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最後に鉄砲だな。こちらは量産が進んでいる。だが、問題点として製作した鉄砲の中でどうしても幾つかは失敗作が出来てしまう。しっかりとした物は長く使い続けられるのだが、失敗作は撃った後に変な音がする。そして打ち続けるとそのうち爆発して本体が吹き飛ぶ。いいものは壊れたりしても爆発はしない。
手指が吹き飛んだりする恐れもあり、危ないので試射した時に変な音がした物は別に分けてある。これらはいつか他国に売り出すとなった時に売りつけるための物だ。相手には悪いが完璧な物を売るよりは失敗作を売って金にする。相手には失敗作かどうかは判らないのだから、我らも同じ物を使っていると説明だけしておけばいい。
それに壊れればまたこちらに購入しに来る。winwinだな。多分売るとしても信長だろうなあ。キレて来ないか怖いぜ。確か信秀殿が死ぬのが俺が14の時…つまり8年後くらいか?それまでには失敗作もある程度数も揃うだろうから、家督を継いだ後に売ってやろう。
それに合わせて竜騎兵達の解説もしておこう。鉄砲がこちらで作られるようになってから、試射や訓練の際に軍馬を集めて音に慣れさせた。これがまず第一段階。そして慣れた馬の上に二人乗りするのが第二段階。その後に後ろの射手が走りながら撃つ訓練を3段階だ。この前の幸隆の竜騎兵の使い方について聞いたが、弾を込める時間が必要になるため半分に分けて交互に停止して弾込め、突撃を繰り返していたようだ。
この話を聞いてなるほどと思うと同時に、何とか連射力を上げるためにも開発の鍛治師達に任せておこうとぶん投げておいた。
信長とは何気に今も文通が続いていて変な気分だ。変な気分だがアイツは化け物だとつくづく思い知らされるね。アイツは既に自分で家臣集めを行いながら、信頼できる者と出来ない者の選別を行っている。大体は行く先のない次男三男を集めているが、それらは政争で負けたからとかではなく、嫡男でない彼らは後がないから命がけで自分に賭けてくれるからだと言っている。
俺が言うのもアレだが、アイツまだ子供だろ?何でそんなこと分かるんだよ。あーやだやだ、自分が負けてる気がするね。まあ気にしてもしょうがない。他には俺を気分悪くさせないように巧みにおねだりをしてきやがる。南蛮船は何持ってきたの?え!見てみたい!
新しい武器と船!いいなあ!俺が当主になったら買うよ!とかそんな感じのおねだりをされると、譲ってあげたくなるような感じにさせてくる。人たらしだわ。と言うかカリスマ性に溢れている?さすが英傑は違うねえ。
俺は信長から秀吉と光秀を奪ったからね。勿論その分の不足は補うよ。実際北条の位置を考えると河東を背に東日本を統一する方が楽なんだ。東海道に進出したとしても甲斐と尾張があるし、そこを目指しても後ろの関東を気にして、長尾も気にして甲斐もどこから来るか判らない。自爆して包囲網を作られる訳にも行かないんだ。
それなら関東を支配して甲斐と尾張には付かず離れずで三国峠を要塞化して長尾はガン無視。東北に進出して豊かな平野を開発、北海道まで全て攻め取った方が楽だ。東北に進むなら山が多いため道も限られてくる。となるとこちらも守りやすいし、言ったら悪いが奥州の武士は前時代的なバカが多い。簡単に御せる。というか、頑固に抵抗するだろうから皆殺しだな。
北条の傘下で従うなら話は別だが、本当の鎌倉武士であるアイツらは絶対に先祖代々の土地を手放さないだろう。いいさ、南部晴政の方に逃がしてやる。最後の最後まで追い詰めて頭を下げさせてやる。それでも反発するなら北海道送りだな。
それとは別にキャラック船を使って未発見の小笠原諸島や琉球、台湾、ハワイなどの日本領土化も…と先のことを考え過ぎてもしょうがないな。とりあえずは信長に中央と西は任せた方が楽なんだ。
もし、アイツが失敗して途中でコケても俺はそれを吸収するだけの簡単な作業だ。烏合の衆ならば労力は少なく済む。そんな打算の上で俺はアイツに協力してやる。勿論アイツ自身も嫌いじゃないから手紙で人との付き合い方を叩き込んでいる。自分が分かっているから相手も分かれ、では自分の意思が通じないとな。アイツはしっかりとコミュニケーションして意思疎通さえできれば部下に裏切られなかっただろうし、朝廷との関係も拗れなかっただろう。
本能寺の変の可能性は限りなく減らしてやらなければな。
軽くまとめです。
1544年春前から春終わりまでに安房攻めが行われました。
夏の間に戦後処理を行い、人事配置や内政のまとめをしています。日々の事務処理や勉強は勿論行っている前提です。
そして今からが夏の終わりかけ7月末のお話になります。




