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邪道甲子園  作者: 馬河童
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『エピローグ プロの舞台』

 四月、その年のプロ野球が開幕し、前年の覇者東京スターズは本拠地のスタードームに大阪ナンバーズを迎えていた。一勝一敗で迎えた三連戦の三戦目、満員の観客は湧いていた。両方のスタンドがそれぞれのチームカラーで彩られ、応援団から選手の名前が連呼されている。一回裏、ツーアウトランナーなしで次に登場する打者は、

「三番 サード 風間」

 プロ一年目にして名門スターズの三番を任された幸太郎であった。オープン戦でも新人らしからぬ活躍を見せ、開幕二戦とも猛打賞の彼に、この日一番の歓声が降り注ぎ、球場全体に響き渡る。

「来やがったな」

 対するナンバーズの先発は、これまた一年目にして先発ローテーションに入った服部剣蔵。彼も入団後、オープン戦で抜群の成績を残し、この一戦を任されていた。これが甲子園優勝を成し遂げた二人のプロ初対決であった。

 球場内の異様な盛り上がりにも物怖じせず、マウンド上で剣蔵はボールを弄ぶ。とてもルーキーには見えないふてぶてしさがあった。

 一方の幸太郎は落ち着いた表情で相手投手・剣蔵を見据える。これもルーキーとは思えない風格を漂わせていた。

「待っていたぜ、この時を……」

 剣蔵は武者震いした。決して臆している訳ではなく、目の前の強打者との対戦を待ち侘び、楽しんでいる風だ。

「いくぜ」

 ワインドアップからの初球は、トルネード投法からの速球が外角低めに決まった。幸太郎は手を出さない。

「ストライーク!」

 バックスクリーンのスピードガンは百五十二キロを記録し、場内も沸く。以前にバットをへし折ったのと同等のボールで、下手に打ちに行けば凡打になったであろう。

 二球目は剣蔵が高校時代にも投じていた、関節を外してタイミングをズラすチェンジアップ。初球同様、トルネード投法で投じた為、先程の球との速度差が大きく、普通なら打者はタイミングを狂わされる。しかし、幸太郎の下半身は一度身体が突っ込んだものの、持ち直し、これをしっかり捉えた。強烈なライナーがレフトフェンスに当たる。

「ファール」

 線審が手を交差させる。観衆は大きなため息を吐く。

「危ねえ……。あれを簡単に打ちやがって」

 剣蔵はたったの二球で汗が滲んだようで、手をユニフォームで拭う。そしてロージンバックを手で転がし、

「だがよ、何はともあれツーストライク取ったぜ」

 と不敵な笑みを浮かべる。そして、マウンドで印を切り始めた。その仕草に、球場内は歓声を送る者、ブーイングを送る者、黙って見守る者が入り混じり、異様な雰囲気を醸し出す。伊賀から来た忍者投手というキャッチコピーが付いているだけあり、剣蔵が何かしでかす事は観客の期待するところでもあった。

 印を唱え終え、剣蔵は指で天を指した。場内の注目もその一点に集まり騒めき出す。ドーム球場で空は見えないが、剣蔵が指し示す事で何かがあると思えてくる者すらいるようだった。

「へっへっへ。場の雰囲気、これが俺の忍法を完成させる……。行くぞ風間っ、忍投・邪道甲子園パートⅡ!」

 果たして剣蔵の忍投は、幸太郎の忍の極意を再び打ち破り、通用するのか……


長々とお付き合いありがとうございました!


私が絵を描けたなら、マンガで表現したい作品でした。文章にして、めちゃ長くなってしまい、汗顔の至りです。野球は九人出て来ますし、なかなか全員を魅力的に描くのは難しく感じました。


もう一つ、もっと破天荒な試合も描きたいとは思いましたが、野球とのバランスで少し真面目な感じに落ち着いてしまったのが悔やまれます。どうせならもう少し忍者らしく暴れさせたかったようにも思います。


ラストは少年ジャンプの打ち切りのように「行くぞ!」で終わらせてみました(笑)。時間があればプロ野球編も書いてみたいなんて思いもあったり、なかったり……


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