プロローグ 出会いは夢の中
また、あの夢だ。
夢の中で夢と気づくあの感覚。
高校生なのに、私ランドセル背負ってる。
もうっ!そんなこと考えてたらあの猫ちゃんどこかに行っちゃった。
小学生だから低いところは見やすいの。
塀の下とか垣根の下とか停めてある車の下とか、あちこちしゃがんで茶色い猫ちゃん見つけるの。
だって、何度も何度も私の方見て鳴いていたから「おいで」ってことだもん。
もう6年生でお姉さんだから、ちょっとぐらい家から離れても帰れるもん。
「にゃお」
あっ、いた!やっぱり、私を待ってる!
急いで猫ちゃんのところに行かなきゃ。
知らないお店の中に入っちゃった…ここどこ?
「神倉文具店」って書いてある。
なんて読むんだろう?
「神倉文具店へようこそ。お探し物はなんですか?」
気がつくと後ろに背の高いお兄さんが立っていた。
アニメで見るオシャレな喫茶店の店員さんみたいなエプロンしてる。
「ようこそではなかったですね。お久しぶりです。衛です。神倉 衛です。お元気そうでよかったです。」
誰かと勘違いしてるのかな?
私は目の前のお兄さんの金色の髪が気になって仕方ない。
何かを思い出せそうな出さなきゃいけないような気持ち。
「あぁ、すみません。心さんはまだそちら側でしたね。ところで、毎日は楽しいですか?」
勘違いじゃないのかな?なんで名前知ってるのかな?いろいろな疑問が湧き出てくる。
でも、それ以上に目の前のお兄さんの表情が寂しそうで、自分のせいじゃないのになんだか胸が締め付けられる。
「はい…何とか楽しいです。いろいろあるけど、多分楽しいです。」
急いで答えなきゃ…目の前のこの人は悲しませてはいけない人だ。
理由はわからないけど、風でそよぐ金色の髪を見て思いが強まる。
「やはり、いろいろあるんですね。そちらも大変ですよね。わかりました。今度は現実でお待ちして…おっはよ〜ぅ。朝だよ〜ぅ。」
いつもの目覚ましの音声で夢が途切れた。
大好きな声優さんの声が今日ばかりは恨めしい。
あぁでも、今日から中間テストだ。高校3年生になって初めてのテストだから頑張らないと。
希望する大学なんて決まってないけど、将来は普通に仕事して普通に暮らせればきっと幸せ。
こんな普通の女の子の私が、普通を作る「もの」語。
振り返れば、この夢が全ての始まりで終わりの物語。
よかったら「普通」を作るお仕事に参加しませんか?