311 北条大包囲網 序章 東北1
311北条大包囲網 序章 東北1
1555年 6月伊達晴宗
「殿、幕府の使者と名乗る方から文をお預かりしております。」
晴宗が今年の作付けの進捗具合を確認したりと政務に励んでいた時に家臣から報告として文を渡された。
「分かった。すぐに目を通そう。使者殿はどちらでお待ちになっているのだ?」
「いつもの評定の間の控え室にてお待ちいただいておりまする。また、呼び寄せられる家臣達はすぐに呼んでおります。」
「よくやってくれた。一刻ほどで使者殿と顔を合わせる。分かっていると思うが上座を用意しておくのだぞ。」
この時代、幕府の使者とはつまり足利将軍家の代表ということだ。奥州では昔ながらの鎌倉の気風が根強く残っており足利将軍家の権威は京都とは比にならないほど強かった。
一刻が過ぎる少し前に伊達領内で集まれる者達は広間にて控えていた。それを確認した晴宗は下座の中で一番上の場所に座り家人の者に合図を出した。
使者が入ってくるのに合わせ頭を下げる。
「この度は遠い奥州の地まで足をお運び頂き恐悦至極にございまする。」
晴宗がすぐ側の上座に使者が着席したのを確認して声をかける。
「いや、思った以上に快適に来ることができたぞ。海路も充実していて良い場所だということが良くわかる。」
「はっ、関東で商家を営んでいるものが蝦夷地までの海路を整えているようでそれのおかげでこの場所まで道が開けるようになりました。」
実はその商家は、義堯達を連れてきたもの、つまりは風魔の配下だったがそんな事は露ほども知らない晴宗がそれを言うことは無かったし、幕府の使者も思い当たらず気にしていなかった。
「そうであったか。将軍である足利義輝様はこの度伊達にら頼みたいことがあるということでワシを遣わせておる。その内容を今から文を開いて読み上げる。良いな?」
皆がその言葉を聞いて姿勢を正し、佇まいを今一度整えた。それを確認した使者は一つ頷くと文を胸元から取り出し、開いていく。
「伊達晴宗を奥州探題に補任し奥州の旗頭としてより一層の忠君に励む事を命ずる。また、関東管領である上杉実虎を支え幕府に反逆の意志が見える北条を成敗する事をここに命じる。」
前半の内容は全くもって問題がない、というか寧ろ天文の乱で伊達の統制が緩んでる今有難い事である。前々から頼んでいた奥州探題への任官が許可されたのだ。
しかし、後半の内容についてはこの場で初めて聞いた上に、関東への遠征だと…




