310 北条大包囲網 序章上杉
310 北条大包囲網 序章 上杉
1555年 7月 上杉実虎
幕府への帰りの挨拶を終え、6月の頭ごろに領地に戻った時には既に遅かった。幕臣達が動いたのであろうが、公方様からの手紙が各地に出回っていたのだ。
越前から越中までは一向一揆の戦いが激しいこともあり、船で越後まで帰ったのが良くなかった。途中でうまく連絡をする事ができずに後手に回ってしまった。
「御屋形様、評定の間に皆を呼んでおりまする。」
「分かった。」
その件について今からどうするかを決めるため評定の間へと向かう。皆が頭を下げる中上座へと向かって座ると合図が出され皆の顔が上がる。
「今現在、武田、蘆名、伊達、最上、佐竹と上杉領内のいずれかに公方様からの文が渡っているようです。内容は逆賊北条を成敗し元の秩序に戻す事であるべき姿を取り戻すとの事です。」
あちらこちらから溜息や困惑する顔が浮かぶ。家臣達にとってもこの指示は現状を分かっていないと疑問に思われているのだ。
「この件、御屋形様は京で話し合ってきていたのですな?」
「ああ…。その際に断れば上杉が幕府の敵として目の敵にされるかもしれなかった。それに遅かれ早かれ北条とは決着をつけなければならななった。だから、こちらが主導権を握って全て事を進めるから大人しくして置いて貰うように頼んでいたのだが…多分幕臣達が余計なことをしているのだろう。」
北条とやり合う必要があると言うのは上杉勢の総意であったため特に反対意見が出る事はなかったが、幕臣達が余計なことをしていると言う点で皆が顔を顰めた。
「このような状況、北条に隠し通せているわけがありませぬ…」
誰かがポツリと溢す。
「そうだ。だから今回の戦本気でかかる必要はない。無駄に不利な戦で上杉が血を流す必要はない。北条に攻め込むが相手の防備や戦力を確認するためのものだと思え。」
実虎にとって、幕臣達によって盤面をぐちゃぐちゃにされた時点でこの戦は意味のないものになった。ならば、少しでも有効活用すべきだ。
「ではこの度の戦は偵察になるのですな?」
「そうだ、幕府への姿勢として大規模な軍勢はださなければならないだろうがな。」
「侵攻ルートはやはり三国峠になりまするな…」
「そうだな…あそこは報告によると強固な大砦を築きあげたそうだ。攻めるのも一筋縄では行かぬだろうて…。」
配下達はどんよりとした気持ちであった。




