後書き
ゲーム的に説明してしまえば
「ラストダンジョン手前の拠点から
最終セーブポイント&ヒールスポットを作る話」です。
全8話の1話~7話の半分までがそれに当たります。
そして、異世界召喚の後は大体なあなあで済まされ、
召喚者が一切反省とか悩むとかをしない事への憤り。
大抵は召喚された主人公だけが元の世界に帰るために奔走し、
誰も気にも留めてくれない。
帰還にしても自分たちの都合で召喚した癖に
礼も詫びもなしで送還される、など……。
コンシューマー、インディーズ問わず
そういうゲームをプレイする度に思ったのです。
誰でもいいから助けて欲しかった。そして、自分が助けてやりたいと。
自分が操作し愛着あるキャラクターなのですから、幸せになってほしいのです。
という事で、何が何でも送り返してくれる男が主人公となりました。
勇者の召喚を自分たちの不始末とし、
報酬/賠償金を渡し、自分たちの罪を償おうとする狂人が。
書き始めの予定ではもっとギャグ調の話になる予定でした。
シュエットとパッセルがすぐばれる仮面被って、
最終セーブポイントでアイテムショップやるような。
しかし設定を詰めていくうち、
ギャグが入る余地がないと気付いてこうなった経緯があります。
それに、全員が真剣にやっているというのに半端なギャグは要らない。
一部の天才ではあるまいし、シリアスとギャグの両立は凡人には無理。
なら最初から最後まで真剣さに振り切ってしまえという発想です。
本作のアイデアとなった物はこんな感じです。
・敵陣のど真ん中にぽつんと休憩地点
・DQ6より「くわこうげき! かまこうげき!」← いや無理でしょ
・無双シリーズの「総大将窮地! 至急救援せよ!」→ 総大将敗走
さっき周辺の敵を全滅させたばっかりなのに!?
・ゲームの孤軍奮闘させられる護衛ミッション全般
これを解消しようとしたらどうなるのか?
という点から大体の設定が生まれました。
高山に挑む時のようにベースキャンプを設営、維持して、
町村が襲われてもいい様に防衛戦力をあらかじめ配置し、
自分たちだけが必死に護衛しなくてもいいように護衛隊をちゃんと作る。
以上を内容に落とし込んだ結果が本作です。
第7話の荒野進軍はブレスオブファイア3の大砂漠越えと、
戦略シミュレーション全般における物資や人員の配置に輸送、
伝説のオウガバトルの終盤マップを意識したものです。
特に大砂漠越えは(エンカウントさえなければ)とても好きな場面です。
目印さえない砂漠を、星の位置と事前に聞かされたルートだけを頼りに進む。
本当に進んでいる方向と距離は合っているのか、
操作する自分が信用しきれない中で疲弊していくキャラクターたち。
そして、突破してオアシスについた時の安堵感。
本作全般に多分に影響していると思います。
……砂ブタに関しては方法が分からず三十分迷いましたが。
本作を書いたのは、何よりもわたしがこういう物語を読みたかったからです。
似たような物語は探せばきっとあると思います。
しかし解釈や好みが完全に一致する事はまずあり得ない。
自分が読みたい、自分の好みに完全に合致したものが読みたければ
自分自身で書くしかないのだ、と考えて書きました。
そして、それは二次創作では駄目なのだとも。
人の作ったキャラクターで書いても自分の物語にはなり得ない。
それでは満たされないからこそ、本作を書きました。
わたしはとにかく偏食家のわがままで、
気に入らない部分がいくつかあるとそれだけで読む気をなくす厄介者です。
そんな者が物語を読むのなら、もう自分で書くしかなかったとも言えます。
そんな偏食家の書いた物語を、
心の片隅にでも留めておいていただけるのなら
作者として嬉しい限りです。
本作を読んでいただき、本当にありがとうございました。




