にも口はパクパクするばかりで言葉がでない。
ヒタリヒタリと怪異は近づいてくる。頼むおれはおれは・・・。まだやり直したことがあるのだ。
ドサリッ。おれが覚悟を決めて目を閉じ天の神さまに天国行けるように願いだしたところ女はおれの足元に崩れおちた。
おそるおそる瞼をあける。目の前にはみなれた廊下に血みどろになって倒れた女がいた。
いや。待ておれ。これもしかしなくても事件じゃね? 金髪縦ロール元祖悪役令嬢のコスプレした女が刺されて死んだんじゃね?
と、いうことはだ。ようやくおれの思考がまともに動き始める。
おれってば第一発見者ですやん? 容疑者・・・。アパート・・・。犯罪歴・・・。3つのワードが頭を駆け巡る。
おれの人生犯罪者? 何もしてないのに巻き込まれて? 友人や家族の信用を失っておれははたして生きていけるか。
ひとりぼっちなったこの世界で。おれは・・・。
待て待て。まずは生死確認をしなければ。今の時刻は14時23分。この階には働き盛りのリーマンとOLしかいない。つまり目撃者はいない・・・はずだ。
倒れている女が怪異ではなく重症を負った人間だと仮定し、おれは女の背に耳を当て心音を聞き取ることにした。
血だらけの衣服はあまりにも不快で思わず身震いをする。だがグダグダはしていられない。
気持ち悪い。ネチャネチャしている。じんわりと体温が伝わってきた。本当に良かった。心音は正常であるし、そっとさすって見た感じ出血ももはやしてなさそうである。
別に医学生という訳ではないおれの素人判断ではあるが。彼女は生きていた。気絶したように眠っていただけに思えた。
こんなに出血しているのに無事なのはおかしい。ああそうだ。これは彼女の血ではないのかもしれない。
しかし違和感がある。その血だまりはまるで今この瞬間首を切り落とされたように散らばっておりドクドクとあふれた後に思えた。
救急車を呼ぼうとし、スマホを握り震える手で操作しようとするとジジジッと照明にプラズマが走りおれの手に電気が走った。
シュウウっと煙がでているスマホを投げ捨てる。これはあれか。定番ネタってやつだな。普通に痛てええええ。
期をとりなしてとりあえず騒ぎにならないようにおれは彼女を自分の部屋へ運び込む。もちろん余計に血をまき散らさないように先ずは浴室から厚手のタオルを3枚ほどとってきて彼女の身体にグルグルに巻き付けてからだ。
純白の彼女の衣服は血の生臭さをよけいに際立たせていた。頭に被っているフリルを落とさないよう気をつける。
浴室の風呂おけに彼女を寝かせ、念には念を入れ廊下の証拠隠滅と消臭から決行した。その10分だったが体感ではもっと長く息をひそめ作業に没頭した。
もう一度救急車に電話をしようとスマホを手に取るものの画面のシートが溶けており動作も危なっかしい。
家には固定電話がないので連絡の手段がなかった。
連絡をとらずに友人に頼るあてもなく途方にくれてしまう。
先ほどの回想で出てきた仲の良い幼なじみかつ親友のあいつは地元にいるので、なおさら連絡がとれない。
「ああ、もう。どうすればいいっていうんだよ。クソが!」
一人壁にこぶしを打ちつけた。女が目を覚ましたかどうかが怖くなり何度も浴室と寝室を行ったり来たりする。
パソコンを立ち上げインスタで友人にコールをかけたもののつながらなかった。
取り乱した理性を落ち着かせようと飲み物を飲むことにした。冷蔵庫をあけるとストックの麦茶がまだ残っている。ピッチャーを傾けグラスに注いでいると浴室のドアがギギギと音をたて開いているのを見かける。
おいおいおいおい。まだもうちょい時間をくれても良いですやん! 何てことだ・・・。
「私、ココでたおれていましたか? あなた、は?」
「生きていたのですね。いや。良かった。ご自宅までお送りします。念のために保険書お持ちですか。救急車よびますのでお電話貸して下さい!」
「デンワ? ナニそれ・・・。私いまイキテる・・・。歩いて、いる・・・。」
これはまずい。大変まずい。あれだ。記憶喪失の美女が死にかけていたので部屋に入れてしまったら警察沙汰になってしまった件になりかねない。
「お元気そうで何よりです。出口はこちらからです。エレベーター分かります? 良かったら直ぐにお送りしますので! はい。本当に私はあなたのご健康をお祈り申し上げます。それではこちらへどうぞ!」
我ながらクズである。だが、おれはおれの日常を守らせていただく!
「アナタ、私を信用して欲しいデス。この血は私の血です。ここ見えますか? ちょっと近くでみて下さい。触ってくれても良いデスから。」
彼女はサッと髪をたくし上げた。そこには白い切断面がくっついた跡のような傷が薄っすらとあった。
「私は断罪を受けマシタ。ここを切られた(・・・・)。そうデス。ご存知ナイかも知れませんが。遠い異国の地で・・・。私はメリーという王女でした・・・。」
メリーそれはあの革命に巻き込まれ朝露のように消えていったはかない美女。おれは彼女を知っていた。そしてそれが本当であることもなぜか確信していた。
彼女が現れたその場でふだんとは違ったエネルギーを感じたからだ。電気とも違う未知のエネルギー。身体に記憶は刻まれており、手の震えは止まらなかった。
冷静に考える・・・。これはそうだ。たしか異世界転移という奴だ。きっとおれが知っている歴史上の人物とは似ても似つかない人物。なんせ歴史上の享年と見かけが合わない。
おそらくパラレルワールド的な存在だろう。
「失礼ですが・・・。ご年齢は?」
「21さいデス・・・。」
やはり。おれが知っている彼女は37歳で亡くなったのだから。
「そうですか。ならおれの一つ年下ですね。いや待て違う違う。」
「首を切られた、と・・・?」
「はい、そうデス。」
「じゃあ最初の血は君のだったんだね。いやだからその例えば失礼だけど、君は生きているの? それともアンデット的な何か?」
「たぶん生きていると、思うデス。私は呼吸もしてますし、心臓も動いてマス。」
「そう、だよね。」
「ただ一つだけ、いいデスか?」
「もちろん。詳しく教えて下さい。」
「私は後168時間しか、生きれないデス。おそらくその時間を過ぎれば、元の世界線との綻びがとけ、ギロチンにまた(・・)切られ、るハズです。」
理解できない。つまりは。彼女の話を信用するのならば彼女に残された時間はたった1週間。彼女は何かの手違いで今ここにいる。そして今後死が確定しているということだろうか。
彼女の首筋にパッと光の文字が浮かびあがり”167”と時を刻んだ。
おれは大急ぎでパソコンのタイマーのツールを起動し、数字を打ち込んだ。
今何をしたか。彼女にはとても説明できない。
「では改めてよろしく。おれは安藤やすひろ。通称やす。」
「ヤスー。私はメリーといいますデス。」
去年の夏は受験生の物語書いたなあ~。懐かしいですね。ところで私いつかオオカマキリになりたいコカマキリという者です。普段異世界ものとかホラーとか思いつくまま気ままに書いております。
別サイトへの投稿なども特にしてないのでちょっと面白いかもとか思ったら他の読者とかにおすすめしてくれたら読んでくれる人が増えて嬉しいかもです。
リアル優先な人なので投稿とかもクソ遅いですがいつも読んで下さっている皆さん本当にありがとうございます。これからも頑張ります。そういやコカマキリっていう奴まだ書いているかなあと思ったらときどき見に来て下さると嬉しいです。
作風を変えるのが好きな作者より。長文失礼しました。(特技:誤字脱字)