304二者択一
304二者択一
書き直しました。212話で実虎の関東管領が保留になっているのになぜか213で実虎が関東管領ということになっていたので212の時点で任命したことにしています。
「頼みたいこととは?」
幕臣たちもその動きを感じて先程までの和やかな雰囲気から沈黙に変わった。
「うむ、ちと北条を懲らしめてやってほしいのだ。」
「…どういうことで?」
義輝が居心地が悪そうに進藤の方へと流し目をする。
「ここからは私がお話しさせて頂きます。公方様は北条に対して強い不快感不信感をお持ちです。というのも、関東管領と協力して関東を治める様にと伝えたにも関わらず北条は、この度の戦で関東管領を助けるでもなく、自領に引きこもり、上杉憲政殿の監禁、関東公方の乗っ取り、あまつさえ、関東管領を僭越し、幕府を蔑ろにする所業ばかりです。そこからは、反逆の意思が見えております。それを本当の関東管領殿に正して頂きたく思っておるのです。」
「なるほど。」
実虎は呆れていた。少なくない額の献金を受け、一度自分たちで守護職を与えながらも気に食わないからとそれを召し上げようとしている。
「関東管領殿が活動しやすい様に追加で免除を出し、屋形号と五七桐紋の使用許可、裏書御免と塗輿御免と、白傘袋・毛氈鞍覆の使用許可を授けまする。また、関東管領として関東を差配する様にとの書面も改めて出しまする。これらを持って関東を差配し、三好の逆賊めを討つために協力して頂きたいのです。」
この時代では破格の待遇であった。これらの錦の御旗は東北関東で絶大な力を発揮することだろう。
「ただ、北条と独力で当たるにはあまりにも差がありまする。関八州は伊達にございませぬ。」
「で、あるか。ならば内部から崩壊し、包囲されておればどうだ?」
「と、言いますと?」
「うむ、我らが手配し武田、上杉、伊達最上連合、常陸とで包囲網を作り上げるのです!公方様の威光を持ってすれば必ずや成りましょうぞ!そして、関東勢力を率いた関東管領とともに三好を打ち滅ぼすのです!」
そこらかしこでそうだそうだと叫び声が聞こえる。その狂った熱に侵されるかのように場の雰囲気も狂っていく。その仲でただ一人無気力な様になっている公方は何を考えているのか実虎には分からなかった。




