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今俺が生きている世界では天文14年6月22日に河東侵攻が始まり、現在河東の戦を14年7月10日に終わらせた。だが関東大蜂起は今川に手引きされた為、既に河越城の包囲が始まってしまっていた。これは遠因として俺の内政強化による米の流通量の増加、そもそもの関東における同盟国への技術流出から他の国に真似をされたことで、相手の石高が少しなりとも増えていたことがあるだろう。そして史実で疑問になっていた兵糧問題を探らせるために今川武田に風魔を忍ばせるが、この世界ではそんなもの無くとも分かりきっていた。
俺のせいで米の相場が下がっていたのだ。そして佐竹が両上杉と古河公方等、関東大蜂起に参加した勢力に売りつけていたのだ。北条では取引に関して禁輸などは行っていない為、米は流れ放題だからな。しかし、里見と千葉は既に北条の下に組み込まれ地盤を固めているので、突破されることはない。侵入経路は上杉方面しか突破できない筈だ。
それにこちらの千葉方面に対して抑えの兵を置かなければいけない為、兵数の制限ができている筈だし、そこまで史実より悪い状況ではないと思っている。
今現在の俺達を取り巻く状況についてを纏めるとこうだ。
河東 伊豆 武田 今川 房総 相模に関しては安定している。
武蔵、上野、下野、常陸は敵方として蜂起して敵方に。
特に詳しく説明しなければならないのは武蔵に関してだ。こちらが抑えている防衛ラインは平井 松山 河越 江戸 臼井から川に沿ったラインだ。そして、現在攻勢を受けて陥落しラインが変化した八王子 河越 江戸のラインまで押し込まれている。丁度城と道を整備した領土までのラインだ。
詳しい敵方の事情や戦況に関してはまだまだ報告が上がってこない為、どの様になっているかは分かっていない。父、氏康からの連絡を貰う為、小太郎達を向かわせていた。
〜北条氏康〜
少し時は遡り氏政達が河東対処のために軍を動員している頃、北条の本城 小田原城でも慌ただしさが一気に増していた。
「報告します!扇谷上杉と山内上杉の両上杉が和睦!関東の諸将に号令を掛けこちらに向かって侵攻してきております!既に平井と松山が攻勢を受けており、河越、江戸に向けて軍を侵攻させている模様です!両上杉の号令に従い北条に反旗を翻したのは宇都宮、那須、長野など上野、下野、武蔵の一部が旗色を明らかにしております!佐竹や鹿島、小田は沈黙しております!」
伝令や報告を取り纏めワシに伝えてくる小姓を下がらせ、多目元忠と伊豆衆を纏めていたが相模との連絡役で韮山城から出仕していた笠原綱信、清水康英などこの場に集まることが可能な重臣を集めて小評定を行う。
「さて、氏政の言う通りの展開になってきたが進捗はどうなっておる?」
氏政によって導入された学校から上がってきた楷書で作った文書の連絡を小姓達から受け取り、笠原が報告をしていく。
「はっ、北条の統治下にあった武蔵の民は事前に平井、松山で用意していた馬車などを使い八王子より後方に送っております。江戸河越は戦場になる事が予想されておりますのでそちらも既に撤退を完了しております。また、収穫した米は全て燃やすか毒を入れておきました。これによって浅ましくも我が北条から略奪をしようとした敵方はジワジワと、しかし確実に蝕まれていく事でしょう。」
氏政から連絡役で預かっている風魔の配下も控えて報告してくる。
「今回の毒は即死するようなものではなく、体調が悪くなったように感じる、吐き気を催すなど従軍するにあたって確実に敵の士気を削るものを使用しております。」
周りに控えている小姓や臣下が侮蔑の目で風魔を見る。
「成る程、氏政の指示だな?的確に相手の意志を挫き、我等の勝ちの目を挙げる良い策だな。こうする事で我等が毒を混ぜたと分かりにくくなり、食い意地が張った奴が痛い目を見たと言うことになる。そうすれば民に優しい北条の名を汚さなくて済むしな。」
「はっ!」
こうすることで風魔に対する評価を下げる事無く、氏政の評価を上げていく。未だに北条の中でも一部の者や最近配下になった者達には差別意識が強く残っている。それを取り除いていかなければならない。
「綱成には事前の取り決め通りに河越城で耐えて援軍を待つように伝えておけ。我々は八王子城に軍を集め河越城への援軍へと向かう!陣容は小田原5000、八王子2500、三崎2500の1万5000だ!臼井城と本佐倉城に1000ずつ抑えの兵を置き残りの5000で房総から江戸への援軍を送らせろ!」




