表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
邪道甲子園  作者: 馬河童
34/48

『対甲賀:四回表』

 四回表、打順は怪我をした猿飛から。左足を引き摺る様子が痛々しい。甲賀誠児は薄笑いを浮かべ、打って来ないのを承知で、おちょくるように棒球を通してくる。打てば怪我を悪化させる可能性があり、苦い顔でそれを見送る猿飛。ベンチの指示も「無理に打つな」というものであり、彼は一球も振らずに三振した。

「OKOK、それでいいんだ。まだ無理をする時じゃない」

 次打者の学が下がって来る猿飛の肩を叩く。

「猿飛……無念は晴らすぜ。来いっ」

 打席に入った学が叫ぶ。知性派の彼にしては珍しく闘志を燃やしていた。甲賀誠児は初球、内角へのブラッシングボールを投じてきた。

「デッドボール」

 何と学はこれにわざと当たった。それも大袈裟に倒れ込んだものだから、審判も「避けなかった」とは言い難く、死球をコールしたのだった。学はゆっくりと起き上がり、痛そうにしながら一塁へ歩く。

「ちっ。避けやがれ」

 誠児は舌打ちしてマウンド脇に唾を吐く。相手をビビらせる魂胆はあったろうが、進塁は予定外だったに違いない。

 三番の山嵐が打席に入る。彼も気迫を前面に押し出しており、巨体が一層大きくなったように感じられた。

 しかし、ここは誠児が上手だった。山嵐を変化球主体で攻め、掠らせる事なく、仕留めた。そして、次打者の幸太郎がバッターボックスに向かうのを見ると、指を立てて挑発してきた。

「ここで先程の打席の借りは返す」

 不敵な表情で宣言するが、

「能書きはいいから掛かって来い」

 幸太郎はそれを気に留める事もなく構える。

「カッコつけてんじゃねえ」

 苛立った誠児の初球は三日月カーブ。外側から幸太郎の身体を抉り込むようにボールが入ってくる。一塁ランナーの学はスタートを切り、幸太郎は打ちに行く。ボールを点と見立てて、その点にバットの真芯が衝突し、破裂したような音が響く。

「何だと……」

 呆然とする甲賀誠児。幸太郎の打球は美しい弧を描き、レフトスタンドに飛び込んだ。これには伊賀中央応援団が拍手喝采して大喜び。ついに伊賀中央が2点を先制した。


「やったな、風間」

 ホームで学が出迎える。

「ああ。約束した以上は打って見せんとな。霧隠、続けよ」

 幸太郎からタッチされ、気合い漲った才之助が打席に入る。対する甲賀誠児はマウンド上でまだカッカしていた。そして、

「まぐれだろ、どうせ!」

 才之助に対してまたも三日月カーブを投じてくる。しかし、才之助もこのボールをしっかりと点で捉え、ライトスタンドへ放り込んだのだった。連続ホームランで、スタンドも勝ったかのような大騒ぎだ。

「よっしゃ~」

「ザマぁみさらせ」

 湧き上がる伊賀中央ベンチ。対照的に甲賀誠児は怒り心頭。マウンドを何度も蹴り付け、怒りが収まらない。さすがに甲賀内野陣がマウンドに集まる。ショートの時任が興奮気味の誠児に何やら耳打ちしていたが、それでようやく気持ちも静まったようで再び落ち着いた様子でボールを弄び始めた。そして、

「引導を渡してやるぜ」

 と張り切って打席に入った六番の剣蔵を、速球と変化球の組み立てでショートゴロに打ち取った。

「ちくしょう。けど、3点リードだぜ。このまま行ければ勝てる。俺は絶対に打たせねえからな」

 剣蔵は気を落とす様子もなかったが、不敵な笑みを浮かべながらベンチに戻る甲賀勢の様子はどこか不気味であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ